そうしていると、料理が運ばれてきた。
皮がパリパリとした大きめの薄焼きピザは、二つともとても美味しい。
「美味しい?」
「すげぇ美味い」
「よかった。このピザ、チーズがすごく美味しいね」
裕太が美味しいと言うと、周助はとても嬉しそうな顔をする。変なプライドとか色々が邪魔をして、今日は楽しいとかそういうことは言えないけれど、美味しい料理を美味しいと言うのは簡単だ。
「兄貴のやつもかなり美味いな」
「そうだね」
周助はまた嬉しそうに微笑んだ。
ピザを食べ終わり、パレット風の皿の上にアイスなどのデザートを美しく盛りつけたこの店の名物デザートを食べていると、周助がじっと裕太を見た。
「なんだよ」
「いや、甘い物を食べてるときの裕太って本当に幸せそうな顔をしてるなって思って」
裕太はかなり甘い物が好きだ。特にお店で出てくる綺麗なデザートや、デコレーションに凝ったケーキなどを食べていると幸せな気持ちになる。
「………悪かったな」
観月などに言われてもさほど恥ずかしくはないのだが(寮のデザートを食べていると、よく観月に同じ事を指摘される)、兄に言われるとかなり恥ずかしい。
「結構評判のいいメープルシロップパイのワゴンとかもあるから、後で食べてみる?」
恥ずかしいのだが、やっぱり甘い物の誘惑には勝てない。裕太は大きく頷いていた。
※ ※ ※
(………本当に可愛いなぁ)
デザートを食べている時の裕太は本当に幸せそうだ。
見ているだけで周助まで幸せに包まれる。
周助自身は甘い物はそこまで好きではないが、昔から裕太が食べているのを見るのが好きだった。
お菓子を裕太にあげて「おいしい?」と訊くと「うん、おいしい!」と嬉しそうに答える。そんな裕太を見ていると、別のお菓子も裕太にあげたくなるので、周助は昔から甘い物を口にすることがあまりなかった。
でも、裕太が中学にあがってからはそんな顔を周助に見せてくれることはなかった。とびきり美味しいケーキを前にしても周助の前では「いらねぇ」と突っぱねる。
たとえ食べたとしても、まるで味がしないかのような表情を浮かべていた。
「これも食べる?」
「もらう。兄貴、これ食うか?」
「僕はいいよ。おいしい?」
「うまい」
家族でこの店よりいい素材を使っている店には何回も行った。でもそのときよりも裕太が美味しいと言ってくれている気がする。
それは今、裕太が楽しんでいるからなのだろうか。
今、裕太が自分の前で美味しそうにデザートを食べてくれていることがとても嬉しい。
「ここはデザートもおいしいね」
楽しい時間の中で、雰囲気のよい店で、美味しいと言い合いながらの食事はとても幸せだと周助は思った。
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カナレットはデザートも凝ってるのでお勧めです。イタリアの絵描きさんテーマなお店なので、パレット型のデザートプレートにデザート何種もつく盛り合わせなんかがあります(食べれる絵筆みたいなのもついてきます)。
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