第3話:無主物先占うさ天使
作:
佐倉くれあ
これはヘボン企画(4万ヒット記念)のリクです。
なぜこんなヘボヘボになったのか詳しくは
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-From 1-
その白いものはぽてっと八樹の前に落ちた。
(………悪趣味だ…)
白いものは人だった。いや、頭にはうさぎの耳が生えているし、背中からは小さな羽が生えているので、愛玩用の『人形』なのだろう。
それにしても……
どこからどうみても男性体なのに、うさぎの耳と天使の羽がついているのもかなりの悪趣味だが、それよりさらに悪趣味なのは彼の身につけている衣装だった。
大きく背中があいたミニのウェディングドレス。
これじゃあ逃げ出したくなるのもムリないよなぁ、と八樹は思った。
人形には亜人間としてたったひとつだけ人権が認められている。
それは、主人があまりにひどいあつかいをすると逃げ出すことができる、という権利だ。
ぐったりとしていた彼の羽が小さく震えだした。
顔を上げ、不思議そうに周囲を見渡している。
「ねぇ、君には飼い主がいるの?」
「あぁ?」
目つきはきついし、態度もひどく横柄だ。とても規格品の『人形』とは思えない。
持ち主の趣味を疑いはするが、意外に高級品なのかもしれない、と八樹は思った。
「君のご主人様だよ。いないの?」
「んなもんいるわけねぇだろ!」
その人形はどうもすごく怒っているようだった。当たり前のことを訊いただけなのに、この反応というのもどうだろう。
普通、どんな人形でも主人がいないと答えることはない。
主人がいないのは逃げてきた人形だけで、それは単なる『モノ』だから、基本的には一番はじめに拾った人に所有権が移る。
そうこうしている間に人形は体を起こし、自分の服装を見て「なんだこれは」と叫んだ。
(なんか変な人形だなぁ。でも、飼い主がいないんだったら、俺のものにしておくべきだよね。オーダーメイドなら高く売れるだろうし)
それに一見かなり怖いけれど、よく見てみればこの人形は下世話な想像をかき立てる顔立ちをしていた。
(うまく撮って、オークションにかければいい感じで売れるかも)
八樹にはいま職がない。このチャンスを逃す手はなかった。
「おいで。俺の物にしてあげる」
「アァ? てめェまだいたのか」
人形は八樹を睨みあげてすごんでいる。かなりの真剣勝負を経てきたはずの八樹でさえ、その視線は怖かった。
(人形でもこんな瞳できるんだ。でもなぁ―――本当にうまく撮らないと売れないかも)
八樹はとりあえずその人形の腕をつかんだ。
無主物は発見者のものになるのが原則です。
無主物先占。こういう妙な用語を使うのも
へぼくていい感じ(笑)
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