歓喜のスタート 

午前1時30分起床。チームぴあ からのモーニングコールが鳴る前に目が覚めた。という
より1時頃に目覚めていたので、モーニングコールを待ち望んでいたという方が正しいか。
夜中に何回か時計を見た。いつもならそれから寝つけなくなってしまうものだが、今回は
違った。時計を見て時間を確認し、目を閉じるとまた眠ってしまう。河口湖マラソン前夜
のことを、R555さんがレポートに書き記していた。私も同感だったのだが今回は違った。
まあ何はともあれ朝が来た。外は真っ暗だが...適度に睡眠をとれたので身体はかなり
休まったと思う。

朝食はおにぎり、蜂蜜を塗ったパン、バナナ。基本に忠実な朝食をスタートの3時間前に
摂る。さらに河口湖マラソンで購入した完走セットが活躍する。朝食を食べ終えると、
流れるような展開でスムーズに走る支度に入る。先ず、足、脇、股などにディクトンを
たっぷりと擦りこむ。次に手をよーく洗って乳首にバンドエイドを貼る。一枚だとはがれて
しまいそうなので、×印に貼った。今回は妥協はしない。それからワセリンをうすーく、
靴に塗りこむ。これは給水所などの水溜りで靴の中に水が染み込まないようにするため。
それと走っている最中に食べるものを持たなければならない。ホノルルマラソンの給水所
には、食べ物は置いていない。フルマラソンを3時間程度で走ってしまう人には、食べ物
などいらないのかもしれないが、5時間となるとさすがにお腹が空いてくるので小さめのウ
エストポーチを着け完走セットのいくつかを持って走ることにする。その他にバンドエイド
を持った。靴の紐はスタート前に結び直すが一応しっかりと結んでおく。ゼッケンのついた
ユニフォームを着こみ、ブリーズライトテープを鼻に貼り、準備完了。

ホテル出発は3:00。ツアー会社の専用バスでスタート地点となるアラモアナ公園へ送って
もらう。ところがここでアクシデント発生。ぴあのツアー参加者の数名が見つからない。
その為にバスが同じところを何度も通って探しまわる。そして3度目に同じホテルに戻っ
たところでようやく発見。誰が悪いのかは別にして、その為にバス酔い発生!!
普段あまり乗り物に酔うことはないのだが、緊張していたのだろうか?
バスを降りても暫く気持ち悪かった。レース前に食べておく予定だったゼリーが喉を通ら
なかった。その後、チームぴあのツアー一行は、スタート前のエイエイオーイベント会場
へ移動。走って応援隊指導の元、ストレッチなどの準備体操を行う。そして体操が終了
したところで、寛平リーダーの登場!! エイエイオーの掛け声を上げ、ランナー、
応援隊が一致団結して全員完走を誓い合う。あとは各自、自分のペースでスタートライン
に着く。私とK枝は、トイレの列に並んだ後、スタートラインへと向かった。

K枝
T.Kがセットしたアラームの音ですっきり目がさめた。夜中に何度か目がさめたけど、
はやめにベットに入ったせいか、昨日の寝不足が解消できたみたいだった。まだ暗いけど
ベランダに少し出てみた。雨は降っていないし、やっぱり日本と違ってあったかい。
常夏のワイハだもん。T.Kといっしょにおにぎりなどの朝食を食べ、気になる熱を
はかってみた。なんとひさびさの平熱!!やったー!!
飲むか飲まないかちょっとまよったけど、一応、薬を飲んだ。オリンピックだったら、
ドーピング検査でぜったいひっかかるな。T.Kと同じように順調に仕度をしていた
つもりだったが、やっぱりいやな予感が的中。もともと朝の目覚めはすごくいいけど、
動作全般がのろいほうなので、出かける前はいつもバタバタになる私。今回もやっぱり、
ぎりぎりまで準備が完了しなかった。だいたい女性のほうが、こまごまと準備に時間が
かかるものなんだから、しょうがないんだけど、私がドタバタしているのを見て、
T.Kがハラハラし始めたらしく、T.Kにとっては、平常心が乱されるのが嫌だった
ようで一生懸命準備している私のそばで、ブーイング!よけい気がちって遅くなるっ
つうの!! なんとか集合時間に間に合い、バスへ。そとは、まだ真っ暗で遠くの夜景 
がとてもきれいだった。せっかくのきれいな夜景だけどのんびりひたっている気には
なれず、だんだん緊張してきた。途中、同じチームの人が見つからないなどのハプニング
があったようだけど、無事にアラモアナ公園に到着、寛平ちゃんたちと合流、完走セット
の中のレースの少し前に食べるゼリーをすばやく食べ、チームのみんなと準備体操をした。
エイエイオーと叫んだら、なんだか力が湧いてきて気合がはいった。去年よりずっと気温
が高いようで、ジッとしていても汗が出てくるぐらいだった。あったかいせいかそれほど、
トイレに行きたくはなかったけど、いったんは、トイレ待ちの行列にならんでみた。
しかし、女性用の列は、気が遠くなりそうなほど、長蛇になっていて並んでいたら、
スタートには間にあわないなと思った。すっきりした顔で近づいてきたT.Kと目が
あった時、私はトイレをあきらめ、いっしょにスタート地点へ向かった。


スタート位置は、3時間〜4時間のちょっと前。少し見栄を張った感じだが、今年は、最初
から歩くというような消極的な作戦は取らないのでいいだろう。とにかくついにスタート
地点に立った。幸運なことに怪我も無い。風邪も引いていない。万全かどうかは別として、
今の状況には満足だ。自分の力を発揮できる状態にはある。まずは無事、スタートライン
に立てた事に感謝したい(誰に?)。スタートしてしまえば、少々怪我したって構わない。
これを目標にしてきたんだから後は思いきって走るだけだ。これまで常に心のどこかにブ
レーキを掛けて弾けることが出来なかったが、もういいんだ。思いきって走ろう!!
スタート数分前、JAL社長の挨拶があり、今年のゲストスターターが紹介された。
『シアトルマリナーズ、ミスター佐々木!!』周囲がどよめいた。と言っても日本人だけ?
何とあの大魔人佐々木がスターターをつとめる。(去年は誰だった?)そして不安が消え、
覚悟が決まった時、待ちに待ったカウントダウンが心の中で始まった。10,9,8,7,
6,5(1年前の冬、再挑戦を決意し)、4(春には国内のフルに挑戦した),
3(夏は暑い中じっくりと走りこみ),2(秋には成果が現れ始めた),1(やるべき事は
全てやった。さあ、スタートだ!)夜空に号砲が鳴り響く。続けて鮮やかな花火が打ち上
げられる。大歓声がこだまする。列は動かない、動く気配すらない。三万人近いランナー
が同じ夜空を見上げている。この1年間に走ってきたレースが頭の中を駆け巡った。春の
荒川マラソンでは無謀にもR555さんについて行き自滅。ハーフならばと思い山中湖ロード
レースでも同じ戦法に出るがまたも失敗。湘南ビーチでは、砂に足を取られ新たな走る
楽しさを発見。富士北麓24hではチーム一丸となって完走を果たした。炎天下の鳥取遠征では
坂と暑さに苦しみ、子供の国ではこの1年間の成果を確認できた。市民駅伝では、10kmの記録
を5分程度更新し、勢いをつけてここへやってきた。そして最後に浮かんできたのは、去年
のホノルルマラソンスタート地点。R555さん、A子さん、K枝さんと手を重ね合わせ、互いの
健闘を誓い合ったシーンだった。右手首には去年使ったビーズのお守りをつけている。
去年のスタートは、今年のスタートでもある。去年の"残念"を振り払うんだ。列がゆっくり
と動き出した。ゆっくりとゆっくりと1歩1歩、踏みしめながら前へと進む。スタートライン
には、スターターの大役を終えた、大魔人佐々木が、ランナーの呼掛けに手を振って応えて
いる。ついに来た。2年分のホノルルマラソン42.195kmのスタートラインに...
混雑している足もとに注意を払いながら、そっとストップウォッチのボタンを押した。

K枝 
スタート位置の3〜4時間エリアの先頭にはロープがはってあった。私とT.Kは大胆にも
そのロープをくぐりさらに前に出て、スタート位置をキープした。さすがにこの辺から
スタートする人は、ランパンやランニング姿が板についていて、ふざけた仮装をしている 
人が見当たらない。ふくらはぎなんかを観察するとうわー走りこんでるって感じがした。
でも、そんなことでは、ひるまず、またまた完走セットの中のスタート直前に食べるゼリー
を食べた。T.Kはバス酔いから胃腸が復活してないらしく、気持ち悪いといいながら、
ほとんど食べずにゼリーの袋をながめていた。でもいいじゃん、風邪っぴきじゃないんだから
私なんか、思いっきり病み上がりなんだから。せめて栄養をつけておかないと。。。
そういえば、前日まで熱があったなんていう条件で走ってみたことがないので、どんな風に
影響するかが想像つかなくて不安だった。とにかく今は、無事?スタートラインに立てた事を
うれしいと思うことにした。車椅子の人たちが一足先にスタートしたらしく、前のほうが少し
にぎやかになった。いよいよ、感動のスタート、T.Kが秒読みを始めた。真っ暗な空に花火
があがり、みんなの歓声があがった。こういう時、外人の歓声は派手でかっこいいよね。
列がやっと進みだし、ストップウォッチをスタートさせた。進み始めて、すぐにスターター
の大魔人佐々木の姿をとらえることができた。とても近かったので、
思わず「大魔人!こっち向いて!!」と叫んでしまった。
しまった、いきなり呼吸が乱れてしまったかも。


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