トントントン
「はい、どなた〜?」
「すいません、昨日、服を借りた者ですが・・」
ガチャ
「まあ、あなたね、いらっしゃい、昨日はお弁当届けてくれてありがとう!」
「いえ、こちらこそ・・お返しに参りました」
「寒いでしょ?入って入って!」
俺は昨日、上着を借りたおばさ・・お姉さんの家へ返しにきた。
「これ、お借りした服です、助かりました・・後、つまらない物ですが・・」
「まあ、何かしら?大きいわね・・遠慮無くいただくわ、ありがとう」
「こちらこそ、お風呂まで貸していただいて・・」
「君、綺麗な服を買ったのね、泥棒は捕まった?」
「え?・・・あ、はい・・何とか助けていただきました・・・」
「そう、良かった・・紅茶入れるわね」
奥で赤ちゃんが眠ってる・・・
赤ちゃん、か・・そういえばシャクナさんにあんなに出しちゃったけど、
妊娠しちゃうのかな・・スバランの木では避妊の実とかいうの使ってたけど・・・
「ねえ、ガルデスはどーう?」
「え?ここですか?えっと・・・楽しい街ですね」
「そう・・良かった、嫌いになってないみたいで」
「とんでもない!あ、紅茶いただきます・・・おいしい・・・」
「聞いてなかったけど、どこの国から来たの?ダルトギアじゃないんでしょ?」
「はい、モ・・ものすごく遠い島から来ました」
「海の方から?それは大変ね・・・海って綺麗よね、遠いけど」
「・・でも山も綺麗です、本当、来て良かった・・・」
俺の言葉に嬉しそうな笑みを浮かべるお姉さん。
「ね、悪い人もまだいるけど、ほとんどみんないい人だから」
「はい、お姉さんを見ればわかります」
「本当、嫌いにならないでね、この国を・・それでここへはいつまで?」
「そうですね・・もう国に帰るつもりはないから、この国へ住もうと思ってます」
「まあ!ガルデスに住むの?」
「えっと・・・ダルトギアですけど、もっと遠い所です」
「もう場所は決めてあるのね・・・じゃあ、いいものあげる、お礼返しじゃないけど・・・」
奥から何かゴソゴソ出してきた。
「はい、これ、ショーの招待券、一番人気の夜の部、今夜のよ」
「いいんですか?これって高いんじゃあ」
「いいのいいの、余ったチケットだし、どっちみち使わない予定だったから」
「ありがとうございます、昨日は少ししか見れなかったから・・ゆっくり見ます」
「亭主のマイクもじっくり聞いてね・・取るのにチケット困ったら少しなら助けてあげる」
いい人だなあ・・
正体隠してるのが忍びないや。
「君、誰かに似てると思ってたけど・・英雄の像に似てるのね」
ぎくり!!
「俺、そろそろ行きます!」
「そう?あ、そうね、長く引き止めても悪いものね」
「どうも本当に、ありがとうございました!」
大きくおじぎをしてチケットを大切にしまいながら席を立つ・・
やっぱり正体がばれたら大騒ぎになってしまいかもしれない。
「じゃあ、またね」
「はい、また・・」
お姉さんの見送りもそこそこに家を出た・・・
今夜はショーをじっくり見よう、そしてそれから・・・
「ちょ、ちょっとーーーーー!!」
お姉さんが家を飛び出してきた!?
「これ、これ!!」
手には俺がプレゼントしたコートを持っている。
「こんな高価な物、貰えないわよー!」
「いいんですー、気持ちですからー!」
「気持ちって、これゴールデンペガサスの毛のコートじゃないのー!」
そう言われてもシグリーヌ国王が持ってってって・・・
「本当に貰ってくださーい!じゃーーー」
「・・・こ、これ、国王のマークじゃないの!?」
やばい、逃げよう!!
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めくる |