・・・・・・・・・

 

「・・・・・ま、まぶしい・・・・・朝・・・か!?」

 

外はすでに日が昇っている、

ここは・・・喫茶店の裏みたいだ、

壁に背をつけて放置されている・・・あれ?

 

「胸ポケットに、紙が・・・?」

 

服は元通り着せられている、

股間は・・・睾丸が何か鈍くジンジンする、

毒が溜まっているんだろう、血清がなければ夜には・・・・・腐り始める。

 

「手紙は・・・なんだ!?」

 

引っこ抜いて開けると、

ウィンドルージュから作戦のおさらいが書いてある、

最後に「愛するダーリンへ ウィンドルージュ」とキスマークが・・・

 

「・・・・・こんな作戦、本当にうまくいくんだろうか・・・」

 

それより僕は選択をしなければいけない、

去勢処理をされる事を覚悟して、警察一家としてウィンドルージュを捕まえるか、

ウィンドルージュに従って、全てを捨てて海外へ逃亡するか・・・どっちも辛い人生になりそうだ。

 

「他に解決策は、無いんだろうか・・・?」

 

ウィンドルージュが言っていた毒、

打たれちゃって射精しちゃったけど・・・あの話、本当だろうか?

彼女が駆け引きに長けているのは今までの戦い、ゆうべのセック・・・アレで思い知らされた、

 

「でも・・・ゆうべの彼女・・・三上さん・・・あれが本心だとしたら・・・」

 

変装が得意なウィンドルージュとはいえ、

あの三上さんの涙、気持ちは僕の心にストレートに響いた。

全てが全て、嘘とは思えない・・・それにウィンドルージュの真相も丁寧に教えてくれた、

何もかもさらけ出して、正体も明かして、そのうえで僕を欲しがっていた・・・正真正銘の愛の告白だ、

そうは言っても「去勢か警官の道を捨てての海外逃亡か」を迫られているんだけど・・・そこまでして僕が、欲しい・・・?

 

「信じたとしても・・・それを受け入れるかどうかは、また別だ」

 

ウィンドルージュを捕まえる事ができたら・・・

この作戦通りに、本当にやるのなら、今までで一番逮捕できる確率がある。

捕まえてしまえば血清を奪い取って、注射すれば・・・そもそも毒自体が嘘かも知れないんだし。

 

「・・・・っ」

 

股間がちょっと痛い・・・

これは毒のせいじゃなく、射精のしすぎのせいだ・・・

 

「逮捕して・・・本当にそれでいいんだろうか?」

 

ウィンドルージュのしてきた事は確かに泥棒だけど、

義賊として本当の悪を暴き続けてくれた、その最後の舞台なんだ、

退職金としてラストセンチュリーを渡してもいいくらい・・・だからって僕まで渡すわけにはいかない!!

 

「正体がわかってるんだから、今からだって探せるよ・・・な?」

 

いや、それは無駄だろう、

ウィンドルージュのやる事にぬかりは無いはずだ、

逆に動きを察知されて、ダイヤをあきらめて逃げられたら・・・去勢が待っている。

 

「じゃあ僕が、彼女の言うとおりにしたら・・・」

 

ウィンドルージュに手を貸して、一緒に逃亡・・・

刑事になる夢も、そして家族も捨てないといけない、

何より今まで僕のために良くしてくれていたみんなを裏切るんだ、そう簡単にはできない。

 

「だからこそ、毒を打つなんてことまでしたのか・・・」

 

脅されてやらされた、と素直に言えばわかってもらえるかも、

それよりウィンドルージュを安心させておいて、血清を打ってもらってから捕まえる・・・

緻密な計算をするウィンドルージュが、そんな事を想定していない訳がない、彼女の事は僕が一番良く知っている。

 

「どうすればいいんだぁ・・・」

 

涙を腕でぬぐう・・・

彼女を裏切った所で、すでに人質は取られている、

僕の子供・・・犯されたとはいえ、彼女のお腹には僕の子供が宿るだろう、

その子供が将来、僕と戦う事になる・・・それってかなり酷い話だ、命を何と思っているんだ!

と、怒ったところでウィンドルージュはいない・・・正直、逃げ出したい・・でも、どっちも選ばず逃げたらそれこそ最悪の結末になる。

 

「・・・・・もう1度会って説得・・なんて時間はもう、ない・・・よな」

 

・・・・・あれ?ウィンドルージュの手紙、裏があるぞ?

 

「なんだろう・・・びっしり文字が書いてある・・これは・・・・・」

 

これは・・・・・ラブレター!!

 

「えっと・・・こんな方法をとってごめんなさい、でも他に方法が思い浮かびませんでした、

 ずっとずっとあなたを見つめていて、決して言葉にはできなかった事を最後に文章にして伝えます・・・」

 

切々と書かれた僕への想い・・・

読めば読むほど胸が熱くなる・・・

今までのように影で助けるのではなく、これからは傍で助けたい、

もし駄目でも子供は立派な義賊に育てて、ウィンドルージュと同じように僕を助ける、

そして何より・・・どちらを選んでも、一生、僕を死ぬまで愛し続ける、と・・・そして最後に・・・

 

「愛するあなたへ・・・・・ウィンドルージュこと三上メイ」

 

思わず手紙に涙をこぼす・・・

ううぅ・・・ぼ、僕は・・・どう答えたらいいんだ・・・

残された時間はあとわずか・・・今は・・・携帯電話を取り出すと・・・

 

「・・・・・あれ?着信67件・・・・・あ!!」

 

きっと帰ってこなくて心配した親からだ!!

 

「みんな、探してるよな・・・」

 

僕は手紙を大切にしまうと、

ゆっくりと足を進めた、僕の行く道を考えながら・・・・・

 

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