・・・・・夜が明けた・・・

 

開いた窓から朝日が射し込む中、

私は愛しいお方を背中からきゅっ、と抱いている。

この場所を確保・死守するのは大変であった・・・目を覚まされたようだ。

 

「ハプニカ様・・・」

「どうした?」

「俺、ハプニカ様に、自由して欲しいって・・・言いましたよね」

「・・・・・そうだな」

「・・・ハプニカ様のおかげで・・・俺の心は、やっと、自由になれたような気がします・・・」

 

心が自由に、か・・・私は、いや、私たちは、

ようやく心も体も手に入れることができ、囚えられたと喜んでいる。

だがその事によって、自由になれたとすると、私たちから逃げなければならぬという、

呪縛から開放されたのであるな、ならば私たちも追う呪縛から開放され、自由になった。

朝日の光りが我々を祝福してくれているようだ、ようやく、これで、お互いに素直になれた・・・

 

「そうか・・・そうであれば嬉しいぞ・・・」

「はい・・・ハプニカ様が救ってくれたんです・・・」

「そなたは私達を救ってくれた、私達も当然そなたを救う・・それだけの事だ」

「そうですね、ですからもう償うとか考えなくても・・・」

「ああ、これからは、ただ、ただ愛し合うだけだ・・・」

 

朝日に照らされた愛しいお方の、安堵に満ちた表情・・・

もう、2度と疑ったりはしないであろう事がわかる・・・

なぜなら今、やさしく唇を重ねてくれている・・・このお方のほうから・・・

これからはこうして自然に、愛を確かめ合える、それが何より嬉しい・・・

その感激が私の目から、一筋の涙を流れさせる・・・この涙は・・・・・拭けない。

 

「お兄ちゃん、次はミルだからねっ」

「あら、順番は決まってませんわ、私ですわね旦那様?」

「私もー、1曲と同じくらいのキスを奏でたいのですー」

「キスだけじゃ満足できないキスをしてあげるけど、どう?」

「ダーリン、キスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキス〜!」

「あの・・私は最後でかまいませんので・・・キス・・・して・・ください・・・」

 

ああ、せっかくの良い雰囲気が・・・台無しであるな。

新たな悩みがあるとすれば、平等な立場からのライバルだ・・・

まあ、私も愛しいお方もそれを望んでこういう形になったと言えるが・・・

愛しいお方に迫るあまり、私が引き剥がされそうになっておるぞ!?

 

「そうせっつくではないぞ、困っているではないか」

 

まあ本当に困っているのは私であるが・・・ライバルのララが私に向かい合う。

 

「ではこうしましょう、旦那様が選べないようでしたら抽選にしましょう」

「・・・それは良い案かも知れぬな」

「ハプニカ様は今朝1番のキスをしてらしたので明日は最後ですわね」

「な・・・抽選ではないのか」

「抽選せずキスしたからですわ、よろしいですわね、旦那様?」

 

・・・まったく強引な、まあ私とて人の事は言えぬがな!

よし、覚悟を決めて、奪い合う時は奪い合おう!血みどろの喧嘩までは行かぬが・・・

愛しいお方の視線があらぬ方を向いている、その先にいたのは・・・・・なんだシャクナか。

 

「あの・・・トレオ様、私、くじを作ってまいります・・」

「シャクナさん・・・キスしよう」

「えっ!?わ・・わたしは・・最後で・・・」

 

気を使ってかルルやレンやミルがシャクナを前へ出す、

それを抱きうけた愛しいお方がおもむろに唇を、しっとりと重ねた・・・・・。

 

「・・・・・トレオさま・・」

「シャクナさん、我慢しないで・・いいんですよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・はい」

 

胸に甘えておる、うらやましい・・・

凝視できないではないか、思わず窓の外を見つめる、

遠くで私の白竜と一瞬目が合った、良かったな、と言っているようだ。

 

「さて、次は・・・」

 

シャクナの次を物色しておるようだ、

本当ならば何があっても私しか選べぬように夢中にさせたいが、

まあ今日くらいは良い、それよりも今後の、長期的な事だ、まずはここの名前から・・・

 

「・・・・・」

 

空を見上げながら1つ考え付いた、

ぶわっ、と風が私の髪を持ち上げ、なびく・・・

 

「そうだ、そなたに良い考えがあるぞ」

「なんでしょうかハプニカ様」

「ここを新しい国にするのだ、そなたの生まれ育ったモアス・・・ニューモアスという国名はどうであろうか」

「ニューモアス、ですか・・しかしモアスは海のイメージが・・・」

「なあに、広まれば皆、馴染むものだ・・・天空の島ニューモアス・・・良い響きではないか」

 

そうだ、無くした物はまた新たに作って、手に入れれば良いのだ。

 

「ニューモアス国王はそなた・・我々は后(きさき)だ」

「では、国民はどうしましょう」

「そうだな、しばらくしたら地上で希望者を募り、白竜で運ぶとしよう」

「これだけ広ければ、確かに街の1つはできますね」

「しかし国民だけでは足りぬ・・・早く王子や姫を作ろうではないか」

 

早ければマリーが来る頃には皆、妊娠しておるかもな・・・

おそらく2つ考えがあると言っておったうち残りの1つはそれであろう、

皆がこれから同時に妊娠してしまうと、愛しいお方の夜のお相手が不十分になる、

その丁度良いタイミングでマリーがここへ駆けつけ、愛しいお方の8人目の妻となり、

持ち前のテクニックで愛しいお方を快楽地獄へと誘う・・・私たち7人以上の技量を持って余りあるからな。

 

身重の私たちが出産するまでの間、マリーに身も心も骨抜きにされた愛しいお方は、

マリーだけを犯し続け、いや、マリーに犯され続け、やがてマリーも妊娠するであろう。

その頃には私たちも出産が終わり、子育てをしながら今度は愛しいお方の心を7人がかりで取り戻す・・・

多少ずれがあったとしても、こうする事で1年中、1日も休まず愛しいお方の体を満足させられるのだ、

そうして5年10年と経った時に、何人に子供が生まれているか、想像しただけでも楽しみだ、ふふふふふ・・・

 

「おにぃちゃ〜ん・・・えいっ!」

 

ちゅううっ!!

 

「!!」

 

ミルが吸い付くようなキスをしている、

一瞬でも隙を見せるとこうだ、いや、逆に私とて隙を狙わねばならぬ、

他の皆も嫉妬の表情をしておる、もちろん私もきっとそのような表情であろう・・・

 

・・・ちゅぽんっ!!

 

ルルが強引にひっぺがした!

 

「次は私っ!!」

「んぐ!んぐぐぐぐ!!」

 

怒りに任せたようなキス・・・

いくら競い合いといっても、無秩序はいかぬ。

ララやリリやレンもその次を狙いタイミングを計っておるし・・・

 

「んん・・・んんんんん・・・」

 

そうだな、こうしよう。

 

「・・・やはりそなたは、キスをするよりされる方が似合っているな」

「・・・・・んむむ・・」

「早い者勝ちだと争いになる、早速今夜からクジを引こう」

「んんんんん・・・」

「そなたが順番をつけられるようになるまでの暫定措置だ、いつでも順をつけるが良い」

 

優しすぎるお方だからな、クジという事になれば、

運であるゆえ心が痛まないと同時に、順をつけねばという良いプレッシャーにもなる、

早速レンがパンツに手を入れ・・・こういう混沌とした状態を収拾できるのは己しかいないと早く気付くであろう。

 

「ダーリン〜、レンは〜、こっちにキスするね〜」

 

パンツをずり下げ、早くも勃起しているモノを・・・!!

 

ぱくっ♪・・・ちゅ〜〜〜♪

 

「!!!!!〜〜〜〜〜」

 

ララやリリも服の中へ手を入れ愛撫しはじめた、

私もいつまでもこうして冷静に解説している訳にはゆかぬ、

愛しいお方の耳へ唇を近付け、吐息混じりに、ささやいた。

 

「・・・皆で軽く朝食をいただくとするか・・・そなたをな・・・」

 

耳をれろっ、としゃぶる・・・

私も耳の攻めのみでこのお方をイカせる所まで技術を磨かねばな・・・

マリーなら余裕で出来そうだ、半年後、ここへやってきたら教えてもらうのも良いだろう、性の技を・・・

 

愛しいお方は感じながら、ぼーっと外を見ている、

幸せを感じているのか、心が自由になった事を青空の開放感で感じているのか、

それともこうして囚われて犯されている事に喜び、酔っているのか、私にはわからぬが、

ただ、なるべくしてなった結末であろう、傷ついた英雄は、傷つかせてしまった7人の妻に、

こうしてずっと、ずっと、天寿を全うするまで、癒され続けるのだからな、もう決して、嫌な思いはさせぬ・・・

 

「そなたと・・・幸せに・・なるぞ・・・良いな」

 

そして舌を耳の奥へ・・・快感に震えているようだ、

頬張るような口付けをしていたルルを腕で外すと、愛しいお方はつぶやいた。

 

「はい・・・みんなと・・・幸せに・・な・・り・・ま・・・す・・・あああああ!!」

 

ぴゅううっっ!!

 

こうして私たちは、ようやく天空の国ニューモアスで、

最高の幸せを過ごす事となったのだった・・・もう、絶対に、何があっても、離さない・・・・・

 

 

 

この半年後、マリーがやって来た頃にはダルトギア王国も安定し、

スバランの木にあるニューモアスは秘密の聖地でありつつシグリーヌ王から独立自治権を認められた。

その3年後、1人の王と8人の王妃、18人の王子や姫を持つニューモアス王国が各国の承認により正式に建国する。

これによりニューモアスの存在はスバランの木とともに広く知られる事となったが、急激に人を集めるような事はせず、

白竜やスバランの木の生態を邪魔せぬ程度で、ダルトギアはもちろん各国の優れた人々の協力を得て、空中都市を造っていった。

 

結果、できあがったのは世界各国選りすぐりの教育機関・研究機関であるネオ・ゲングラード女学院であった。

ここは各国の女エリート、もちろん地位だけでなく平民であっても突出して優れた能力・才能・素質さえあれば、

誰でも入学試験を受けることができ、何か優れた分野を持つ300名程度のみがやっとこのニューモアスに入れ、女学院で学べるのだ。

すでに住んだ者からは「地上最高の楽園」「死ななくても行ける天国」「神々の住む木」「行っただけで悟りを開く」と呼ばれるほどのニューモアス、

入学できても落ちこぼれた者はすぐに白竜で地上に降ろされてしまうため、合格した女生徒は皆、必死に学び自分の特技をのばし、足りない部分を補おうとする。

 

様々なジャンルを教える教師は、なんとこの国の王妃たちである。

槍のスペシャリストを育成し、無力な僧侶でもそれなりに槍を使えるようにしてしまうレン、

関節技などの柔術や素早い身のこなし、受身などを教え武器を持たずとも戦えるようにするルル、

音楽や詩、芸術などの才能を伸ばしたり、発想力・独創力など、文章にしにくい部分を教えるリリ、

戦術や剣術、天馬や飛竜などの乗り方や、総合的な部分を広く教えるララ、元ハプニカ親衛隊4姉妹。

 

僧侶として回復魔法はもちろん、応急手当や心の癒し方まで教える、この学院の名付け親・シャクナ、

心理学を中心とし、女を武器にする戦い方、時には色気を餌に男をいやらしい罠にはめる方法さえ教えるマリー、

シャクナの教える回復魔法以外のありとあらゆる魔法、最上級魔法から危険な暗黒魔法の研究さえさせてしまうミル、

普通の生徒・研究生はこの7人が受け持ち、得意な部分は最高レベル以上まで磨き上げさせ世界一を目指させる、と同時に、

得意でない分野、僧侶に剣術、剣士に回復魔法、踊り子に戦術、地味な植物研究員にハニートラップなどを標準以上に習得させていった。

 

ただ単に1つ得意なものがあれがいい、それは入学までの話・・・

卒業してからは1つのみの武器でなく、様々な分野を、苦手であってもこなさせる、万能な人物に育て上げるのだ。

現にこの学院を卒業し自国に戻ったものは、例外なく国の要職についたり商売や道場、教会を成功させ巨万の富を掴んでいる。

人に卒業メダルを見せただけで尊敬のまなざしを受け、各国も卒業生を多く出そうと躍起になっている、それだけのステータスがあるのだ。

そして通常の入学者とは別に、さらに特別な枠が設けられている、それは「トレオクラス」各国の王子・姫だけが国王の推薦で送られてくるのだ。

 

皇族直系のエリートらが集まるそのクラスのみで教える教師はかつてダルトギアの女王であった第一王妃ハプニカ・・・

将来それぞれの国で王妃となったり女王となったりする者を、自らの体験を交え叩き込んでいく、教える内容ももちろんオールマイティだ。

他の王妃こと他の教師が教える内容も一通りわかっているゆえ、本当にレベルの高い専門的な事や手が空かない時以外は全てハプニカが教え、

預かった大切な姫1人1人を丁寧かつ厳しくかつ愛情を持って、一人前に育て上げ各国へ帰す・・・おかげでどこの国からも大変にありがたがられている、

無口で人見知りの激しい姫は社交的でおしゃべりになり、じゃじゃ馬で言葉の荒い姫はおしとやかで、それでいて心遣いある優しくも強い姫に変身する、

男嫌いで気高い姫が来た時は講師マリーのせいで、色気のありすぎるサドで男好きな姫になり多少問題になったが、もちろん普通の姫は普通以上の良い姫になった。

 

さて、先に述べたように、ネオ・ゲングラード女学院は男であってもトレオクラスには自国他国を問わず王子なら入学できる、

そこではニューモアス国王様のありがたい言葉を王子たちのみが聞く事ができるほか、通常はハプニカの下で各国の姫と一緒に、

学院全体で言えば300人の女性に囲まれて数名の男が4年間勉強するのだ。エリート王子ゆえに、ひっきりなしにモテる。

これをうらやましい、と思うかも知れないが、これはこれで大変な試練となる。もちろんこの4年間がきっかけでのちの王妃を見つける事も多いのだが、

特別なクラス、特別な地位といえど中には落第する者もおり、自国に帰された時は酷い女性恐怖症で廃人のようになっていた者もいるという、

もっともこれは本人が悪いので送り出した方も仕方なしと思ったそうだが、将来の国王候補者ゆえ、それだけ厳しい環境を乗り越えられなくては意味がないのだ。

結果、乗り越えた王子は全て国王となっている、いわば国王養成所と言えよう。これを利用し3人の王子を送り、最も優れた1人を卒業させて欲しいと頼む国王もいる。

 

また教育機関でありつつ研究機関でもあるゆえ、

教師の補佐役として卒業生が助手という形で戻ってくる。

皆、地上で功績を上げた者で、最高の楽園・ニューモアスへ住みたいと希望してきたのだ。

そこで国王に永住を許された者は各自の研究をしたり、素材ある女剣士を育てたり、普通にのんびり暮らして働いたり、新たな生活区域を開発したり・・・

最終的にはこの国の名前の元となったモアス島とほぼ同じ面積の国土、人口となり、形は違えど海に沈んだモアスは空で復活したのだった。

 

そして、この「空中の要塞都市」で国王と8人の王妃は末永く、それはそれは幸せに暮らした・・・・・

 

 

 

ちなみに

 

 

 

モアス島出身の両親から生まれた子供が、

アバンス国王セルフの粋な計らいにより養子扱いとして王子となり、

ネオ・ゲングラード女学院に送り込まれ、純血のモアス人としてニューモアスの姫と恋に落ちるのだが、

 

 

それはまた、

 

別のお話。

 

ハプニカ編・おわり

 

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