☆禁断のハーレム☆

 

僕「♪さーさーのーはーさーらさらー♪のーきーばーにーゆーれーるー」

 

七夕の夜、20階のベランダに腕を組み乗せ、恥ずかしくない音量で都会の夜空に歌う・・・

 

僕「♪おーほしさーまーきーらきらー♪きーんーぎーんーすーなーごー」

 

きらめく星・・といっても東京ど真ん中の夜空だ、

田舎のような宝石箱を散らした夜空ではなく、ポツン、ポツンと孤独に光る星・・・

 

僕「七夕っていっても、星だってみんな孤独だよな・・・」 

 

まるで自分を慰めるようにつぶやく・・・

ふうっ、とため息をつき、適当な星2つを勝手に織姫と彦星だと思い込む・・・

 

僕「年に1度会えるだけでもいいじゃないか、僕なんて会える恋人すらいないんだから・・・」

 

勝手に決めた織姫と彦星に向け指をさし、

かなり適当に文字を書きながらつぶやいてみる・・・

 

僕「素敵な恋人ができますように・・・」

僕「素敵な恋人ができますように・・・」

僕「素敵な恋人ができますように・・・・・・・・・」

 

短冊代わりに宙に3回、願いを唱えると

勝手に決めた織姫・彦星から1筋の流れ星が流れた、

それはまるで僕の願いを受理したかのように・・・

☆流れ星☆

僕「ま、まさか・・・でも、できるといいな・・・

普通は流れ星が流れてる間に唱えるものだけど・・・

でも、短冊だから・・・3回願ったから3人恋人が・・・そんな訳ないか・・・」

 

かなり適当な妄想を振り払い視線をマンションの下に向ける、

ここは20階建てマンションの最上階・・下が暗くなってるとはいえ少し恐い・・

見下ろすとそこは駐車場だ、さすがに夜11時を回っていると誰もいないか・・・

これが夏休み期間になると夜、花火している家族とかいたりいるけどこの時間じゃ・・

ん?あれは・・・人かな?駐車場の隅に人のような・・でも動いてない、か・・・?

芝生になってる所に人が・・寝てる?何だろう・・多分、人だ・・・酔っ払いか?

駐車場は暗いからはっきりとはわからないが・・いや、車上荒らしかもしれない、

最近多発してるし、隠れているのかもしれない・・・心配だ、酔っ払いだとしても・・・

ひょっとしたら体調崩して倒れてる人かもしれないし・・何にしろ、見に行った方がいいだろう、

一応このマンションのオーナーは僕だし、管理人は熟睡しているだろうし・・・よーし、

武器になる物も持っていくべきだな、下のほうきでいいか、携帯電話も持って・・・

 

エレベーターが1階についた、

僕はほうきをぎゅっと握り駐車場を横断する、

しまった!懐中電灯を持ってくるべきだった・・・

とはいってもマンションの方からの灯かりでまったく何も見えない訳ではない・・・

確かあそこらへん・・いる!確かにいる!芝生の上に人が・・・仰向けみたいだ・・・

 

さらに近づく・・・ん?女性か・・?

背の低い女性みたいだ、しかも赤いジャージを着てる・・

僕は思い切って声をかけてみる事にした・・・

 

僕「あの・・・どうしました?」

女「・・・・・」

 

黙ってる・・・

恐る恐るさらに近づく・・・

☆寝てる・・・☆

 

僕「あのー・・・い、生きてます?」

女「・・・・・んー・・」

 

今、声がした・・・

 

僕「大丈夫ですか?どうしたんですか?」

女「んんー・・・・・だー・・・れー?」

 

起き上がる女性・・・それは・・・

女は女でも、少女だった・・髪の長い中学生ぐらいの少女・・・

 

僕「すいません、その・・・こんな所で・・・どうしてたんですか?」

少女「んー・・・ん・・・」

僕「夜空でも・・・見てたんですか?」

少女「んー・・・・・寝てたのー・・・」

僕「こんな所で・・・?」

 

目を擦る少女・・・

確かこのマンションの住人だ、

それも何度か見たことがある・・・えっと・・・

 

僕「こんな所で寝てたら蚊に食われますよ?」

少女「・・・いいの」

僕「いいのって・・・ど、どうしたの?」

少女「・・・おまわりさんー?」

僕「え?僕?僕はこのマンションのオーナーだけど・・・」

少女「・・・・・一番上に1人で住んでる人ー?」

僕「そう、大学2年生の・・・君は誰?どこの部屋?」

少女「・・・・・125号室・・・雛塚・・雪巳ぃー・・・」

僕「雛塚・・・あ!あの大家族の!」

 

思い出した、あの1階に住む14人家族だ!

子供が12人いる、色々と問題の、あの・・・!!

 

僕「ゆき・・みちゃん?どうしたの?喧嘩でもしたのかな?」

雪巳「・・・・・ううん、寝てたのー」

僕「だから・・・どうして?」

雪巳「寝る場所がー・・・なくってー」

僕「寝る場所って・・・」

 

確かに雛塚家の住んでる場所は1階だから狭い、

うちのマンションは下の階へ行くほど1世帯の部屋数が少なく広さも狭くなり、

1階にいたっては住居は1世帯につき2部屋しかない、後は小さなキッチンとユニットバス・・・

 

僕「い、いつもここで寝てるの!?」

雪巳「うんー、1週間ぐらい前からー・・・」

僕「駄目だよ!どうして!」

雪巳「ベットがちぎれちゃったのー・・・」

僕「え?ち、ちぎれるって??」

雪巳「カーテン結んでハンモックにして寝てたんだけどー、ちぎれちゃってー・・・」

 

そ、そんな寝方って・・・!?

いかに雛塚家の中が大変な密集状態になっているか想像がつく。

 

僕「とにかく、こんな所で寝ちゃ駄目だよ!家に戻ろう?」

雪巳「・・・寝る場所がないのー・・カーテン破れたままだしー・・・」

僕「他に寝る場所、本当にないの?」

雪巳「あとはー・・・公園ぐらいしかー・・・」

僕「公園って・・もっとあぶないよ、ここより!駄目だよそんな所で寝ちゃ!」

雪巳「・・・でもー、雪菜が寝てるよー・・・公園でー」

僕「ええっ!?ゆきなって?」

雪巳「・・・・・妹」

僕「ど、どこ!!!!!?????」

 

雪巳ちゃんを強引に引っ張り慌てて駐車場を出る!

この近くの公園って大きいの1つに小さいの2つだけど・・

いや、もうちょっと行けばもっと公園は・・・あ、やっぱりあそこか?

近くで一番大きい公園・・浮浪者とか出る所じゃないか?どこだろう・・・

見渡すと人は・・・いた!シャツとスパッツの少女がベンチで膝の上に本と眼鏡を置いて座ったまま寝てる!

 

☆寝てる・・・2☆

僕「雪菜ちゃん?雪菜ちゃん?」

 

確か彼女のはずだ・・・

後から遅れて雪巳ちゃんも来る・・・

 

雪菜「ん・・・ん?」

僕「雪菜ちゃんだよね?大丈夫?何ともない?」

雪菜「あ・・・雪巳おねえちゃん・・・」

雪巳「雪菜、あぶないよー、ここ・・駐車場行こうよー」

雪菜「でも・・・本読みたいからぁ・・・明るいのがいい・・」

 

雪菜ちゃん・・雪巳ちゃんの妹ってことは、まさか、小学生!?

 

僕「雪菜ちゃん!いったいいつからここで寝てるの?」

雪菜「んー・・わからない・・いつのまにか寝ちゃった・・んです」

僕「そうじゃなくて!いつもここで寝てるの?」

雪菜「んーん・・・昨日から・・・です・・・」

僕「昨日って・・その・・変なおじさんとか来なかった?」

雪菜「わかんない・・・です・・・」

 

ひょえー・・・

大変な事になってるぞ雛塚家・・・

 

僕「雪巳ちゃん、他に外で寝てる子いるの?」

雪巳「いないー・・・と、思うけどー・・・」

僕「2人とも!外で寝ちゃ駄目だ!家に帰りなさい!」

雪菜「・・・寝る場所が・・・ない・・・です」

僕「だって家だろ?家に寝る場所がないって、そんなの家じゃないよ!」

雪菜「でも・・・場所が・・・ないんです・・・」

僕「とにかく、お兄さんと一緒にマンションに帰ろう!さあ!」

 

膝の上の眼鏡を雪菜ちゃんに渡す、

眼鏡をはめて本を持って立ち上がる雪菜ちゃん、

お姉さんと同じ長い髪を軽くはたいて土埃を落とす・・・

 

僕「さあ!帰る帰る!」

雪巳「でもー・・・」

雪菜「寝れない・・・です」

 

戸惑う2人の手を引いてマンションへ戻る、

こんなまだ小・中学生の少女が野宿だなんて・・・

雛塚家に文句を言わないと気が済まない!今日こそは言ってやる!

 

 

僕「ここ・・だよね?」

雪巳「うんー、そうだけどー・・・」

雪菜「・・・・・まだ朝じゃないから入れない・・です」

僕「言われたの?朝まで入るなって」

雪菜「んーん・・・違う・・・・ます」

僕「インターフォン押すよ?」

雪巳「・・・鍵開けるー・・・」

 

ジャージのポケットから取り出した鍵で扉を開ける、すると・・・

 

僕「うわっ!これは・・・」

 

むわっ、と嫌な空気が鼻につく、じとーっとした・・・

奥から照らされている僅かな夜光灯の光で見えるものは、

狭い玄関に寝ている子供だ、通路も、キッチンも、奥の部屋も・・・

人と服と、様々な物が床にギッシリ詰まっていて足の踏み場もない!

 

僕「うあー・・・これは、ひどい・・・」

 

思わず声に出して言ってしまった、

なんせここ1階は全て1人暮らし用に作られている。

そんな所に14人も住んでるんだ、14人分の荷物だけでも2部屋満杯になって当然だ、

そこにみんなが寝てるんだから・・・戦争の難民キャンプとかってこんな感じなんだろうな・・

少女2人が言っていた事もうなずける、あまりにもひどすぎる、劣悪すぎる環境だ・・・

 

僕「・・・・・ごめん、出ようか、こんな所で寝てたら・・・」

 

こんな所で寝てたら病気になっちゃうよ。

 

雪巳「うんー・・・駐車場行くねー・・」

雪菜「じゃあ・・私も今日は・・駐車場・・・に・・します」

僕「駄目!それは駄目!・・・仕方ない、今夜は僕の家に泊まろう?それでいい?」

 

顔を見合わす雪巳ちゃんと雪菜ちゃん・・・

 

雪巳「本当ですかー・・・?」

雪菜「嬉しい・・・です・・」

僕「うん、今夜はね・・・さあ、行こう」

 

玄関から出る僕、すると・・・

 

雪巳「待ってー・・あのー・・・」

僕「どうしたの?」

雪巳「もう1人・・一緒でもー・・いいですかー?」

僕「もう1人って?まだ外にいるの?」

雪巳「ううん・・・仲のいい妹もー・・1人連れていきたいー・・・」

雪菜「・・・お願い・・し・・ます・・・かわいそう・・なんです・・・」

僕「うーん・・・ま、いいか。いいよ、連れてきておいで」

雪巳「はいー・・・」

 

つま先立ちで玄関を渡る雪巳ちゃん、

通路で寝てる幼い少年を抱きかかえる、彼か?

と思ったら壁にもたれさせて、扉を開ける・・ああ、扉を開けるためか・・

あれ?確かあそこって・・中の電気をつける、覗ける・・そうだ、あそこはユニットバスだ!

そして中に人がいる、なんと風呂の蓋の上に、ものすごく窮屈そうに寝ている少女がいる!!

☆寝てる・・・3☆

雪巳「雪沙、起きてー!ゆー・きー・さー!」

雪沙「・・・・・ん・・・なぁに?」

雪巳「行こー、雪沙・・・」

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