第4話・らぶらぶ♪ルリーちゃん☆

 

「ご主人様、あっさでっすよーーー♪」 

 

今日もルリーの元気な声で目が覚める、 

ルリーが来て3週間、4月ももう終わりに差し掛かり、 

すっかりこの朝が日常になった。 

 

「さあご主人様、 

お目覚めのKISS☆と時空の狭間に飛ばされるのと、 

どっちがいいですかぁー?」 

 

僕はあわてて跳び起きる、 

先週起きなかったときはとんでもない目にあったからだ・・・ 

あのとき地球外生命にやられた背中の傷がまだ痛む。 

 

「おはよう、ご主人さっま♪ちゅっ☆」 

 

いつものキス、 

この魔法で僕はばっちり目が覚める。 

ルリーがいることがすっかり普通になり、 

ルリーが僕の側にいてくれることが必然となっている。 

 

「さ、今朝は和食なのです☆」 

 

いつも通りルリーに連れられキッチンへ、

ルリーがつくってくれた朝食を食べ、 

ルリーが綺麗に洗濯してくれた学生服に着替え、 

ルリーが持ってきてくれたカバンを手にして学校へ行く。 

僕にとってルリーは絶対に必要な存在になりつつある。 

 

「ルリー、忘れ物はない?」 

「はい、ご主人様も大丈夫なはずですぅ」 

「じゃあ行こう」 

 

家の中では僕はルリーのご主人様なのだが、 

家を出たとたん、ルリーの設定した兄と妹の関係になる。 

 

「瑠璃、時間は?」 

「んっと・・・7時36分、お兄ちゃん、全然間に合うのです」 

「じゃあ、今日はのんびり行けるね、瑠璃のおかげだよ」 

「お兄ちゃんだって今日みたいに素直に起きてくれたらね♪」 

 

仲良く並んで学校へ歩く。 

ふと、となりの家からも女の子が登校するために、 

玄関を出た。 

 

「・・・・・いってきまーす・・・」 

 

力無い声、 

さえない表情、 

三つ編みのおさげにメガネをかけた地味な少女、 

幼なじみの真雪だ。 

 

「・・・あ、ねこちゃ・・・ん・・・」 

 

とまどいながらも僕のあだ名を呼んだ真雪に、 

ルリーが元気いっぱいであいさつする。 

 

「真雪せんぱーい、おっはよーございまーーーっす♪」 

 

声を上げながら僕の腕に腕を絡ませるルリー、 

真雪の表情がいっそうに暗くなる。 

 

「ま、真雪・・・お、おはよう・・・」 

 

ぼくは真雪にあいさつをしたが、 

声がしどろもどろになってしまった。 

 

「・・・おはよう・・・仲、いいわね・・・」 

 

そうとだけ言い残し、 

真雪は走って行ってしまった。 

 

「もう、真雪先輩ったら、一緒に学校行こうって言おうと思ってたのに・・・」 

 

あれから真雪は僕に近づこうとはしているようなのだが、

事あるごとに僕にぴったりくっついてるルリーから逃げていく。 

僕は少々複雑な気持ちでそれを見ている。 

 

真雪と疎遠になってしまったのは、 

中学1年のとき、絶対に人前では言ってはいけないと約束した 

「猫ちゃん」という僕のあだ名を言われ、 

学校中のみんなに冷やかされて真雪に対して絶交してからである。 

まあ、今となっては大人気ない子供の喧嘩だったのだが、 

その事件がずるずる引きづり続けて最近、 

ようやく真雪をちゃんと許してあげようと思ったのは、 

ルリーが来てからのことである。 

 

しかし、真雪としっかり話をしようと思っても、 

ほとんど毎日僕にべったりルリーがくっついているこの状態では、 

僕も真雪も性格上、近づくことはままならないようである。 

 

「お兄ちゃん、考え事?」 

 

ルリーが僕の顔を覗き込んだ。 

 

「ああ・・・真雪のことを、ね」 

「真雪先輩、瑠璃のこと避けてるみたい・・・仲良くしたいのにぃ」 

 

ルリーは一体何を考え、どこまで計算しているのかわからない。 

しかし、ルリーが来る前、いや、あの事件の前までは、 

おそらく僕は真雪が好きで、真雪も僕が好きだったと思う。 

それをルリーは判ってるのか・・・判っていないのか・・・ 

そもそも、今の真雪の気持ちは・・・!? 

 

「真雪先輩、瑠璃が話し掛けてもすぐ逃げちゃう・・・ 

ねえお兄ちゃん、どうしたら仲良くできるかなぁ」 

「うーん、どうだろうね・・・」 

 

その前に僕が真雪と仲直りしなくてはならない、 

まだ絶交しているままの状態といっていいのだから。 

 

学校の校門まで行くと、 

真雪が壁を背にして立っている、 

誰かを待っている様子だ。 

ひょっとして僕を・・・!? 

 

「お兄ちゃん、ま・・・」 

 

僕はルリーの口をさえぎり、 

真雪に近づいた。 

 

「真雪、どうしたんだい?」 

 

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