☆眠れない夜☆

 

「弓縫(ゆみぬい)先輩、そろそろ寝ませんか?」

 

僕は参考書を閉じ2つ年上のその女性に告げた。

長めの髪をかきわけながら考え込む先輩。

 

「そーお?もう少し時間あると思うけど」

「いえ、もうすぐ0時です、試験開始までに7時間は寝ておかないと・・・」

「うーん、いっそ徹夜しちゃう?」

「そんな!先輩、ゆうべは僕を10時間も眠らせたじゃないですか!おかげで今日受けた滑り止めは完璧に答えられたのに」

「だーかーら、昨日の夜たっぷり寝たから本命受ける今夜は徹夜しても大丈夫なの!」

「そうかなぁ・・・」

 

僕は先輩の目を覗く、あいかわらずかわいい、

細めだけど何ていうか「地味かわいい」感じが僕の胸をときめかせる。

 

「じゃあ先輩、僕はもう寝ますから・・・」

「そーの前にもう一冊だけ、ね?」

「もう一冊もう一冊で5冊以上読んでますよ?もう本当に寝なきゃ・・・」

「そーお?滑り止めの大学は10時間寝ても楽勝でしょうけど、明日の大本命は徹夜しなきゃ受からないんじゃないかなー?」

「先輩・・・何か言ってる事、先輩らしくない」

「えー、そーお?」

「うん、あれだけいつも慎重でキチンとしてるのに、今夜に限って徹夜だなんて・・・」

 

ホテルの机の参考書を全てカバンにしまう僕。

 

「うーん、じゃー仕方ないわね・・・お風呂に入って寝ましょう、お湯入れてくるねー」

 

ユニットバスへと向かう弓縫唱音(ゆみぬいうたね)先輩・・・

高校時代、1年生だった僕を面倒見てくれた元生徒会長だ、

僕が2年になり、先輩が卒業しても僕の家庭教師になってくれて今日まで、

いや明日、本命の大学を受けるっていう今も、ホテルにまでついてきて親身に勉強を教えてくれている・・・

本当に真面目で尊敬できる、ありがたい先輩だ。でもどうしたんだろう?今夜に限ってあの体調にうるさい先輩が徹夜しようだなんて。

 

ジャーーーー・・・

 

あれ?シャワーの音が聞こえる、

どうしてだろう?お風呂にお湯入れてたんじゃ・・・

先輩なかなか出てこない、お風呂が汚れてたのかな?

でも結構ちゃんとしたホテルだからそんな事は・・・

もしかして先輩、シャワー浴びてる!?僕より先に・・・別にいいけど。

それよりぐっすり寝なきゃ、タイマーを朝7時にセットして、と・・・

後はいつも通り眠れるあれを用意しなきゃ、あれを・・・あれ?どこ行った?

あれがないと眠れないんだけど・・・昨日はちゃんとあったのに、おかしいな、あれのおかげで僕は毎日ぐっすり眠れる、

先輩が1年前から『受験勉強も大事だけどちゃんと眠る事も大事』っていうので用意してくれた、アレが・・・・・

 

ガチャッ

 

「ふう、さっぱりしたぁー」

「せ、先輩!あ・・」

 

バスタオルを巻かずに肩にかけたまま出てきた!

先輩の白い肌と意外にある胸と、あ、あそこが丸見えだあ!!

 

「先輩!前!前!」

「なあに?」

「その、裸ですっ!」

「んーと・・・そうだけど?」

「目に毒です!」

「そうかなー?」

 

僕は目を逸らし立ち上がって荷物の方へしゃがむ!

 

「そ、それより先輩!いつもの、寝る前にベッドに置く、ポプリ知りませんか?」

「え?ないのー?」

「はい、あれがないと困っちゃう・・・先輩が1年前から、寝る時の習慣付けにって、

 

寝る時は必ずポプリを置いてその匂いで眠るように・・・おかげさまであの匂いを嗅ぐと、

すぐにぐっすり眠れるようになって、勉強もはかどってスケジュールもきっちり・・・」

 

「うーん、夕べはあったのにねー、ホテルの人が捨てちゃったー?」

「そんなあ!僕、逆にあれがないと眠れなくなっちゃったんですから!

街で偶然嗅いだりすると眠くなって大変だったけど、でも先輩のおかげで・・・って先輩!!」

 

ぎゅっ、と背中から抱き着いてきた先輩!裸のままだ!

 

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