4日めの夕方、三久ちゃんの部屋。 

僕は何だかそわそわと落着かない、 

気がつくと窓から外を覗いたり、玄関まで足が向いてしまう、 

まるで母親の帰りを待つ子供のように、僕は三久ちゃんを待っている。 

どうしてだろう・・・いつのまにこうなったんだろう、 

三久ちゃんに会いたくて、三久ちゃんが待ちどおしくて、 

学校が終わると一目散にこの美麗家に帰って来てしまった。 

 

今朝、三久ちゃんは僕のためにお弁当を作ってくれた、 

見かけは不格好だったが一生懸命作ってくれたのがわかる、 

真心のこもった味がしておいしかった。 

そのお礼を言わなくちゃと思い早く帰って来たはずなのだが、 

どうも三久ちゃんに対してそれ以上の感情が湧いているようだ。 

 

玄関から待ちに待った声が聞こえてくる。 

 

「ただいまー」 

 

三久ちゃんの声だ! 

胸がどきどきと高鳴る。 

息苦しい、そしてあの可愛らしい声を聞いただけで、 

なぜか体中がムズムズとくすぐったくなる。 

僕はなんとか落ち着こうと深呼吸をした。 

 

ガチャッ 

 

「有人おにいさま、ただいまぁー」 

 

満面の笑みで僕の胸に飛び込んでくる三久ちゃん、 

それを思わずきゅっと抱きしめる僕。 

小さくてやわらかくって、それでいてきゃしゃで・・・ 

セーラー服や髪の毛から、甘い、いい匂いがしてくる、 

こうしているだけで背筋がゾクゾクするほど気持ちいい。 

 

「おにいさまぁ、苦しいよぉ」 

「あ、ごめんごめん」 

 

思わず腕に力が入っていたようだ、 

僕は慌てて三久ちゃんを放した。 

 

「有人おにいさまぁ、そんなに抱きしめなくっても、 

三久、どこへも行かないよぉ」 

「うん・・・でもなんか、さあ・・・」 

 

まさか「体が勝手に」とも言えまい。 

 

「私はおにいさまの方が心配なのぉ・・・ 

ねぇおにいさまぁ、三久と・・・これからも一緒に暮らしてくれる?」 

「うん・・・う、う?」 

「本当!?うれしい!!三久と結婚してくれるのね??」

「ちょ、ちょっと待って!!」 

「!?」 

 

不思議そうな顔をする三久ちゃん。 

 

危ない危ない、 

三久ちゃんの勢いにそのまま押し切られるところだった、 

我に帰り、僕は落ち着いて話す。 

 

「それはまだ急に答えを出すべき事じゃないんだ、 

ほら、とっても大事な事だろう? 

だから、じっくりといろんな事を考えて、 

僕の人生を決めるんだ、三久ちゃんだってまだ13歳なんだから、 

そんなに簡単に、僕と結婚するなんて決めちゃ駄目だよ」 

 

ちょっとむっとした表情になった三久ちゃん、 

やばい、また怒らせちゃったかな?と思ったが、

三久ちゃんはすぐに笑顔を取り戻した。 

 

「いいもん、私、絶対有人おにいさまに結婚してもらうんだから!」 

 

いそいそと服を着替える三久ちゃん、 

かわいらしい下着につい目が釘付けになってしまう、 

13歳の少女に・・・僕は、あんな事をしてしまった・・・ 

いや、正確には「されてしまった」のだが・・・ 

そう思うたびにあの痺れるようなくすぐりの快感が脳裏に蘇る。 

 

「おにいさま!」 

 

ハッと我に帰ると、 

三久ちゃんは可愛らしいよそ行きのピンクの洋服に身を包んでいた、 

ひらひらのドレス系を少し抑え目にした感じだ。 

 

「おにいさま、これからデートに行きましょう♪」 

「え・・・デート?」 

「はい、お買い物です、これから毎日おにいさまのお弁当作ってあげたいから、 

何が食べたいのか一緒に行って教えてください!」 

 

お弁当・・・そうだ、お礼を言わなければ。 

 

「その・・・おいしかったよお弁当、ありがとう」 

「嬉しい・・・・・」 

 

素直に目を輝かせる三久ちゃん、 

服とマッチして、まるでお姫様みたいだ。 

 

「じゃあ、買い物だけなら一緒に行こうか」 

「はい!!」 

 

 

デパートについた僕と三久ちゃん、 

歩いている間、ずっと僕の好みの食べ物について聞かれたが、 

特にこれといって嫌いなものも好きなものもない。 

それでもあえていうなら「バランスを考えた料理」を食べたいという程度である、 

三久ちゃんは結構頭を悩ませていたが、一生懸命作ってくれた料理に優るものはないだろう。

 

「おにいさまぁ、ちょっと先にこっち」 

 

食料品売り場とは見当違いの方向へ足を進める三久ちゃん。 

ここは・・・文房具売場だ、結構いろんな物が揃っている。 

 

「三久ちゃん、何を買うの?」 

「ふふ・・・これですぅ」 

 

その手には、何本ものいろんな太さの筆が並べられていた。 

毛先が太いもの、細いもの、やわらかいもの、ハケみたいになっているもの・・・ 

 

「こんなに買うに?」 

「はい、絵を描くにはいろんなタイプの筆が必要ですからぁ・・・」 

 

そう言いながら毛先をなぞる三久ちゃん、 

少し妖しい表情だ・・・僕はどきっとしてしまった。 

あの表情・・・三久ちゃんに耳かきの後ろでくすぐり攻めをされた時を思い出す、

あれであれだけ壮絶なくすぐったさに襲われたのだから、 

もし三久ちゃんがこれを使って・・・・・ 

 

だ、駄目だ!すぐにこんな事を考えてしまう、 

また股間が熱くなってきた・・・こんな場所で・・・ 

これじゃあまるで動物だ・・・ 

 

「これとこれと・・・これとぉ・・・これ!」 

 

三久ちゃんは筆だけではなく普通に絵の具も選んでいる、 

僕は少し考えすぎていたようだ、 

何でもかんでもそういう風に考えるのはよそう・・・ 

 

「おにいさま、次は今晩の夕食と明日のお弁当を買いましょう」 

 

三久ちゃんは画材道具を買うと、 

何もなかったように食料品売り場へ向かう。 

こうして普通にしていると間違いなく、 

まだあどけない年相応の13歳の少女にしか見えない。 

他人から見れば、まだキスすらしてないと思うのはもちろん、 

Hなことなんてまだ全然知らない・・・と信じて疑わないだろう。 

少し駆け出す三久ちゃん、 

一つの束ねた自慢の長い髪がふわりと浮く。 

まるで妖精のように可憐でとびきり可愛い・・・ 

 

「おにいさま、はやくはやくー」 

 

こんな元気で汚れを知らないように見えるお姫様が、 

夜になるとあんなに変わるなんて・・・ 

いや、無邪気なまま、あんな事をするなんて・・・ 

 

 

 

「ただいまーーー!」 

「あらー、おかえりなさーい」 

 

買い物から帰り、 

屋敷中に響くような大きな声をあげる三久ちゃんに、 

奥から一美さんが言葉を返した。 

僕は山ほどの食材をかかえ、キッチンへ向う。 

 

「おにいさま、私、先に部屋へ帰って着替えてきます」 

「うん、じゃあ僕もこれを置いたらすぐ行くよ」

「いえ、三久、一美おねえちゃんの夕食のお手伝いしますから」 

「そうなんだ・・・」 

「だからおにいさまは、荷物を置いたら三久の部屋かリビングで待っててください!」 

「う、うん・・・・・」 

 

階段を駆け上がる三久ちゃん、 

後ろ姿をぼーっと見てしまう・・・ 

このまま、三久ちゃんのものになっちゃうのも、悪くないかも・・・ 

 

「もういいだろ?私、出て行くから!」 

「二恵!!」 

 

キッチンから何やら荒っぽい声が聞こえてきた、 

言い合ってるのはどうやら一美さんと二恵さんのようだ、 

僕は荷物を持ったままこっそりと2人を覗き込む。 

 

「有人さんとやらが私を選ばなかった以上、もうここに用はないよ」 

「なんてこと言うのよ二恵!用がないってどういうことなの?」 

「ここにいる必要がないってことさ、だからもう出て行くから」 

 

二恵さんがいらだつように一美さんに言葉を吐きつける、 

一美さんもそれに対抗するかのように言い返す。 

 

「今、一番大事な時じゃないの!みんなで力を合わせて・・・」 

「私がすることなんてもうないよ、有人さんとやらは今頃もう三久の虜だろうし、 

そうでなくても時間の問題だよ、それに万が一、三久が失敗してても、もう私には関係ないからね」

「関係ないって何いってるの!?」 

「出て行くには丁度良いタイミングだってことだよ、もう明日、出て行くから」 

「待ちなさい、二恵!」 

 

あ、2人がこっちへ来る・・・どうしよう・・・ 

 

「有人おにいさま、どうしたの?」 

「あっ、三久ちゃん!」 

 

いつのまにか僕の背後に三久ちゃんがいた、 

薄いピンクのTシャツに黄色い短パンという、 

可愛らしくてラフな格好だ。 

 

「もう決めたんだから・・・あ」 

「二恵、いいかげん・・・に・・・」 

 

少しもみ合いながら来た2人は、 

僕と三久ちゃんの目の前にやって来た、 

目が合って気まずそうな表情になる二恵さん、一美さん、そして僕。 

 

「お姉ちゃん、夕食の材料、買ってきたよー」 

「あ・・そ、そう・・・」 

「ま、まあ、三久、それと有人さま、ご苦労様」 

 

三久ちゃんの素直な言葉に、 

慌てながらも自然に答えようとする二恵さんと一美さん、 

そんな反応に構わず無邪気にキッチンへ走る三久ちゃん。 

 

「有人おにいさまー、はやくー、こっちこっちー」 

「う、うん、荷物、すぐに持ってくよ」 

「あ、私も手伝いますわ・・・二恵も、ほら!」 

「・・・・・今晩はいらない」 

「二恵!!」 

 

逃げるように去っていく二恵さん、 

それを戸惑いの表情でおろおろと見つめる一美さん、 

そんなこと気付かないかのように料理の仕度を始める三久ちゃん。 

 

僕は荷物を置いて、 

三久ちゃんの部屋でぼーっと考える。 

 

僕は・・・ここで何をしてるんだろう? 

三久ちゃんにくすぐりで犯されて・・・ 

まだ結ばれてはいないけど・・・いや、それが不幸中の幸いというか・・・ 

僕は三久ちゃんのことが・・・でも、三久ちゃんは・・・ 

さっき一美さんと言い合ってた二恵さんの言葉も気になる・・・ 

結局、僕は・・・単なる道具なのだろうか・・・じいちゃんの・・・ 

そして、この家の・・・・・!?

 

「おにいさまぁー、お夕食、できましたよー」 

「あ・・・今、行くよ」 

 

僕は三久ちゃんにまたくすぐられないうちに、 

とキッチンへ慌てて急いだ、 

そこには一美さんが1人で座っている。 

 

「あれ?三久ちゃんは・・・?」 

「三久なら二恵を呼びに行きましたわ」 

 

言ってるそばから三久ちゃんが二恵さんを連れてきた。 

 

「あの・・・二恵さん・・・」 

 

僕の話し掛けにも答えず、 

席について無言で食事を始めた。 

 

「いただきまあーーーす」 

「いただきます」 

「い・・・いただき・・・ます」 

 

食事が始まると、 

またいつものように一美さんと三久ちゃんの会話が流れる、 

今日はデパートで僕と買い物をした話がメインだが、 

そんな話など聞こえないかのように一人もくもくと食べる二恵さん、 

この家を出て行く・・・つもりらしいが・・・ 

それにしても三久ちゃんはよく夕食に二恵さんを連れてこれたものだ、 

さっき帰ってきたときといい、初日・最初の食事といい・・・ 

ひょっとしたら、この家を取り仕切っているのは、三久ちゃんなのではないかと思う、 

いや、実際そうなのだろう、年齢相応の無邪気さを利用して、 

2人の姉をうまく操っている・・・・・ 

 

待てよ、ということは、 

この3姉妹の中で、一番気をつけなければならなかったのが、 

三久ちゃんだったという事になる・・・ 

しまった、見抜けたはずなのに・・・もう、遅いか・・・ 

僕のからだはもう三久ちゃんのくすぐりに、むしばまれてきている・・・ 

僕の心も三久ちゃんに奪われはじめている・・・ 

僕は三久ちゃんのことが・・・・・ひょっとしたら、もう・・・・・ 

 

「ごちそうさまぁー」 

「ごちそうさま」 

「ご、ごちそうさま・・・でした・・・」 

「・・・・・・・・」 

 

食事を終えると二恵さんは何も言わずキッチンを出ていった。 

 

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