第16話:大草原のうさ天使

作:佐倉くれあ
これはヘボン企画(4万ヒット記念)のリクです。
なぜこんなヘボヘボになったのか詳しくはこのページへ。


-From 1-


 大陸間弾道鉄道(TDT)の一等個室は二十世紀初頭風のインテリアでまとめられ、窓にしか見えないスクリーンはケニアの大草原を映していた。その画面は人工的に作り出された電車の揺れと完璧にシンクロし、実際には時速1000キロで走っているにもかかわらず、時速80キロでケニアの大草原を走っているようにしか感じられない。
(半屋君、これが映像だって気づいてないな)
 向かいに座る半屋は、相変わらずの無関心無感動な瞳をしているが、遠くにライオンの群れが見えたとき、ふさふさの耳がぴくりと動いていた。
「綺麗だね」
 どこまでも広がる大草原。時差に合わせるために、あっという間に夕方になり、日が暮れてゆく。半屋の横顔を映す窓の向こうには、恐ろしいほどの星空と、遠くに光る獣の瞳。 
(やっぱり一等個室にしてよかった………)
 八樹はこの際、持っている金をある程度使い切ってしまおうと思っていた。今は無職みたいなものだし、就職のめどもたっていないが、スキャンダルまみれの金メダリストとして生きてゆくよりも、半屋と二人で一からやり直したい。
 あっという間に夜が明けたので、半屋は不審そうな表情をしたが、荘厳な朝焼けに照らされる大草原に様々な獣が現れると、また耳をぴくりと動かした。
 大草原のかなたにドームに包まれた摩天楼が見え始めた。ネオニューヨークだ。実際は別に大草原の中にあるわけではないが、客の興をそがないためにこういう映像になっているのだろう。
「あれか?」
「そうだよ。あと一時間ぐらいでつくね」
 半屋は(もしかしたら八樹の思いこみかもしれないが)少しだけがっかりしたようだった。
(ああ。めちゃめちゃかわいいな〜 上海行きのTDTに乗るときもケニアの映像にしてもらおう)
 TDTは滑るようにドームの中に入り、目の前に摩天楼の大都会が広がる(実際はまだ地下だ)。半屋は関心を失ったらしく、耳が少ししおれていた。


 あらら。ニューヨークでのラブラブ生活まで行く予定だったんですが、ついケニアに力を入れてしまいました(笑)
 今回のへぼんは見ればわかるでしょう(笑) ちょっと耳にこだわったのもポイントです(笑)