王様はびっくりして僕を呼び付けた、 やりすぎちゃったから怒られるのかな?と思ったら、 莫大な賞金や武器・防具とともにキングナイトだのサー・プラチナなんとかだの、 いろんな名誉ある(らしい)称号をくれた、もらえるものはもらっておこう・・・ と思ったが、やはりそれだけでは事は済まなかった。

そもそも今回の闘技場で行われたトーナメントは、 王様が呼びつけた伝説の勇者の肩ならしのためだったらしい、 それほどまでに王様が呼んだ2人は強かった・・・はずだった、 しかし今、2人とも病院のベッドの上で身動きが取れない、 僕が7秒でやっつけた結果だ。

ではなぜ王様が伝説の勇者を呼びつけたかというと、 僕が入ったあのダンジョンは底無しのダンジョンらしく、 誰一人として最下層まで行った者はいない、 この国で一番強い勇者で1度地下120階まで行ったことがあるらしいが、 再びダンジョンに入っていってから、2度と戻らなかった。

で、そのダンジョンの奥から出てくる魔物の元凶を退治するために、 大金をはたいて崇高有名な伝説の勇者を2人も呼んだのだった、 それがこんな形で倒せれるとは夢にも思わなかっただろう、 もっと早くこんな無敵の勇者が来てくれれば・・・と王様はつぶやいた、 僕だってこんなことになるとは・・・確かにまったくの無傷だが。

ということはどういうことになるか、 僕はすぐに予想がついた、王様ももちろんそのつもりだ、 あの2人の伝説の勇者に代わって僕がダンジョンの最下層まで行く・・・ 王様は僕が300階まで行った事もなぜか知っていた、 さすが情報の収集が早い・・・といいたいが肝心な部分が抜けている。 しかし今の僕は何にしろ無敵なことに変わりはない、 王様が呼んだ勇者を倒してしまった手前、僕は断れなかった。

王様が述べ連ねる魔物を退治できたときの褒美も、 僕の耳にはまともに入らなかった、地位や名誉や国土や金品や、 お姫様をくれると言われても、それより僕はさっさとこの国を去りたかった、 僕自身、この無敵の力に戸惑っているのと、 正直言ってめんどくさいし、僕にこれほどの大役のプレッシャーは耐え難い。

結局僕はダンジョンの奥深くへ入ることとなった、 いくら無敵でも恐怖感は拭い切れない・・・ 入口で立ち止まる、ぽっかり大きく開いた地下への穴。 ・・・このまま逃げてしまおうか、とも思ったが、 無敵なんだから絶対大丈夫、と自分に言いきかせて重い足を進めた。

慣れた地下1階。 ちっちゃいスライムがのぺのぺと這っている、 気にせずそのまま地下へ。

慣れた地下2階。 大きなネズミが襲ってきた、 このへんは普段でも余裕で倒せる。

・・・いつもの地下5階。 吸血コウモリが集団でやってきた、 いつもは必死で戦うが今の僕なら剣を一振りだ。

・・・初めて踏み入れる地下10階。 ここまで来ると他の勇者も神経をとがらせている、 しかし僕は怪物をまるですれ違うように倒して進む。

・・・・・屍が転がる地下30階。 ここへ来るとモンスターも迫力が出てくるなあ、 と思いつつ1蹴りで吹き飛ばして奥へ。

・・・・・猛者が集う地下50階。 ここへ来るのはまさに一流と呼ばれる勇者たちだ、 あちこちで激しい剣の音や魔法の光が飛び交う・・・うるさいなぁ。

・・・・・・・・いつのまにか地下100階。 さすがにめったに人間に会わなくなった、 内部を灯すたいまつの本数・間隔もぐんと少なくなる。 って、このたいまつは一体誰がつけているんだろうか?

・・・・・・・・そうこうしてるうちに地下200階。 ここにはさすがにたいまつもなく、 代わりに深いダンジョン独特の「ヒカリゴケ」がびっちり覆い、 ポワッとやさしい光で内部を照らしている。 僕はひたすら地下へ地下へともぐり続ける・・・

・・・・・・・・・・地下300階をちょっと過ぎたあたり、 僕は見覚えのある場所についた、あの時、トラップで落ちたあの場所だ。

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