見つめられる・・・ 綺麗でまっすぐな目・・・ 瞳の中へ吸い込まれそう、クラッとくる・・ まるで魅了(チャーム)の魔法にかけられたみたいだ、 胸にドキッと刺激がはしる、さ、逆らえない・・でも、でも・・・ 「でも、俺、せっかくもらったチケットを無駄にする訳には・・」 「そうですか・・では、こうしましょう!」 チケットをひょいっ、と取り上げ近くのメイドを呼ぶ。 「あなた、名前は?」 「は、はいっ、キャルと申します!」 「キャルさんに1つ指令を与えます、このチケットで客席へ行ってショーを楽しんできてください」 「はいっ?わ、私めがでございますか?」 「そうです、いつも大変でしょうから今日は特別に、最後まで楽しんできてください」 「でも、仕事が・・」 「今日は平日で来賓の数に比べてあきらかにメイドが余っています、それにこれは命令です」 「・・・シャクナ様がそうおっしゃられるなら・・」 「キャルさんですね、後でメイド長やバニー大臣には心配無く伝えておきますから」 「あ、ありがとうございます・・」   俺のチケット、近くのメイドさんにあげちゃったよ・・   「さ、トレオ様、これでチケットは無駄にはなりませんでした」 「う、うん、じゃ、じゃあ、お言葉に、甘えるよ・・ありがとう・・・」   ぎゅっ、と腕を組まれ立たされる、 貴賓観客席の方へぐいぐいとまたもや強引に・・ そうそう、シャクナさんって結構強引というか真は強い女性だったっけ。   「こちらにいたしましょう」   広い広いガラス貼りの観覧席、ちゃんとその外にはゴンドラ席がある、 寒かったり暑かったりすればガラスの内側でテーブルに座って食事しながらでも観れるし、 外へ出てより近くで観たければゴンドラへ・・どっちにしてもステージを見下ろす絶景席だ。   「そろそろ食事が来るはずです、座って待ちましょう」   真ん中の一際大きいテーブルに座る、 ちょっと離れた席では他の来賓家族2組が、 すでにおいしそうな鶏肉を頬張っている・・いいなぁ   「ようこそいらっしゃいました」   その声に顔を向ける、 綺麗で上品なメイド熟女が深々と頭を下げている・・・   「わたくし、当中央演劇場メイド総長のペネルクと申します」 「あ、はい、すいません、俺、いや、私、その、急に、来てしまって・・」 「わたくしどもは急なお客様に備えてすぐに食事や接待の準備が出来るようしておりますので、 何もご心配やお心を痛めるような事はありません、どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」 「ありがとう・・でも休憩時間に来ちゃって迷惑かなって思っちゃって・・」 「シグリーヌ様や大臣の皆様等が仕事を切り上げていらっしゃる事もありますので、 急なお客様は珍しい事ではございません、例え最後の1秒でもご覧にいらしていただければ、 その1秒のために最高のおもてなしをさせていただくのがわたくしどもの仕事でございます」   すごいなあ・・・ あ、ワインが来た、 まず俺に注がれる・・シャクナさんがメイド長に話し掛ける。   「ペネルクさん、メイドのキャルさんに、トレオ様の一般席チケットをお渡しして 観戦するよう命じました、トレオ様がチケットがもったいないとおっしゃるので」 「それはそれは・・トレオ様ありがとうございます、キャルには最後まで観戦したら、 御褒美をあげる事にしましょう、トレオ様とシャクナ様のお心づかい、感謝させていただきます」 「そんな、大袈裟だなぁ・・」 「とんでもない!トレオ様のためにキャルが指令を実行していますもの、 明日にでも昇進と臨時ボーナスとバカンス休暇を与える事にいたしますわ」   何もそこまで・・・わ、ワイン飲もう・・・ 1口飲んだ所でやっと食事が来た、かなり豪勢だ!   「あ、もうあと10分しかないや、急いで食べなきゃ!シャクナさんも早く!」 「そんなに急がなくても・・食事しながらでも観れますから・・・ねえ、べネルクさん」 「はい、ずっと中でお酒をたしなみながら観戦なさるお方もいらっしゃいますわ」  

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