もぐもぐ・・・おいしい・・・
よく考えたらスバランの木の上では魚肉以外の肉って食べなかったよな、
白竜の卵は別にして・・そう考えるとここにハプニカ様たちも招待したいなあ。
「おいしいおいしい!これならすぐに食べ終わっちゃうよ」
「あまり急いで食べると体に悪いですよ」
「平気平気・・シャクナさんはゆっくり食べてていいからね」
そうしているうちに第4幕がはじまった、
ここは休憩明けの喜劇みたいだ、かなり愉快。
「ぶわっは!あはははは・・・は・・あ、食べ物とばしちゃった・・・
ご、ごめん、こんな高級な席で・・マナーも何もなくって・・・あきれちゃった?」
「わ、私も教会の出といってもそんなに大きくありませんでしたから、いまだにマナーは・・」
メイド長・ペネルクが俺の口をナフキンでふいてくれる。
「細かい事はお気になさらなくても結構でございますわよ、おほほほほほ・・・」
さすがにちょっと顔をひきつらせてる・・・
家じゃないんだ、もうちょっと落ち着こう。
「ふう、ごちそうさま・・デザートも全部食べちゃった」
「私も・・劇も第4幕が終わって丁度、最終幕のようです」
「本当?じゃあゴンドラに出て見よう!」
外へ出る・・・
上から見るとたいまつの灯かりが劇場全体を包んで綺麗だ、
前の方の席へ・・あ、これは玉座?そうだ、懐かしい、これって確か、
闘技トーナメントの時にハプニカ様が座っていた場所だ、
ここから俺とレンちゃんの闘いを見てたんだっけ・・・ちょっと涙が・・
「トレオ様、こちらへどうぞ」
「ありがとうシャクナさん、さすがに玉座は座れないから隣のこのへんが丁度いいよ」
「・・・トレオ様、シャクナ様、パンフレットでございます」
ペネルクさんから渡してもらう・・
次の第5幕がすなわち最終幕、タイトルは・・・
『トレオとハプニカの物語』え、ええーーーっ!?
「シャクナさん、これって・・」
「たまたまです、本日の劇は恋愛がテーマですので、最後は国民全員が知っている、
あの絶対忘れてはならない悲劇の恋の物語を劇にしているんです」
そうなんだ、知らない間に・・・
会場を見渡す、あそこは確か俺が座ってたあたり・・
いたいたメイドさんだ、メイド服でお茶かなんか飲みながら・・ちょっと浮いてる。
「さあ、はじまります・・・」
ぎゅっ、と俺の手を握るシャクナさん、
顔を見ると赤らめて視線をステージへと逃がした、
俺も劇を見なきゃ・・でも、手はぎゅーっと握られたまま・・恥ずかしい。
灯かりが増えステージが明るくなる、
出てきた1人の男、司会者のあのおじさんだ。
「それでは只今より最終幕・トレオとハプニカの恋、
この劇を遠く旅出たれてしまわれたトレオ様とハプニカ様に捧げます、
切なく悲しいあの悲劇、繰り返さないためにもこの劇をしっかりと目に焼き付けましょう!ドーゾ!」
司会が引っ込んで・・・
大きな甲冑に身を包んだ人が出てきた、
剣を持って・・あれはまさしく、あの時の、俺だ!
その反対側、高い高い櫓に灯かりがともる、そこにいるのは長髪の女性・・
ハプニカ様の役だろう、長身な所とか豪華な服装とかもそっくりそのままだ。
緊迫に満ちた笛の音が鳴り響く、
やがて音が小さくなって・・・観客も本当に静かだ。
と、甲冑の男が大きな剣を突き上げて大声を張り上げた。
「俺は戦う!!
愛する女王のために!
そして、世界の平和のために!!!」
ワーワーワーーー!!
なんだなんだ!?
一斉に四方八方から兵隊がやってきた!
そしてステージへ上がる・・・すごい数だ、何百人もいるぞ。
「シャクナさん!何がはじまるの?」
「伝説の999人斬りですわ、ご覧ください」
「ええ?じゃあ、あれ全部1人で相手を・・・!?」
主役の男が構える、
999人の兵隊も静かに構える!
静寂が会場を包み、そして・・・・・!!
ゴーーーーーン!!!
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めくる |