イエスの生涯 (2)



  ヨセフとマリアはイエスが生まれて8日目に割礼を施し、モーセの律法に従って犠牲を捧げるためイエスを連れてエルサレムの神殿に上っていった。神殿には罪の犠牲を捧げる人や祈りをする人々であふれていた。
  ヨセフは犠牲の鳩を売る人々に近づき、乏しい収入の中から、ヤハウェの犠牲に捧げるための鳩を2羽買った。
  2羽の鳩を携え、神殿に近づこうとしたとき、一人の老人から呼び止められた。老人は2人の顔を嬉しそうに眺め、赤子をマリアの手から抱き上げ祝福して言った。
  「主権者なる主よ,今こそあなたは,ご自分の言われたとおり,この僕を安らかにゆかせてくださいます。私の目はあなたの救いの手だてを見たからです。それはあらゆる民の見るところであなたが用意されたものであり,諸々の国民から暗闇を取り除くための光,またあなたの民イスラエルの栄光です。」
  マリアとヨセフは驚きに満ちてこの老人をまじまじと見つめていた。老人はシメオンといって、「約束のメシアを見るまでは死なないとヤハウェから告げられていた」と述べた。
  シメオンはマリアを優しい眼差しで見つめ、
  「見なさい,この子は,イスラエルの多くの人が倒れ,また再び立ち上がるため,そして非難を浴びるしるしのために置かれています。それは,多くの人の心の推論が暴かれるためなのです。そしてあなたも長い剣によって魂が貫かれるでしょう。」   
  そして老人は彼らを祝福して静かに立ち去っていった。
  マリアとヨセフはこの子は一体どのような人になるのだろうかと不思議に思っていた。
  さてしばらくすると再び一人の年老いた女性が近づいてきた。彼女はアンナと言い84歳でいつも神殿で神に仕えていた。彼女もまたイエスを見ると、その子を祝福し、イスラエルの偉大な者となることを証しした。
  マリアとヨセフは相次ぐ老人の預言に内心喜びと驚きを感じていた。しかしこの子がメシアとなることはまだ完全には信じられなかった。
  
  
  東方のバビロンの博士達は不思議な星に導かれ、イスラエルに旅立った。彼らはヘロデの元には行かず、エルサレムで高名な人々を訪ね、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおられますか。わたしたちは東方にいた時,その方の星を見たのです。わたしたちはその方に敬意をささげるために参りました」と尋ね回った。しかしだれ一人答えることが出来なかった。その噂がヘロデ王の耳にも入った。

  ヘロデは病に冒され先行きの不安におびえていた。ヘロデはメシアがイスラエルのどこかで誕生したに違いないと悟った。「やっかいなことになった。きっとヘロデの王家はメシアによって奪われるに違いない。今のうちにメシアを殺すことが最善だ」とヘロデは考えた。それで祭司や学者達にメシアがどこで生まれることになっているか尋ねた。彼らの答えはこうであった。
  「ユダヤのベツレヘムです。預言者を通してこう書かれているからです。 『そして,ユダの地のベツレヘムよ,あなたは決して,ユダの統治者たちの間で最も取るに足りない[都市]ではない。統治する者があなたから出て,わたしの民イスラエルを牧するからである』」。

  メシアがベツレヘムで生まれることを知ったヘロデは更に詳しい情報を得るため、東方からの学者達をひそかに呼び寄せ、星の表れた時を注意深く聞き出し、「メシアを見つけたら是非私にも知らせて欲しい。私も彼の顔を拝し、贈り物を捧げたい」と嘘をついた。彼らにベツレヘムの地を教え、その地の周辺を探索するように勧めた。彼らはメシアに関する重要な情報を聴くことが出来、喜びのうちにヘロデの元を退出しベツレヘムへと向かった。

  彼らはエルサレムへ来て以来不思議な星を見失っていたのだが、いまやあの星の輝きがベツレヘムの上で輝いていた。彼らはその星に導かれ、とあるみすぼらしい家に近づいた。
  早朝マリアはラクダの足音に目覚めた。ヨセフを起こし朝早くから誰かが来たことを知らせた。ヨセフが戸を開けると、そこにヨセフとマリアが起きるのを待っていた東方の学者達を見つけた。学者達もヨセフが戸を開けたので素早く立ち上がり、彼らに来意を告げ、赤子に金・乳香・沒薬などの貴重な贈り物を捧げた。
  ヨセフとマリアは驚きと怖れで一杯であった。この我が息子のイエスがイスラエルの王として、メシアつまりキリストとして誕生したことをさらに深く確信するようになった。

  学者達もメシアを見つけたことで喜びに満ちていた。ヘロデにその事を報告し故郷に帰るだけであった。ところがその夜、彼らはヘロデの元に返ってはならないという不思議な夢を見た。それで彼らはヘロデの元に立ち寄らず、東方に帰っていった。

  ヘロデはその事を聞き激怒した。
  「こうなった以上、ヘロデの王家を守る道はただ一つ、ベツレヘムとその周辺の赤子を皆殺しにすることだ。」
  彼は直ちにその命令を発した。

  そのころヨセフとマリアは深い眠りに落ちていた。
  その時ヤハウェの使いが夢の中でヨセフに現れ
  「すぐに起きて,幼子とその母を連れてエジプトに逃げなさい。そしてわたしが知らせるまでそこにとどまっていなさい。ヘロデがまさに,この幼子を捜して滅ぼそうとしているからである」。
  
  それで直ちにヨセフとマリアは起き上がり、赤子のイエスを抱きかかえ、エジプトに早足で逃れた。

  ヘロデの軍は準備を整え、恐るべき暴虐を行うためにベツレヘムに向かった。
  ベツレヘムで2歳以下の子供が捜し出され、ヘロデの軍によって殺害され、母親達の呪いと嘆きの声が天地にこだました。

  ヘロデの暴虐は広く知られる所となり、ヘロデに対する抗議の声が大きくなってきた。

  ヘロデは苛立ちが増し加わり、自らの病が重くなってきたことを知った。安らかな眠りは彼から取り去られ、今まで殺害した人々が思い浮かび、犯してきた悪行の数々が幻の中に浮かんできた。彼は日に日に衰弱し、遂に永遠の眠りについた。

  エジプトでヨセフとマリアはヘロデの追っ手が来ないかと心配しながら過ごしていたある夜、再び神の使いが現れ、ヘロデが死んだこと、それでイスラエルの地に返るようにと告げられた。それでヘロデの力があまり及ばないガリラヤのナザレに返ることにした。

  小さなイエスを抱きかかえイスラエルに帰るのは楽ではなかったが、マリアとヨセフは神の保護があることを確信し喜びと楽しみのうちにナザレに向かった。
戻る

ご意見をお聞かせ下さい

ようこそ愛育園へようこそNetGuide