ふとシャクナさんが俺の兜の中へ小声で話す。 「あのおふたり・・・王室の・・・こんなに近くでお顔を拝見するの初めてですわ」 「・・・シャクナさんはお城に何度か入ってるんですから面識はないんですか?」 「とんでもない!あのようなご立派すぎる地位の・・・大戦のスーパースターじゃありませんか」 「それじゃあ話したことも?」 「そんな、恐れ多い・・・近寄れません、あなただってそうでしょう?だから避けてこの席へ・・・」 なるほど、そうとってくれたのか。 ・・・大戦のスーパースター、か、 じゃあ俺の正体を知ったらシャクナさんは・・・ 「はーいお食事でーす、おまちどうさまー」 御馳走が俺とシャクナの前に並べられる、 すごい・・・よ、よだれが・・・うまそうだ・・・ フォークを握ると顔を覆う兜の隙間に食事をさし込んで食べる、 うう、兜を脱ぎ捨ててパクつきたいが・・・正体をばらす訳には・・・ むぐ・・・むぐむぐ・・・もぐもぐもぐ・・・ごくごくごく・・・もぐもぐもぐもぐもぐ・・・ 「あー!レンちゃん見て見てー!あの人、おもしろーい!」 「ほんとだぁー!器用に食べてるぅ!兜の隙間にぃ!きゃはははは!」 う・・・ミルちゃんとレンちゃんに笑われてしまった・・・ しかし今はとにかく食事で体力を回復するしかない! 俺は側目もふらず一心不乱に食べ続けた。 「ふう!ごちそうさま」 「すごい・・・そんなにおなかすいてたんですね」 「これでも食べにくかったのと闘いの前だから腹八分目にしといたんだけど・・・シャクナさんは?」 「私も結構いただきました、ごちそうさまでした」 「さて・・・少し休んだらまたすぐ闘いだ」

俺は横になって出番を待つ、 その間、シャクナさんが魔法で傷を治癒してくれる、 遠くでレンちゃんはミルちゃんとはしゃいでたわむれている・・・ 「そろそろお時間です!」 呼び出しがかかり、 俺は気合いを入れて起き上がる! 「イテテテテテテ・・・」 「トレオさん、あの・・・」 シャクナさんは真剣な表情で言う。 「・・・5分以内で勝ってください、でないと体が」 「・・・・・ありがとう、大丈夫だ」 ゆっくりステージへ向かう。 後ろからキャッキャと騒ぎながらレンちゃんとミルちゃんが通り過ぎる そうか、ミルちゃんはレンちゃんの専属僧侶か・・・これは手強すぎる。

「両者、上がって!」 女審判の声がかかる。 南闘技場第1ステージ、 対戦相手は3回戦シードのヴェルヴィ・・・ あのヴェルヴィか、もう50代目前だが彼もかつての英雄だ、 昔・・・大戦のずっと前、この国の衛兵で最も強かった別名「暁の戦士」 さすがに今や衰えこの間の大戦もずっとお城の中にいた、 初めは王の参謀として、ハプニカ様が王を、いや父を倒してからは、 敵だった残りの兵士をこちら側へとりまとめる役をかってでてくれた、 未だカリスマを残す衛兵・・・大戦が終わって引退したと聞いていたが、 ここにきて初めて剣を交える事になろうとは・・・正直、その実力は!? こちらは連戦でかなり体調がヤバイ、動きも鎧の重さでのろい。 ヴェルヴィはシードで今回が初戦だ、体力はじゅうぶん。 ・・・・・互角か?互角だといいなあ・・・でも経験では向こうが断突か? などと考えていると視界にレンちゃんが入る、 となりの・・・第3ステージだ、久々にレンちゃんの戦闘装備を見た、 あいかわらず可愛いなあ、あの赤い服に銀色の装備・・・何を着ても可愛く似合っている。

「第3回戦、ヴェルヴィ対トレオ、はじめ!!」 ゴーーーン!! 銅鑼が鳴り響いた! 一瞬にしてヴェルヴィが飛び掛かってくる! しまった!ぼーっとして油断してしまっていたー!! ガキィーン!! ヴェルヴィの剣が俺の兜の数ミリ手前で止まる! 俺は何とか剣で食い止めたが・・・ぐぐぐ、押されている・・・ ヴェルヴィは不敵な笑みを浮かべた。 「小僧・・・闘いは先手必勝!おぬしの負けだ!」 ガキィ! キィン!! ガシャーン! ガキィーーン! ギャイーーーーン!! うう・・・ステージの角に追いやられる・・・ 強い!とても衰えて引退したとは思えない! 何より的確に急所を狙ってくるその熟練技がすごい!ぐぐぐ・・・ はっ!真後ろが騒々しいぞ!? 「そこまで!勝者レン!!」 も、もう!? やっぱり強いなあ、レンちゃんは・・・ などと感心している場合ではない!何とかしないと・・・ぬうう・・・ 「ふっ・・・レンか、こざかしいガキめ」 「な、なんだと!?」 ヴェルヴィの目が鋭くなった。

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