☆サキュバスハウス☆

 

「もうすぐ夜10時か、閉園時間だな・・・」

 

とっぷり暮れた夜、

さすがに日本一の人気を誇るこの遊園地も、

人影がまばらになっている・・・ほとんどの客は夜9時前の花火で帰っていった、

今残っているのは最後に、いつもは2・3時間待ちのアトラクションを待たずにすぐ乗る客か、

お土産をじっくり時間かけて選んでる客・・・僕の彼女が今まさにそうだ、

最後の最後でお土産選びにやっきになっている・・そんなの適当でいいのに。

 

「ふう、足も結構楽になったな、そろそろ行くか・・・」

 

ベンチから重い腰を持ち上げる、

まわりは真っ暗・・1人でこんな所にいるのは寂しすぎる、

疲れも癒えた事だし、お土産売り場の彼女と合流して帰ろう。

 

・・・・・トゥルルルル、トゥルルルル・・・・・

 

携帯が鳴った、彼女からだ。

 

「もしもし、どうした?お土産買い終わった?」

「あのねあのね、きいてきいて、前カレに会っちゃった!」

「・・・・・え?」

「それでねそれでね、ゆっことね、仲直りしてくれるって!」

「・・・・・・・はぁ?」

「だからねだからね、前カレとヨリ戻したから、これから一緒に帰るね〜」

「お、おい、どういう・・・」

「じゃーねーばいばーい」

 

プツッ・・・ツーツーツー・・・・・

 

・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・はぁっ

 

阿呆だ・・・

ふられた・・・

こんな阿呆な女と今日まで付き合ってた僕も阿呆だ・・・・・

 

「くそっ!!」

 

頭につけた彼女とおそろいの「耳」をごみ箱へ投げ捨てる、

早く帰ろう・・・彼女を失った以上、こんな所に1人でいても惨めなだけだ、

さっさと自分の部屋で布団かぶって今夜はクスンクスン泣いて、明日になったら忘れよう。

 

 

 

・・・・・

 

・・・あれ?こっちじゃなかったっけ?

それともこっち・・・あれあれ?迷ったぞ??

一旦戻るか?でも戻り道どっちだ?って、完全に迷ってしまった・・・

まずいなあ・・・ここって閉園時間近くになると、ほんっとに照明落とすからなあ、

と、いう事はだ、灯りに向かって歩いていけば・・・あったあった、あそこへ・・・

 

「あれ?これ・・・なんだ!?」

 

近くに来てみれば、

それは出口やお店では無くアトラクションだった。

 

「えーっと・・・サキュバスハウス!?」

 

なんだかお化け屋敷系のアトラクションだけど、

こんなのあったっけ?でも目の前にあるしなあ・・・

入り口もちゃんとある、案内のお姉さんも立っている。

☆サキュバスハウス☆

「あのー」

「こんばんは、ようこそ・・・1名様ですね・・」」

「え?あ・・・あっと・・・・・は、はい」

 

出口を聞こうと思ったが、

なんとなくこのアトラクションに不思議な魅力を感じ、

黒ずくめのお姉さんについて行く事にした・・・

 

「・・・私の後ろから決して離れないでください、出られなくなりますから・・・」

「は、はい・・・」

 

怖い脅しだなあ・・・

とにかくこんなに大きい遊園地でも、

閉園間際になると一人で入れる事もあるのか・・・

ひょっとしてあれか?オープン前のアトラクションを、

閉園間際にだけテストで開けるっていう・・・彼女と来たかったなぁ、うぅ・・・

 

「あれ?お姉さん?」

 

どこへ行った?

はぐれたら本当にまずそうだぞ?

あ、いた!あそこだあそこだ、急いで急いで・・・ふぅ・・・

 

「・・・・・こちらの中からはじまります」

「う、うん、始めてください・・・」

「ではまずご説明をさせていただきます・・・」

 

かしこまってこっちを向く。

 

「このアトラクションには9つの試練が待ち構えています、

その試練のうち一つでも打ち勝つ事が出きればあなたの勝ち、

全てに負けてしまえばそれはそれは悲惨な結末を迎える事となります」

 

・・・ええ?1つでいいのか!?

 

「なお、打ち勝つ事が出来た試練の数だけ英雄のメダルを差し上げます」

 

おお!それはいいかも。

 

「制限時間はございません、どうぞごゆっくりお楽しみください・・・」

「え?だってもうすぐ閉園・・・あれ?時計が止まってる・・・?」

 

まあいいか、遊園地側がいいって言ってるんだし、

それに何だかんだで入り口付近のみやげ物屋は11時近くまでやってるから、

本当に閉じ込められたり怒られたりする事は無いだろう・・・さて・・・ここを入るのか・・・よいしょ・・・

 

「う、うわ、何だここは!?」

 

大きな釜の前に魔女が・・・

 

「いーっひっひ、よく来たねえ、ここは人間の欲望の中で最ももろい欲を試す、

サキュバスハウスさ!ほおら見てこらん、欲望に負けた哀れな人間たちの醜い姿を!!」

 

パッ、と照明がつき、

周りがガラスばりになっているのが見える!

そしてその向こうは仕切られていて、水の無い水族館みたいだ、その中には・・・

 

「うわーーーっっ!!助けてくれえええっっ!!」

 

男の悲痛な叫び声!

まるで喉を押しつぶしたような・・・

そこにはとても遊園地には似つかわしくない光景が広がっていた。

 

「ひ、ひ、ひいいいいいい!!」

「いやだぁぁーー!もう、だしたく、ないーーーー!!」

「ほぉらほらほら、イッちゃいなさあい、ほーっほっほっほ!!」

 

360度取り囲む仕切られたガラス部屋、

その1つ1つに男が閉じ込められ、

黒い翼に胸を出し長いしっぽのついた女が抱きついている!

騎乗位で犯されている男、後ろから手でしごかれ精液をとばす男、

四つんばいでお尻にしっぽを突っ込まれている男、5・6人で犯されている男・・・

 

「これは・・・ここって・・・風俗!?」

 

醜く歪む男の表情、

すごい量の射精は苦痛なのか快感なのか・・・

この女の悪魔が確か、サキュバスって呼ぶような記憶がある・・・

 

「ひーーーっひっひっひ!お前は欲望に耐えられるかえ?」

 

周りが暗くなり魔女にスポットライトが当たる、

水晶玉を手にした・・・そこに映っているのは、僕!?

 

「おいしそうな餌だねえ・・・ひっひっひ・・・たっぷり性欲にまみれるといい!

全ての精を出しきったとき・・・お前はここから出られなくなるのさ!ひっひっひ!

楽しみだねえ・・・お前は勝てるかい?サキュバスの誘惑に・・・ひっひっひっひ・・・

もし1つでも打ち勝てば、お前を自由にしてやろう・・・さあ、行くが良い、カルマの道を!

もう後戻りは出来ないぞえ?ここでお前の抗う姿をたっぷりと見てやろう・・・ひっひっひ・・・」

 

魔女の姿も暗くなっていった・・・

やがて真っ暗に・・・何も見えなくなった・・・

 

「おおっと言い忘れておった、もし9つの誘惑すべてに負ければ・・・・・

・・・・・・まぁ、そんな人間はいないと思うがの・・ひっひっひっひっひ・・・」

 

な、なんなんだあ!?

 

あ、灯りだ!でも小さい・・・ロウソク!?

 

「どうぞ、こちらです・・・」

「あ、はい・・・」

 

ガイドのお姉さんだ・・・ついていく・・・

うーん、雰囲気を出すためとはいえ暗すぎる・・・

って、うわっ!ガイドさんが止まった・・・ここは?目の前に扉・・・

 

「こちらからお入りください・・・」

「あ、はい・・・」

「さらに次の部屋への扉もこの中にあります・・・9つの部屋全てを通ってください・・では、またのちほどお会いしましょう・・」

 

ロウソクを床においてどこかへ去っていくガイドさん・・・

1人取り残された・・・目の前には大きな扉、何か書いてある?

でっかく「CP−1」・・・CPってなんだ?

まあいいや、入らないと何もはじまらない・・・

扉に手をかける・・・ギギギーーーっと軋む音・・・僕は中に入った。

 

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