「あ、灯りだ!」

 

獣道にすらなっていない藪の中を突き抜けた先に、

たったひとつ、外灯がこうこうと点いていた・・・

そこへ僕を抱えたまま飛び込んだ萌葱原さん、と、突然足を止める!

 

「うわっ!ど、どうしたの」

「・・・落ちる」

「え!?」

 

どっぽーーーん!!

 

突然現れた池に2人まとめて落ちた、

と思ったら湯煙に囲まれている・・・こ、これ、温泉だ!

暖かい・・・とはいえ着せられたセーラー服がビショビショだ。

 

「うー気持ち悪い・・・」

「私はこういうの慣れてるから・・・脱いで」

「え?で、でも・・う、重い!」

 

お湯を吸った服は体にまとわりつき、

スカートは重りでもついているかのようなずっしり感・・・

確かに脱がないと浅い温泉でも溺れそうな恐怖感がある。

 

「わ、わかったよ、自分で脱ぐから」

 

茂みの中で急いで・・・スカートがひっかかって脱げない!

あれ、おかしいな、ここをこう・・・水気を含んでふやけちゃって・・・あ!

 

ビリビリッ!

 

「・・・まあいいや、どうせ僕のじゃないし」

 

全裸になって温泉へ浸かる・・・すっごく気持ちがいい。

萌葱原さんは外灯の上へよじ登ってあたりを見回している、

見張ってくれているのか・・・それにしてもここへ来てはじめてのお風呂、体がのびのびする。

 

「ふぅ〜・・・萌葱原さんも後で入ってください、次は僕が見張りますから」

「・・・見張ってるから・・・いい」

「そんなこと言わずに、気持ちいいですよ」

「・・・見張ってるから・・・君も」

「え!?あ、そういう事か・・・」

 

僕が誰かにやられないように見張っていると同時に、

僕が逃げたり何かしたりしないか見張っているという事か、

萌葱原さんは僕を襲わなさそうだけど、僕が萌葱原さんを襲わないとも・・・

お互い、信頼はしているはずなんだけど、くの一の血が用心させているのかな、

まあ、だったら一緒に入ろうとか言える訳もな・・・ん?温泉の中から大量のあぶくが??

 

ザバーッ!!!

 

「わ!わわ、わわわ!!」

「ちっ、しまった」

 

温泉の中から現れた人影に外灯の上から突っ込んでいく萌葱原さん!!

出てきたのは・・・転校生の怪力熊女、大塔琴波さんだ!!

そのまま僕に覆い被さろうとした間へ割って入って食い止める萌葱原さん、力は互角!?

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「・・・逃げて」

「え!?」

「今はまだもつけど、持久力では負けるから、今のうちに」

「で、でも、萌葱原さんは・・・あ、後で来てくださいね!」

 

早く行けという鋭い目に気押され、素直に逃げる僕・・・

温泉の中央でガッチリ組み合っている大塔さんと萌葱原さん、

そこから慌てて離れる・・・離れたがいいが僕は全裸のままだぞ!?

 

「でも、でも、今は自分の命が・・・いや殺されはしないけど!」

 

このバトルにおいて命と同じ扱いの操を守るため、

素っ裸で温泉からできるだけ離れる・・・

靴くらいは履けば良かったか?かといって今更引き返す気はない。

 

「そういえば少し前もこんな事・・・大塔さんから同じように守ってくれた、禅華さん・・・」

 

あの時、公園で来ていたのが本当に禅華さんだとしたら、また助けてくれるだろうか?

でも、どうしても引っかかるのが、僕を声だけでイカせてしまった薬袋さんだ、

銃で撃たれた訳じゃないから痺れて動けなくなる事はなかったけど、でもやっぱり僕を奪うために・・・

 

「・・・ん?ここは、月で水面がきらきらしている、正真正銘の池だ」

 

よーく見るとひょうたん型・・・ボートが浮いていてビニールシートがかけられている、

素っ裸だし、とりあえずあの中で休ませてもらおう、池の水は・・・あまり綺麗そうじゃないから飲めないか。

 

「お、隠れるには調度良い感じだぁ、朝までは無理でも4時間はもつかな・・・?」

 

ボートに乗り、ビニールシートを2つ折りにして間に挟まって入る、

うーん夏なら冷たくて気持ちいいんだろうけど、まだ春で全裸だからあんまり良くない、

でも贅沢は言えない、疲れているとはいえ熟睡できないだろうからこれはかえっていいのかも?

 

「これで風邪ひいて肺炎で死亡とかなったら誰が失格になるんだ?みんなか?いや、自業自得か」

 

などと考えながら静かに眼を閉じた・・・そして意外とあっけなく、眠りについた。

 

・・・

・・・・・

・・・・・・・・・・

 

・・・・・キューン、キューン、キューン、キューン・・・

 

「・・・なんだ?宇宙船みたいな音だなぁ」

 

まだ夢を見ているのだろうか・・・

変な機械音・・・でも眠気が勝って確かめる気になれない、

目すら開けるのは面倒・・・と思っていると音が段々と大きくなる。

 

「どこからだよ・・・上か?上から・・・上から何かが・・・ま、まさか!!」

 

ガバッと起き上がった瞬間、上空から稲光のようなものが脳天に直撃した!!

 

ズッシャーーーーーン!!!

 

「ぐああああああ!!!」

 

びゅるびゅるびゅるびゅるびゅるうううううーーーっっ!!!

 

脳に直接送られてくる電気信号、それを受けての大量の射精・・・

僕は本当に雷を受けたかのように、そのまま前のめりに倒れた!!

 

 ♪キンコンカンコ〜ン

 

『島内放送ざます、臨時速報ざます、ひょうたん池で、勇人さん、3回目の射精ざます』

 

ううう、動けないいいぃぃ・・・

すっかり眠って4時間以上経っちゃってたみたいだ・・・

移動ルールを破ったため、上空の衛星から強制射精のビームがぁ・・・

ボートは池の真ん中を漂っているみたいだ、下手に降りたら溺れ死ぬな、

このまま早いもの勝ちかぁ、今度こそ、もう、駄目かなぁ・・・あぁあ・・・・・

 

バシュ、バシュ、バシュ!!

 

早くも銃撃戦が聞こえてきた、

僕は凄い脱力感と元からの眠気で意識がブラックアウトしていく・・・

どうでもよくなってきた・・・もうどうにでも・・・な・・・れ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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