いつの間にか眠っていたらしい。
真夜中に俺は目を覚ました。
俺は裸の、兄に抱かれたままの体で、それがひどく馬鹿馬鹿しく思えた。
もうこうやって抱かれることもない。
一度眠ったせいだろう、気分が変わっていて、俺はすぐにでも体を洗って元の自分に戻りたくなった。そして寝間着を着て、部屋を出た。
バスルームに向かうには、兄貴の部屋の前を通らなくてはならない。
俺は兄貴のドアの前で少し立ち止まった。
このドアの向こうで、あいつはすやすやと眠っているのだろう。
体の関係が切れても俺達は兄弟だし、兄貴が結婚しようと、この部屋で女を抱こうと、俺達はずっと兄弟なのだった。
俺はもう、体の関係が始まる前、俺達がどういう関係だったのか思い出せなくなっていた。
寝たりキスしたりするのが当然だった。そういうふうにしたのは兄貴の方だ。
俺は小さく舌打ちをして、兄貴の部屋の前を離れた。
シャワーを浴びて、汗やその他のものを洗い流す。
そういえば昨日、兄貴はゴムを使っていた。
あいつは性格が悪くて、中で出した後、始末をするのが好きだった。
嫌がっても、だって裕太がこっちの方が気持ち良さそうだからとかしゃあしゃあと言う。確かにそれは本当だったし、時間が無いときや、本気で嫌がった時はゴムを使ってくれた。
昨日はどっちでもなかったのに、ゴムを使っていた。多分、最後にするつもりだったからだろう。
そんなんで良く、することができたもんだ。
もしかすると、自分が違うから誤解していたのだが、兄貴は生粋の同性愛者だったのかもしれない。
その方が納得がいく。
自分の相手が見つけにくいものだから、言うことを聞かせやすい弟を巻き込んだのだろう。あいつはそういう奴だ。最悪の兄だ。
そう考えたら、少しだけ気分が軽くなった。
もう一度シャワーを浴びて、部屋に帰って寝た。ベッドにはまだ兄貴の存在感が残っていたが、俺は気にしないように努めた。
元々あいつはあいつだし、俺は俺だ。大丈夫だ。別に大したことじゃない。
兄貴も言っていたように、もうすぐ大学が始まる。
知らない奴等とたくさん会って、こんなことすぐにどうでもよくなる。
俺は平気だ。心の中でそう誓って、目を閉じた。
なかなか眠れそうには無かった。
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