苦悩の決断 −前半勝負? 体力温存?−

スタートラインを越えた。まだ自分のペースで走れるほどのスペースは無い。人ごみを縫
っていけば走れないことはないが、無駄なエネルギーを使いたくなかった。人の流れに身
を任せ、ゆっくりゆっくり走るのもまた心地良いものだ。これから嫌になるくらい走りつ
づけなければいけないのだから、最初くらいホノルルのお祭り気分を味わおう。まだ頑張
らなくていい、ホノルルを楽しむんだ。この時期のワイキキ周辺はクリスマス1色。
店のディスプレイや街路樹のイルミネーションがクリスマスカラーに染まっている。今年
は仮装ランナーが少ない気がする。スタート位置が前だからかもしれない。

1マイルを過ぎ、列が少しづつバラけ始めてきた。それにともなってペースが若干上がる。
左にアロハタワーが見えてきたあたりでK枝に声を掛ける。『マイペースで行こう、無理す
るなよ!』そして次の瞬間、周りのペースに合わせ前へ出た。と言っても感覚的には
1km 6分30秒くらいのペースだったと思う。これ以上ペースアップするつもりは無かった
し、周りの混雑具合からしてもこれが精一杯だと思った。その後も自分の前にスペースが
できれば詰めるが、無理な動きはしない。

K枝
それにしても混雑している。無事にスタートラインを通過。去年は、緊張していたし、
雨が降っていて寒かったのでスタートラインで自分にといかける余裕はなかった。
今年は、違う。違ってほしい!!さあ、これから自分との長い戦いのはじまりです。
がんばるぞっと思った。横で、マナーの悪い日本人のランナーにT.Kが腹を立て
ながら走っていた。ほんとにそう思う。ななめに走ったり、隙間が狭いのに強引に
他人にぶつかりながら抜いていく。外人ランナーのほとんどがすれすれに抜いて行く時、
「Execuse me!」って言っていくのに。日本人のほとんどが無言。
だいたいがおじさんランナー! ちなみにななめに走ったり、突然真ん中でとまるのは、
ワイキキビーチをうろうろしてそうな日本人の若い男の子。やだねー!こういうのって。
こんな前半からは、ころびたくないので、しっかり足元を見て、走った。T.Kが私に
声をかけて、前に出ていった時、一瞬心細くはなったが、体力がどれぐらい持つかわから
ないので、私は、おさえめの毎ペースで行こうと決意した。しばらくは、時々T.Kの
後ろ姿を確認しながら走っていたが、曲がり角をきっかけに見えなくなってしまった。
次に会うのは、ゴールの後だね。あー気が遠くなるからそんな先のことは、
考えないようにしようと思った。今、この瞬間を楽しまないとね。


右側にカメハメハ大王像を見て、暫くすると2マイル地点。このあたりにくると道幅が
広がり、列がばらけはじめる。さあどうする? 先ずは右手を左胸に当てて心臓にお伺いを
たてる。『心臓:特に問題は無いよ!』心臓は大丈夫のようだ。次に右手を左足へ、
左手を右足へ『足:まだ2マイルしか走ってないんだよ。大丈夫に決まってるじゃん』
手を心臓や足に当てるのは、練習の時から行っているおまじないのようなもの。このポー
ズを取って体調を確めると妙に落ち着く。引き続き、足の状態を伺う。ペースを少し上げ
様と思うけどどうかな?『足:大丈夫だけど、先は長いよ。もう少し辛抱したほうが良い
んじゃないかな?』、『心臓:足の言う通りだ!勝負は日が昇ってからだよ。』良し分かった
もう少し我慢しよう。ダイヤモンドヘッドの登り坂を昇り終え、朝陽が昇ったらペースア
ップしよう。勝負はハイウェイだ!! 前半勝負でも後半勝負でも無い。中盤勝負だ!!

K枝
下ばかり注意しながら走っていたら、カメハメハ大王の姿を見逃してしまった。道幅が狭く
なってきても、道の端のほうは、すこし暗かったりするので、いきなりつまづいて転んで
いるおじさんがいた。こんなところから、痛そうにびっこ引いて走って完走できるのかなあ?
ちょっとかわいそうだった。わたしも気をつけよう。なんだかすごく蒸し暑かった。


ここまで体調は全く問題なし。ただひとつ気がかりなのが、気温が思っていたよりも高い
事。日が昇るまでは気温が低い。ビニール袋を被るくらいでちょうど良い。これがホノル
ルマラソンでは常識となっているのだが、今年は例外なのか? 人ごみの中にいると風が
全く当らず、人の熱気もあってか蒸し暑い感じがする。汗もかなりかいていた。最初の
給水ポイント(2マイル過ぎ)でもしっかりと給水を摂った。これから先も給水には気を
つけよう。脱水症状が起きたらおしまいだ。


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