菌糸瓶について

その3 菌糸瓶の選び方
C)粒子から

By George,H


C)拉子の大きさ

 粒子の大きさについて、長所と短所を述べていきたいと思います。まず、粒子が微粒子の場合の長所として、二点ほどがあげられると思います。
第一が幼虫、特に初齢幼虫の段階においての、菌床の摂取をしやすくする点です。
これは粒子が荒い場合などに、加齢が遅くなる傾向からも解ることですし、経験的に見ても若齢幼虫での死亡率を低くするようです。また、第二に、ビンに詰め込む場合の圧縮率を高めやすい点です。このことは、砂利と砂をビンに詰め込んでみれば解ることで、砂の方がよく詰まることを想像して頂けば、明らかだと思われます。ただし、微粒子にすることによる短所にも目を向ける必要があります。
 その一つとして、菌床の劣化が速い点にあります。微粒子のマットは菌糸による材(マット)の分解が、荒い粒子に比べて速まるのですが、そのことは同時に菌床自体のもちが悪くなることを意味します。別な側面から見れば、菌糸による分解が速いということは、幼虫の消化、栄養吸収の助けになりやすい反面、菌床の劣化による幼虫の環境の劣化を速めてしまうため、頻繁にビンの交換が必要になってきます。また、もう一つの短所としては、微粒子であるほと、ビン内部が酸欠状態になりやすいという点です。微粒子のほうが隙間が狭いことは前記にもふれましたが、特に間題となるのは次に述べる二つの場合です。

  一つはビン内部の菌糸が活性状態(簡単にいえば、菌糸が伸び盛りの状態)にある場合で、このとき菌糸は多量の酸素を必要とするため、幼虫に必要な酸素量を満たさない恐れがあります。逆に菌糸が劣化しはじめる場合も間題があります。この場合、ビン内部の水分が増加するので、その水分が粒子の隙間を塞いでしまい、酸素の流入を遮断する可能性が高まってしまいます。なお、酸欠の場合、幼虫が菌床の外に出てくるので、適切な処置を施す必要があります(処置の仕方は別の機会に)。
 以上のような点を踏まえれば、マットの粒子が荒い場合の長所や短所はある程度思い浮かぶのではないかと思われます。
   簡単にいえば、幼虫を短期間で大きくするには微粒子の方がよいが、幼虫に対する危険性が高まりやすい傾向があるように思います
若齢幼虫の期間は短期間であるため劣化の恐れが少ないので、マットを圧縮しすぎなければ、酸欠の心配も少ないわけですから、理想的には若齢幼虫には微粒子の菌糸ビンを使用する方がよいと思います。
また、3齢幼虫から先は、ビンの交換による幼虫の縮みが皆様方にとっての悩みの種ですから、劣化の少ない中粗目程度の粒子のものにするとよいでしょう。
 しかし、現実的には、微粒子のマットと中粗目のマットで2種類の菌糸ビンを使い分けることは困難で又コストがかかってしまいます。ある程度の満足を求めるなら、個人レベルで菌糸ビンを作る必要があるかも知れませんね!!  

D)ビン(容器)のサイズ

 菌糸ビンの容器のサイズは、マット飼育と同様に、飼育するクワガタの種類と幼虫のステージ(何齢幼虫なのか)、それに幼虫の性別によってある程度適切なサイズがあると思います。ある程度の目安となるように、経験的な適切サイズを表にしておきました。あくまでも目安であり、絶対的なものではありませんので、最終的な判断は皆様方各自で考えてみてください。

 

サ イ ズ 幼虫の種類・ステージ・重さ・性別などによる具体的な例示
 200ml
程度
(ワンカップなど)
A:コクワ/アカアシ/スジクワ/ダイトウ・スジブト・チョウセン・ハチジョウヒラタ/などの若齢幼虫及び3齢幼虫のうち♀と小型の♂(成虫サイズ35mm程度)・・・*注1
B:アンタエウス/グランディス/シェンクリング/などのビン内部で移動の少ない種類の若齢幼虫・・・*注2
 450ml
程度
C:Aのうち大型の♂と特大サイズの♀(3齢)/Bのうち移動の多い性格の幼虫/など
D:国産・外国産オオクワ各種のうち、その若齢幼虫と3齢サイズの♀/国産・外産ヒラタ大型種のうち、その若齢幼虫と3齢の♀/など
 900ml
程度
E:Dのうちで特大サイズ(50mm前後以上)になると思われる3齢幼虫の♀/など
F:Dのうちで成虫になるときに73mm程度までのサイズになると思われる♂の3齢幼虫/など・・・*注3
2000ml
程度
G:Fのうち成虫サイズが73mm前後以上になると思われる♂の3齢幼虫/など

 

*注1:いわゆる小型種にあたるものです。450ml程度の容器で飼育することも可能ですが、幼虫の体の割に容積が広く、環境コントロールが上手くいかない場合が見られるようです。逆に200ml程度容器の場合には入れ換えに伴う幼虫の縮みの不安があるのも事実です。

   *注2:同じ種親から出てきたグランディスの幼虫でも、ピンの下部でおとなしくしている幼虫がいる一方で、菌床を壊しまくる幼虫もいます。ですから、例示した種類は移動の少ない傾向のある幼虫を述べたものであり、ゆとりがあるなら450mlでの飼育をお奨めします。
   *注3:3齢入れ替え時の幼虫の体重から、ある程度成虫の体長を推定することが可能ですが、使用しているエサ(マット、菌糸ビンなど)や飼育期間などの条件によって、成虫の体長は3mm程の差が出る場合もあるようです。
       例えば、ビンの交換時に20gのオオクワガタの幼虫がすぐに蛹室をつくる場合でも、飼育条件によっては68mmにしかならないものもいれば、70mmオーバーの個体が出てくることもあるのです。また、クワガタの種類によって体重と目安となるサイズの関係も異なります。したがって、ご自分の飼育している幼虫の種類がどの程度のサイズの成虫になるのかは、データの蓄積によって経験を積む必要があります。

   大体、このような感じが経験的にいえる目安ですが、容器のサイズを決定するには、

   ?幼虫の環境コントロール能力
   ?幼虫に必要なエサの量に基づくエサの交換回数
   ?容器の内径が羽化時の必要条件を満たしているか
  
   などの3点を中心に考慮していく必要があります。特に、?と?は互いに相反する条件ですから、幼虫の種類や状態などを上手く見極められるように経験を積んで下さい。これらはまだ一定の判断基準があるわけではないですし、また逆にそこが楽しいところでもあるはずです。

   それでは今回はこれくらいで...............................次回は「E)容器の種類」から述べていこうと思います。

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