2002年ホノルルマラソン  マラソン当日 −前編−

ホノルルマラソン当日の朝は、午前2時にモーニングコールが掛かることになっていた。
この日のスケジュールは、午前3時10分にツアーバスが迎えにきてくれて、スタート地点のアラモアナ公園
に移動。公園では、間寛平リーダーの到着を待ち、エイエイオーイベント(みんな揃ってストレッチを行い、
エイエイオーの掛け声をあげて気合を入れる。)を行って解散。ゴールしたらチームぴあ専用テントで
くつろぎ、午後7時から完走パーティーという予定。

しかしながら目がさめたのは、午前0:30。目がバチッと覚めてしまい、これ以上は眠れないと判断したの
でベッドの上でK枝を起さないよう注意しながら、ストレッチを行った。30分ほど静かに身体を動かし、午前
1時になったので、朝食(戦闘)開始。先ずはおにぎりから。前日に買っておいた鮭とおかかのおにぎりを
良く噛んで食べる。その次に甘味系のパン。これも平らげ、オレンジジュースを飲む。とりあえずこれで一息。
消化を待つために、ベッドに身体を横たえて、しばし休憩。お腹がこなれてきたところで起きあがり、
乳擦れ防止用のテープを貼り、太股内側には股ズレ防止のワセリンを入念に塗る。さらに足の親指付け根
部分の良くマメができるところにテープを貼り、かかとなどにワセリンを塗りこむ。5本指ソックスを履いて、
足の準備はこれにて完了。続いて、太股、ふくらはぎなど足の筋肉にチタンローションを塗りこむ。
飛行機による長旅の影響か少し足がむくんでいる感じがしたが、チタンローションを塗ったらスっキリした。
続いて腰、背中にもチタンローションを塗りこみ、さらにチタンローションが乾いたところで、今度は気になる
ツボ?にチタンテープを貼った。あとはチームぴあのランシャツを着て、チタンソフトスパッツを履けば準備
完了というところまで進んだ。この時点で午前2時を少し過ぎたところ。

午前2時30分になるのを待って、ヴァームとビタミンCを飲んだ。通常はレース1時間前に行うのだが、
ホノルルマラソンの場合、アラモアナ公園に移動してしまうとバタバタしてやりたいことが出来なくなって
しまいがちなので、飲み忘れるよりは早くても飲んどいたほうがいいだろうと思い、早めに飲んじゃった。
『スタート直前は、アミノプロで補えばいいか』と自分を納得させる。持ち物は、レース中の摂取用に塩(小袋)
、アミノプロ3袋をポケットに入れ、水とバナナをビニール袋に入れた。これは飲み(食べ)終わったら、
捨ててしまう。その他にゴール後のテントへ運んでもらうビニールパックを持っていく。身につけたものは、
ぴあのランシャツ、チタンソフトスパッツ、チームぴあの帽子(速乾性で無かったのでちょっと暑かった)、
寒さ対策でいらないTシャツ1枚を上から着込み(スタート前に処分)、ゴミ袋製レインコートを被った。
左腕には腕時計。右腕にはマイル単位,10km毎のペースチェック表(自作)を巻いた。

午前3時、準備が全て整ったので、ロビーへ降りて行くことにした。ロビーには既にマラソン参加者らしき
人が沢山いたが、ぴあの帽子を被った人はまだいなかった。外へ出て天候をチェック。星が見えていたので
天気は良さそう。でも昨日に引続き風が強い。この風向きだとハイウェイの往路が向かい風となる。
昨年の嫌なことを思い出した。ロビーにあったクリスマスツリーの前で写真を撮ったりしていたら、キャップ
とA子さん登場。しばらくするとツアー会社の邨田さんが現れた。迎えのバスが予定より少し早く到着した
のだ。この時点でぴあの参加者は殆ど揃っていたのだが、母と叔母は現れず。ちょっと心配になったが、
数分後、バタバタと登場。ほっと一息。

今回のホノルルマラソンは自分の記録更新や順位も大事だが、さらに母、叔母を完走(完歩)させてあげ
たいという気持ちも強かった。その為に自分のレース終了後は、携帯電話でコース上にいる母と連絡を
取り合い、残り10kmを切ったら、コースを逆走してサポートを行おうと考えていた。そんなこともあって、
朝からヒヤヒヤさせられたが、とりあえずゼッケンも付いているし、チップも付けていたようなので安心した。
全員揃ったところで、バスに乗って、スタート地点へ出発。だが何かいつもと違う?何だろうこの落ちつきは。
これまで3回のホノルルマラソンでは、送迎バスの中では緊張感に支配され、ガタガタするくらいの感じ
だったのに妙に落ちついていた。4回目ともなると慣れてくるのかな? それともたっぷり練習を積んできた
自信ってやつか? など思いを巡らせているとアラモアナ公園に到着してしまった。何か気分が乗って
こないなーと思いながらバスを降りた。それでもエイエイオーを行ったら、盛りあがるだろうと思いなおして、
エイエイオーイベントの会場へ足を運んだ。

エイエイオーイベントの会場に到着すると、ぴあの帽子を被った参加者が大勢揃っていた。ゴール地点へ
運んでもらう荷物をスタッフに預け、寛平リーダーの到着を待つが、スタッフから『寛平さん遅れている』の
知らせが・・・ 仕方がないのでストレッチを入念に行い、到着を待つことに。 少し離れたところでは、
エグザスやセントラルフィットネスの選手団が大声をあげて気合をいれていた。これを聞くといつもはさらに
気分が盛り上がってくるのだが、今回は妙に冷静。何かこう燃え上がってくるものがないんだよね。

『ちょっと遅すぎやしねーか!』と思い始めた頃、ようやく寛平リーダー登場。いつものテンションで参加者
を盛り上げる。『3時間を切ろうと思っている人いる?』と寛平リーダーが呼掛けた時に一人の参加者が
手を挙げた。ステージに上がり目標タイム2時間59分59秒を目指すと語った。彼の顔をみて、『この人が
今回の参加者の中では一番速いんだなきっと。。。 この人に勝てばチームで1番だな!』と内心ニヤリ。
明確な目標がないよりは、あったほうがやりやすい。レース中に彼を見つけたらついていってみよう!と
心に決めた。そして『エイエイオー!!』の掛け声を参加者全員で挙げ、お互いの健闘を称え会う。
『よーし頑張るぞ!!』といつもならここで目一杯気合いが入るところだが、いまだにテンションは低め。
どうしちゃったんだ?おれ。

スタートまでの時間は1時間を切っていた。とりあえず1発トイレに行っておかなければ!ということで、
私達グループは、トイレ待ちの行列へ。私だけちょっと離れた公衆トイレ(女性陣は簡易トイレ)に向かった。
簡易トイレのほうは、かなりの行列だったが、公園の公衆トイレ(男子)は、列はそれなりに長いものの、
大と小が別々の列になっていたので、小の方はスムーズに進んだ。用が済んだので、みんなのところに
戻るが、簡易トイレのほうは、殆ど進まず。ただボケっと待っているのも何なんで軽くアップをすることにした。
芝生の上をゆっくり走り、時々スピードを上げたり、スキップしたりしていたら、だいぶ身体が温まってきた。
そろそろかなーと思い、戻ってみたがまだ当分かかりそうな雰囲気。今度はストレッチでもう1度身体を
ほぐした。そんなことを何回か繰り返しているとようやく女性陣の用も済んだので、スタート地点へ移動
することに。実はこの時、既にスタートの10分前を切っていた。

もっと前へいかなければ!ホノルルマラソンでのスタート位置は記録に大きな影響を及ぼす。何しろ
3万人近いランナーが参加する大レース。一番後のランナーはスタート地点を通過するのに15分近く
かかるのだ。3年前からチップが導入されネットタイムの計測は行われるが、歩きによる参加者を含む
超スローペースの人並に、はまったら、走りたくても走れない。出きるだけ前からスタート!これが
ホノルルマラソンの鉄則だ。と言うわけで人ごみを掻き分けて強引に前へ進む。スタート5分前。
まだ4時間〜5時間の位置。もっと前に!ようやく3時間〜4時間辺りに到達。これでもまだ後ろ過ぎる。
実力的にはこの辺なのだが、最初から歩くクセに前からスタートするマナーの悪いウォーカー(特に日本
人が多い)が、ホノルルマラソンには多く出場するので、(自分のゴールタイム − 1時間)くらいの
位置からスタートするのが妥当と思われる? なんとか人ごみを掻き分けてようやく2時間30分〜という
位置に到達した。もうスタート1分前。これ以上前へ行こうとしたらコース内に戻れなくなりそうなので
この位置からスタートすることにした。母-叔母の姉妹コンビは、ずっと後からスタート。(これは当然の
マナーでしょ!!) いつもならスタート1分前といえば、武者震いしても良い時間なのだが、相変わらず
燃えてくるものが無い。良く言えば落ちついていた?ってこと。

午前5:00、轟音とともに花火が打ちあがり、第30回ホノルルマラソンがスタートした。今年は、昨年テロ
の影響で参加者が激減した反動からか、エントリー数が3万人を超えたそうだ。この巨大な人並みがドッ
と動き出す。と言いたいところだが、そう簡単には動かない。皆、花火に見とれて動かないのだ。
しばらくしてようやくノロノロと進みだし、スタート地点までのロスタイムは3分弱。まあここまではゆっくり
でも良い。ここから自分のペースで走り出したいのだが、これがそうはいかない。この位置からスタート
しても歩いている人達が自分より前にいる。『あんた達はどこでもドアを使ってワープする気か?』
『頼むから端に避けてくれー!』と思うのだが、堂々と2人・3人横に並んで、コース上を歩いている。
それに付き合っては、いられないので、こっちが歩道の上に駈けあがったり、中央分離帯に上ったり、
右に左にコースを移動して走りぬける。大きなロスであることは、判っているのだが、とにかくこの混雑を
早く抜け出さないといつまで経っても自分のペースは作れない。
それまで冷静だったのが、嘘の様にカッとなってしまった。K枝、A子さんとはスタート地点で別れ、
キャップとは右に左に移動しながらも、同じような位置で走っていた。1マイル(1.6km)を越え、アロハタワ
ーの近くまで来るとようやく前が少し空くようになってきた。ここでキャップと1度並び『やっと走れるようになっ
たね』と声を掛けると『こんなに早く走れると思ってなかった』のような返事が… いかに自分が焦っていた
かが分かる。キャップとはここでお別れ。

さあやっと走れる状態になってきた。自分の感覚で走ってみよう!とリズムの立てなおしを図るが、ここ
までに加速、減速、急加速、急減速を繰り返した為、自分のペース感覚が分からない。今走っている
ペースは速いのか、遅いのか判断がつかなかった。ただでさえ暗い事で、昼間とはスピード感覚が異なる。
その上、最初の1マイルで乱してしまった感覚は、そう簡単には戻らない。仕方がないのでラップで調整する
ことにした。目安とするラップは1マイル7分12秒(4分30秒/km)だった。最初の2マイルは混雑していたから
参考にならない。(ちなみに15分49秒,1mile平均7分55秒) 次の1mileのラップで調整しようと考えたが、
3mileの標識を見落としてしまい、4mileまで手探り状態でまわりのペースに合わせて走ることになってしまった。
コースはアラモアナ公園を過ぎてヨットハーバーに差しかかっている。2-4mileのラップは、15分06秒。(1mile
平均7分33秒)目安よりは少し遅いがまずまずだった。このペースならそんなにきつくないので、もうちょっと
上げてもいいかなと思い、少し他のランナーを抜く傾向で進めて行く。それでもペースはそれほど変わらず、
4-5mileは、7分28秒。コースはカラカウア通りの1番賑やかなワイキキ中心部に差しかかっていた。
応援もさすがに多く、ここでは奮い立つような感覚になってきた。やっと燃えてきた-???

黄色い帽子発見!! シェラトンモアナサーフライダーを越えた付近で黄色いぴあの帽子をみつけた。
徐々に接近していき、カピオラニ公園入り口付近で5メートル差くらいに詰め寄った。暗がりの中、ランシャツ背中
のデザインを凝視すると間違い無く、今年のチームぴあの参加者だった。しかも見覚えのある風貌。
そうだ!サブスリーが目標の人だ! 個人的予想でチームぴあ優勝候補に挙げた、彼に追いついたのだ。
このまま引っ張ってて貰えば!と思ったが、今の自分のペースに追いつかれるようでは、どう考えてもサブスリー
が出る筈はない。しかも彼の走る姿を良く見ると、片足を庇っているように感じる。『これは足を痛めているのかな
?』と妙に冷静に判断し、追い抜いて先に行くことにした。追いぬく時に例の『バーン!』という合図を送ろうと
したが、すれ違いでやるのは問題無いが、抜くときにやるのはちょっと気まずい感じがしたので、何も言わずに
先に行くことにした。5-6mileは目標があったこともあり、ペースが上がってしまい6分50秒(4:16/km)。標識に
間違えが無いとすればちょっと速すぎた。コースはモンサラットアベニューというカピオラニ公園周辺の街灯が
殆ど無い暗がりコースに入っていた。

サブスリー狙いの彼を抜かしたって事は、『もしかして自分が1番?』なんて考えなくても良い事を考えていると
コースはパキアベニューへと移っていた。ここは暗くて鬱蒼とした樹が生い茂り、足元を注意しようにも足元が
全く見えないという危険地帯で、常に転倒の危険を感じながら走っていた。(舗装状態もあまり良くない)
また、直前のラップが少しオーバー気味だったので、少し抑え気味に走った。その結果、6-7mileは、7分11秒
という目安のタイムに殆どビンゴ!このリズムで…と行きたいところだったが、この後、コースはダイモンドヘッド
の上り坂へ突入する。往きはそれほどの斜度を感じないのだが、それでも1mile弱で30m程度の登りという事で、
ペースはそれなりに落ちてしまう。この登りオンリーの7-8mileは7分43秒(4:49/km)に落ちこみ、続く下り&登り
(10m下って、10m登る感じ)の8-9mileは、7分30秒(4:41/km)に落ちついた。

ここまでのところで特に疲労感などは無かったが、安定していないペースに先行きの不安を感じてはいた。
平坦コースのハイウェイに乗れば、1mile7分10秒〜20秒に落ちついてくれるかな? そんな期待を持って
走っていた。9-11mileは細かいアップダウンはあるものの、下り傾向のコースとなる。ここで上り坂の分を取り
返しておきたいと言う気持ちはあるのだが、先がまだ長い事、さらにまだ暗くて路面が良く見えない事があり
思うようにはペースが上がらない。この2マイルは高低差30mの下り区間(短い登りもあったが)であったにも
かかわらず、14分52秒(1mile7分26秒,4:38/km)という目安のペース(1マイル7分12秒)には及ばなかった。
さらにこの辺りである異変が生じた。痛みでもなければ、苦しみでもない。

それは睡魔だった。走っていて襲われた睡魔と言えば、サロマ湖ウルトラマラソンのワッカ原生花園で1度
経験していたが、あの時はあきらかなエネルギー切れ。今回はまだ15キロを過ぎたところで、低血糖による
睡魔ではない筈。しかしながら眠くなってしまう。前日の寝不足が原因か? ふと気がつくと前のランナーに
近づきすぎて、自動車運転中だったら追突!なんて事態に何回か陥った。それでも勝手に足は動く。夜明け
前の暗さと、心地良いくらいの気温、ランナーの足音が妙に眠気を誘った。『いかん!目を醒まさなければ!』
と頭を振ったり、水を掛けたりして睡魔を振り払おうとするが、べったりと身体にまとわりついて離れてくれなかった。
そんな事もあって、ペースが上がってくれなかったのかもしれない。

そんな睡魔から開放されたのは、11mile手前のハイウエイに乗った瞬間からだった。その理由は強烈な向かい
風。ボーッと走っていて前に進むほど、柔な風ではなかった。ゼッケンは風になびき、帽子は飛ばされそうになる。
強い突風が吹くと、上体さえも煽られる。風除けランナーを探して後に貼りつくが、上空から吹き降りてくるような
風では効果がない。さらに汗や掛け水で塗れたランシャツに風が当って、お腹のあたりが冷えてきた。
『うーん、気持ちが前に向かないなー』と萎えかけていたら、前方から車椅子の先頭集団が走ってきた。さらに
暫らくすると男子マラソン先頭集団が現れた。風は依然として強かったが、すれ違いのランナーを見学しながら、
走れた分、気分的には紛れてきた。ハイウェイに乗ってからのラップは、11-12mileが7分28秒(4:40/km)、
12-13mileが7分18秒(4:33/km)、13-14mileが7分12秒(4:30/km)と向かい風に苦しみながらも良いペースに
なってきた。ハーフ地点の通過タイムは、1時間38分07秒。この調子で追い風に変わる後半ペースを上げて行けば
3時間15分は切れるかも!という期待を抱いたのだが・・・

ハーフを過ぎたところで、最初のアミノプロを摂取した。効果が出るのは30分ぐらい後と聞いていたので、早め
に1袋目を飲んだ。その為のロスが少々あってか、14-15mileは7分21秒(4:35/km)と若干落ちたが、15mileを
過ぎて、ハワイカイに入ると向かい風から開放されたのと、アミノ効果が現れたのか(ちょっと早すぎる?)、
急に足が軽くなり、15-16mileは、7分05秒(4:25/km)にペースアップした。ハワイカイをぐるっと廻ってハイウェイ
に戻れば今度は追い風に変わる。このままの調子でいけば、3時間10分に近づける?なんてところで、前編は
終了。 後編に続きます。

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