高価な絵画を胸に抱いたまま美術館から逃げていく・・・ポニーテールをなびかせながら・・・
もう、いくら追っても間に合わないだろう、またやられた、また・・・・・
まるでわざと狙ったかのように、僕の手をすりぬけて逃げる怪盗ウインドルージュ・・・
次の日、朝食の時間・・重い食卓、父が新聞を読みながらぼやく。
予告されていたにもかかわらず盗まれた警察の悪口もいつもの通り・・・
これじゃあウインドルージュ担当刑事として恥だよな、一生懸命やってるのに・・・」
渋い表情でコーヒーを口にする父、となりで母もため息まじりに言う。
「いつになったら捕まえられるのかしらねぇ・・うちはもうウインドルージュで目茶苦茶よ」
僕もウインドルージュ担当刑事の息子として、力になれず情けない・・・
と、そうつぶやいた僕の携帯電話が鳴った、相手は・・・警視総監の祖父だ。
頭が相当切れててな、15の時からウインドルージュの手がかりを助言してくれて、
そのまま7年間ずっと特別についてもらっておる、いわば特別捜査官じゃな、
こいつのおかげでウインドルージュを何度も逮捕できそうな所まで追いつめたんじゃ」
「なあに、孫といっても春からは大学を卒業して警察学校に入る、
じきに遠慮せずこき使えるようになるから、別に気を使わなくてもよい」
「ウチの息子は今までもこき使ってたじゃないですか、これで気を使ってたんですか?」
祖父に口を挟んだ父とは対照的に箱に集中する僕・・・情報を聞かなきゃ。
「紙・・ぬいぐるみ、バネ・・じゃあ、いつもの犯行予告ですね」
「鑑識さん、火薬はなかったんでしょ?ウインドルージュは人を殺しませんよ」
オレンジのレオタード、ポニーテールの・・手にラブレターを持っている、
「明日夜11時59分、宝石・ラストセンチュリーをいただきまあすbyウインドルージュ」
「ラストセンチュリーといえば、先週、日本の宝石店が買った世界最大のダイア!あれをか!?」
「ええ父さん、昨日から一般公開されている、20世紀最後の大晦日に掘り出された世界一大きいダイアです」
そんなすごい物を・・今までで最も高価なウインドルージュのターゲットだ、
これをブラックマーケットで売れば人生を5回は遊んで暮らせる・・・あれ?
手紙が・・ウインドルージュの手紙の下の方にまだ文字があるぞ?
いつもは冷静なこの僕もこの2文字には驚かずにはいられない・・・
まさか・・間違いじゃないよな、この手紙・・偽物?いや、ウインドルージュ独特の判も押してある、
間違いなく本物・・でも引退だなんて・・信じられない、そんな、突然に・・・
僕は推理をはじめた、きっと何かの罠なのではないか?何かの・・・??
「何?ウインドルージュが引退だと!?息子よ、それは本当か?」
引退・・引退・・・でも罠だとしても、どういう理由で・・・!?
「しかし息子よ、もし引退が本当なら喜ばしい事じゃないのか?」
「とんでもない!もし本当に引退したら、もう捕まえられないかもしれないじゃないですか!」
「ふむ、孫よ、引退されると確かに困るのう・・お前の警察になる目標がなくなるからの」
「怒るな孫よ・・まあ確かに、ウインドルージュもラストセンチュリーを売れば引退して隠居できるだろうな」
「ウインドルージュはそんな奴じゃありません!今までウインドルージュのおかげで、
どれだけ悪の組織や腐敗した政治家を暴けたと思うんですか!ウインドルージュの盗みには必ずもっと大きな犯罪のしっぽがある、
単なる泥棒とウインドルージュを一緒にしないでください!今まで盗まれた物も、ほとんどは本来の持ち主に戻されてるじゃないですか!
忘れたんですか?幻の絵画事件や、黄金の招き猫事件の時だって、ウインドルージュの盗みのおかげで・・・!!」
「ふっふっふ、孫よ、お前がウインドルージュに惚れておるのはわかっておるし、我々も心の中では感謝しておる、
だが、罪は罪だ、それは消えることはない、おおっぴらに盗まれ続けるのも警察の威厳にかかわるからの」
「とにかくこれから対策本部じゃ、お前の知恵をまたぞんぶんに借りるぞ、これが最後と思って頑張ってくれ」
最後・・これが・・そんなの、信じられないよ、ウインドルージュ・・・
やはりウインドルージュが狙った宝石店には黒い裏があるようだ、
ラストセンチュリーも海外の貿易会社から騙しとった金で買ったようだし・・・
それにしても、何だってこの時期に引退なんだ?ウインドルージュが?いろいろ推理しよう・・
僕は警視庁からの帰り、いつもの喫茶店に入った、もう電気がついている・・・
当時僕らの年代で流行していた香水だった、だから年齢は同じか、かなり近いはず・・・
もし同じだとすると・・・22歳、大学卒業・・・?そんな馬鹿な・・・うーん・・・でも・・・
しかも、ノーブラ!?乳首が見えそう・・め、目が吸い込まれるように・・覗いてしまう・・う?
胸が、巨乳が大きくなってきた?何だ?こ、これは、胸じゃない?え?あれ???
そうだ!催眠ガスが吹き出してきた!しまった!これは・・ウインド・ルー・・・ジュ・・・