ガリレオ

ガリレオはボイジャーの約3倍の約2t(2223kg)の重量を持つ大型の探査機です。そのうち科学機器が118kg、そして燃料が925kgをしめています。プローブは339kgあり、そのうち降下モジュールが121kg、科学機器は30kgあります。低利得アンテナの先からプローブの底までは5.3mあり、磁力計のブームは宇宙船の中心軸から11m突き出しています。展開に失敗した高利得アンテナの直径はは4.8mあります。

ガリレオの特徴はパイオニアのような回転型の宇宙船とボイジャーのような3軸安定を組み合わせたdual-spinという方式を取っていることです。アンテナや磁力計のブームを含む宇宙船本体は通常毎分3回転しています。カメラなどのリモートセンシング機器、そしてプローブは非回転部に取り付けられています。回転部と非回転部はspin-bearing assembly(SBA)で連結されています。プローブを切り離すときや軌道を変更するときなどには回転を毎分10回転の高回転モードにします。

ガリレオが回転するのは姿勢を安定させるためよりは、科学的な観測のためのようです。ガリレオFAQによると、磁力の測定は高速な走査が必要とされるようですが、回転することで容易に行うことができます。さらにガリレオでは回転する部分と回転しない部分に別れていてカメラなどは回転しない部分に積まれているので、回転を必要とする測定と一点を指向しなければならないカメラ撮影を同時に行うことができます。その外には軌道の変更を行うときに回転数をあげて姿勢の安定性を増強することもできます。

この回転や姿勢の制御は姿勢・接合制御サブシステム(AACS:Attitude and ArticulationControl Subsystem)と呼ばれる専用のコンピュータが行っています。

ガリレオの構造

ガリレオは全体としては上から高利得アンテナ、回転部、逆推進モジュール、逆回転部から構成されています。

高利得アンテナ(High-Gain Antenna)

回転部(Spun Bus)

ブーム

逆推進モジュール(Retro Propulsion Module)

逆回転(非回転)部(Despun Bus)

スキャンプラットフォーム(Scan Platform)

無線中継機器(Radio Relay Hardware)

エンジニアリングサブシステム

ガリレオの宇宙船としての部分はengineering subsystemと呼ばれているようです。これには宇宙船全体の管理や姿勢制御のためのコンピュータ、高利得アンテナなどの通信機器、機器をつなぐ電線、原子力電池などがあります。

アンテナ

ガリレオは展開に失敗した高利得アンテナのほかに低利得アンテナとプローブからの電波を受信するためのプローブ中継アンテナを持っています。ガリレオの頂上に取り付けられた高利得アンテナは16本の骨を持つかさのような折畳式になっていて、開いたときの直径は4.8mです。打ち上げ前は折りたたまれていて、打ち上げ後開かれます。低利得アンテナは高利得アンテナのコーンに取り付けられています。

高利得アンテナと低利得アンテナの違いは電波の指向性です。アンテナから出力される電波はアンテナを頂点とした円錐形をしていますが、その頂点の角度は高利得アンテナが1/6度にたいして低利得アンテナは120度もあります。そのため地球に届く電波は10000倍も違うので、低利得アンテナは高利得アンテナに比べてはるかに遅い速度でしか情報を送れないのです。 高利得アンテナは134Kbpsの速度で地球に情報を送ることができます。このアンテナと2.3秒に1枚撮影できるカメラを使って木星の擬似動画を作る計画もあったようですが、展開できなかったことで撮影計画は大幅に変更になったようです。高利得アンテナが開かなかったのは、スペースシャトル、チャレンジャーの事故で打ち上げが延期され何度もフロリダのケネディ宇宙センターとカリフォルニア、パサデナのジェット推進研究所のあいだを何度もトラックで移動するうちにアンテナの骨の潤滑油が抜けてしまったためと考えられています。

使えなくなった高利得アンテナの変わりに低利得アンテナが使われています。低利得アンテナの木星からの送信速度は最初は8〜16bpsでしたが、送信する情報を圧縮したり、DSNの能力を向上させることにより、実質的な送信速度は最大160bpsまで向上しました。向上前は1枚のフルサイズの画像を地球に送るのに9時間かかっていましたが、向上後は1時間から2時間で送信できるようになりました。ガリレオから見た地球と太陽の位置関係やガリレオとDSNとの位置関係などで変化しますが、ガリレオからの情報は平均80bpsで地球に送られています。

プローブ中継アンテナは非回転部に稼働式のブームを介して取り付けられていて、直径が1.1mのお椀型をしています。プローブが切り離されるまでは格納位置にしまい込まれていますが、プローブ切り離し後、定位置に展開されます。プローブ中継アンテナはプローブがデータ送信を開始してから50秒以内に電波を捕捉しなければなりません。そのときのガリレオとプローブの距離は200,000kmあります。プローブが木星の大気中からデータを送信している間、プローブ中継アンテナは電波を追跡します。その間も高利得アンテナと低利得アンテナは地球を捉え続けます。

コマンド・データサブシステム

コマンド・データサブシステム、CDSはガリレオを制御する コンピュータ です。CDSは地球からの司令にしたがってカメラなどの観測機器に司令をだして観測をおこなったり、観測データを地球に送信します。

CDSは1.8MHzで動作する8ビットマイクロプロセッサを6個持っています。6個のプロセッサは3個ずつの2組のグループに分けられています。木星までの飛行中は、同じグループの3個のプロセッサは別々の仕事をしています。2組のグループはまったく同じ仕事を行いますが、1組が宇宙船の制御を行い、もう1組は予備となります。木星到着後は6個のプロセッサすべてが別々の仕事を行うように、動作を変化させます。

CDSのプログラムは飛行中も変更可能で、1995年2月にはプローブのデータをテープレコーダにバックアップする機能、1996年春にはデータを圧縮する機能が追加されました。

データメモリサブシステム

収集したデータを保存しておくデータメモリサブシステムは4トラックのテープレコーダで、900メガビット(約109Mbyte)の容量があります。

姿勢・接合制御サブシステム

姿勢・接合制御サブシステム、AACSはガリレオの姿勢制御、2重スピンの制御を行うコンピュータです。AACSはCDSと共にガリレオに積まれている機器のうちプログラミング可能なコンピュータらしいコンピュータの1台です。飛行中もプログラミング可能で、打ち上げ後の1996年春に低利得アンテナ用の情報圧縮を行うためプログラムが追加されました。

AACSの中心は姿勢制御エレクトロニクス(Attitude Control Electronics (ACE))と呼ばれる4個の4bitのビットスライスデバイスを用いた16bitコンピュータで、2kbyteのROMと64kbyteのRAMを持っています。センサーとしては回転部に取り付けられたスタースキャナーと太陽センサー、逆回転部に取り付けられたジャイロスコープと加速度計があります。AACSはこれらのセンサーの情報を用いて姿勢制御、2重スピンの制御、逆回転部に取り付けられたスキャンプラットフォームのポインティングなどを行います。そのために、AACSは推進ドライブエレクトロニクス(Propulsion Drive Electronics (PDE))を介して逆推進モジュール(Retro Propulsion Module)のスラスターを制御します。
AACSは自己診断機能と予備の系統を持っていて、異常事態が発生しても通常の処理を続行することができます。

パワーサブシステム

ガリレオの電源は2台の原子力電池(放射性同位元素熱電対発電機:radioisotope thermoelectric generator(RTG))です。放射性同位元素が崩壊するときに発生する熱を熱電対を使って電気に変換することで発電を行います。RTGの出力は打ち上げ時は570ワットですが、出力は1月当たり0.5ワットずつ低下して木星到着時の出力は493ワットです。

推進サブシステム

推進サブシステムは推力400ニュートンのメインエンジンと12機の推力10ニュートンのスラスタ、燃料タンク、配管からなります。推進サブシステムはドイツのダイムラーベンツエアロスペースAG(かつてのMBB)によって作られました。