どこかでって、このお姉さんと会ったの、多分はじめて・・・ って、俺の顔は町中にあるじゃないか、英雄の像として・・やばい!   「あの、その、羽織る物を・・できればフード付きのとか・・」 「そう?ちょっと待ってね・・・お風呂も沸かすから」 「いえ、そこまで気を・・ごほごほごほ」 「風邪かしら?じゃあお風呂はやめておいた方がいいわね」 「いえ、風邪ではないです、どちらかというとお風呂、入りたいかも・・・」   お姉さんはホットココアを出してくれて、 飲み終えるとお風呂が沸いていた、お言葉に甘えて早速入る、 気持ちいい・・せまいけど・・って、お城やあの別荘のお風呂と比べちゃ悪いか。   「ごほごほごほ・・・」   それにしても地上って空気が悪い、 でも、それと同時になんだか、なんというか、 意識がはっきりする、いかにあのスバランの木の上の空気が特殊だったかよくわかる。 ハプニカ様・・今頃、俺がいなくなった事に気づいて慌ててるのかな・・・? 俺を癒してくれた・・一生懸命に・・3ヶ月も・・・3ヶ月・・ん?待てよ? 元は1週間で逃がしてくれるはずだったんじゃあ・・でも、延び延びになってしまった、 そしてこうして俺は自力で降りてきた・・白竜が来てくれなかったら、あそこにずっと囚われていたかもしれない。   そうだ!俺は囚われていたんだ!! そもそもハプニカ様は俺をこの地上から連れ去って、拉致したんだ! しかも普通じゃ絶対に逃げられない天然の城壁、いや、天然の牢獄へと・・・ よくよく考えてみると、あの木から飛び降りようとしても白竜が助けてくれる、 って白竜たちが逃げないように監視してるって事じゃないか!?俺、騙されていた!?   よーく考えたらわかる事じゃないか・・でも、考えられなかった・・・ うまく言いくるめられて肉体に溺れさせられ拉致されていた事を、気づかなかった・・・ そこまで頭が回らなかったのも、あのおかしな空気のせいだ、スバランの木が出す、あの・・・ そうか、深く考えようとしても考えられなかった、疑う事ができなかったのは、あの木のせいだ! どうりで俺の中で危険信号が鳴り響いていたはずだ・・それは最後に残った本心みたいなものだったのだろう。   ようやく俺本来の意志を取り戻してきたぞ、 きっとハプニカ様は俺を完全に手なづけた所で、 お城に戻って俺を国王にしたに違いない!!あぶないあぶない・・ 4姉妹だってきっと・・そう考えるとハプニカ様、白竜の調教というか操作に最後で失敗したな? 俺を白竜が自分の意志で逃がしてくれたんだから・・白竜に感謝しなくちゃ、それに都合が良い、 ハプニカ様は今、スバランの木の上・・・ここへ追いかけてくるには時間がかかるだろう、 白竜もまだこっちにいるかもしれない、ならなおさら・・・とにかく早く逃げた方がいいかも?     「はい、この上着でいいかしら?」 「すみません、必ずお返ししますから・・」 「いいのよ、古着だから・・それで1つお願いがあるの」 「はい、何ですか?」 「うちの亭主にお弁当を持っていってほしいの、東3ステージまで。お願いできるかしら?」 「お安い御用です、任せてください!」 「・・まあ、君に何があったか深くは聞かないけど、最近増えた観光客でたちの悪いのいたらすぐに通報するのよ」 「ごめんなさい、心配をおかけして・・」 「ううん、いいの、ただ治安はものすごくよくなったはずなのにこんな事があって、私も心配で・・」 「そうですか、治安は良くなったんですか」 「ええ、新しい国王様のおかげで・・そういえば君・・・」 「じゃ、じゃあお弁当持っていきますね!東闘技場の第3ステージかあ!よおし!色々ありがとうございました!」 「と、闘技場って、いつの話・・あ、行っちゃったわ・・・うーん、誰かに似てるのよねえ、誰かに・・・」   俺は逃げるように出た、フードもかぶって、と・・・ 街の中をどんどん行く・・うーん、華やかになってきた、 こんなに華やかだったっけ?華やかすぎるくらいだ・・えっと東闘技場は確か・・ ん?この道、昔通った覚えがあるぞ?そうだ、この先には確か・・あった、道具屋街だ、 体力や魔力の回復アイテムが並んでる・・やたら繁盛してる店があるぞ?あそこは確か・・え、ええ?

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