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「透け感」



 新聞のファッション関係の記事でこの単語を目にしたときは驚いた。
 意味は文字通り。「紗」みたいな生地で、下に着ているものが透けて見えるものについて、「『透け感』のある素材」というわけ。

 どうにも気持ち悪さから逃れられないのでいろいろと考えて見た。

 まず、この造語の安易さだろう。
コーヒー感」という単語を始めて耳にしたのは 4 年ほど前のこと。「いかにもコーヒーという感じがする」から「コーヒー感」である。使い方は実も蓋もなく「コーヒー感のあるコーヒー」。これに匹敵する手抜き。
「芳醇」とか「酷」と言った深みが感じられない。「透けて見える感じ」だから「透け感」。

 次が、しつこさ。
 特にパソコン関係の文章を読んでいると、やたらと「行う」が出てくる。「インストールする」が「インストールを行う」、「設定する」が「設定を行う」、果ては「ダイヤルする」が「ダイヤルを行う」。これと同じ雰囲気がある。

「スケベ」との連想もあるだろう。「透けて見える服」だし。

 これ、感覚的なもので数値の裏づけはないのだが、「透ける」って悪いニュアンスがないだろうか。
 物理的な「山の木々の間に空が透けて見える」というのではなく、「発想の貧しさが透けて見える」というような使い方の場合、いい意味ということはないだろう。「育ちのよさ」なんてのは「透ける」ものではなく「にじみ出る」ものだと思われる。

 この気持ち悪さ、「誉めているように聞こえない」という感じは「生足」に通じるものがあると思うがどうか。




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