深夜の電話
井上徳造(アイコム会長)
日本経済新聞 2007.1.19 朝刊 交遊抄より
 五十年前、 二十代の私が 無線機メーカーを立ち上げた時から「アマチュア無線界を背負うのは原昌三さんだ」と聞かされ、それ以来指導を受けている。原さんは約三十年間に渡り日本アマチュア無線連盟(JARL)の会長を務め、免許が必要なアマチュア無線の普及や行政との折衝で辣腕を振るわれた。

 教えを受けるのは無線だけではない。原さんは三菱重工業で造船の仕事もされていた。私の趣味は船の操縦で、船の構造など専門的なことを教えていただいた。

 夜にめっぽう強いのも原さん流。JARLの会合などで年二十回は顔を合わせるが、必ず二次会になる。無線の技術論や将来像など未明まで話に花が咲く。アマチュア無線とJARLの行く末を案じる余り、深夜二時過ぎでむ親しい関係者に電話してしまうという。

 一体いつ寝ているのだろうと、衰えないバイタリティーには頭が下がりっぱなしだが、アマチュア無線家にとって大事な人物。つい健康が心配になってしまう。

 業界の大先輩であり、非常に恐れ多い思いで接している。ただ「ハム」の世界は一度交信すると十年の知己になるといわれる。私も深夜に相談の電話をするなど甘えさせてもらっている。
感想)
30数年前、2mのリグが故障して八尾市の井上電気(現アイコム)に修理に持って行ったことを思い出した。井上電気のリグには随分お世話になった。しかし、現在のリグは高機能化して値段が高くなりすぎた。これもハム人口の減少に関係しているのではないだろうか。