鉄路存続運動の記録

◆碓氷郡松井田町の鉄路存続運動の記録 1987~1996

 横川-軽井沢間(信越本線碓氷峠)"鉄路存続運動”の黎明期から「在来線廃止反対対策協議会」解散までの経過を記載した『広報まついだ465号』の記事を紹介します。
新幹線建設のために切り捨てられる在来線の鉄路存続運動の記録として、小さな田舎町で行われた鉄道を守るための抵抗を後世に伝えたくて、このページを作成しました。

今日では、整備新幹線の延伸に伴う在来線の切り捨てや赤字経営と言うことで地域住民のインフラである鉄道が次々と廃線にされようとしています。
廃線を突きつけられたときにジタバタしても始まらないと諦めるのではなく、大いにジタバタして抵抗運動をやるべきだと思います。地域住民が声を上げずに温和しく廃線を受け入れていたら日本から在来線が無くなってしまいますよ。


【碓氷峠の在来線が廃線になった結果、このように不便になり利用者の負担が増しました。】




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鉄路存続のための松井田町の取り組みの記録
(広報まついだ465号から抜粋)



       ※黄色字は国、県、JR東日本の動向、白字は松井田町の対応
 
 
年 月 日 記  事
 昭和62年  
 12月17日
JR東日本が「新幹線建設の場合、横川-軽井沢間は廃止」と運輸省に報告
 12月24日 松井田町議会全員協議会で在来線存続を申し合わせる。
 昭和63年  
  1月 8日 町議会臨時議会で「在来線廃止反対特別委員会」の設置。廃止反対決議
  1月 ~  沿線市町、国、県、地元国会議員、JR東日本に存続の陳情
  2月12日 行政、議会、団体、住民代表、学識経験者等により「在来線廃止反対対策協議会」を設置(委員数220名)。第一回対策協議会を開催
  3月 ~  住民PR(広報紙、立看板、ステッカー、横断幕)
  9月14日 第二回在来線廃止反対対策協議会理事会で「在来線を廃止するなら新幹線建設に 協力しない」との方針を決める。
 10~11月 在来線廃止反対署名活動を行う(署名者数三万三千五百四十三人)  
 10月16日 在来線廃止反対町民大会を東中学校校庭で開く、参加者四千百人
 11月 4日 高崎駅~軽井沢駅前で街頭署名活動  
 11月16日 地元国会議員、国、県、JR東日本に、西毛地区開発協議会の市町村長、議長で陳情
 11月28日 地元国会議員、関係自民党議員、自民党整備新幹線建設促進検討委員会委員に  町議会議員全員で陳情。
 11月29日
JR東日本が政府自民党の整備新幹線建設促進検討委員会に「横川-軽井沢間の廃止」を申請する。
 12月24日
運輸省がJR東日本の横川-軽井沢間廃止の代替輸送交通案を群馬県に提示。
 平成元年  
  1月17日
政府自民党は整備新幹線建設促進検討委員会で「平行在来線 横川-軽井沢間については適切な代替交通機関を検討し、その導入を図ったうえ新幹線開業時に廃止することとし、そのため関係者(運輸省、JR東日本、群馬県、長野県)間で協議する」と決定。
  1月20日 町議会で「横川・軽井沢間存続再考を求める」決議。
  1月21日 第三回在来線廃止反対対策協議会
  9月 4日
第一回平行在来線(横川・軽井沢間)対策群馬県協議会。鉄路存続の要請を決定。 
  9月13日
第一回横川・軽井沢間代替輸送協議会を開催(四者協議会)。鉄路を残した代替輸送機関も検討課題に含まれることを確認。
 平成2年  
  8~9月 信越本線横川・軽井沢間廃止に関する利用者アンケートを実施。
 12月 9日 第八回在来線廃止反対対策協議会理事会。信越本線(横川・軽井沢間)鉄道輸送方策調査委員会の調査研究結果を発表。
 平成3年  
  7月30日 町議会に在来線存続対策特別委員会
  8月29日
第二回横川・軽井沢間代替輸送協議会を開催。JR東日本が横川・軽井沢間を廃止した場合、代替輸送機関の利用者は、一日平均百八十四人との乗客予測調査結果を発表。
 平成4年  
  7月 9日 信越本線横川・軽井沢間問題で軽井沢町・同議会と町、町議会で話し合う。
  7月13日
代替輸送機関、横川・軽井沢間沿線地域開発整備について協議する第一回平行在来線(横川・軽井沢間)対策協議会を開催。
 平成5年  
  1月13日 町議会在来線存続対策特別委員会で箱根登山鉄道を視察。
  1月14日 町議会在来線存続対策特別委員会で大井川鉄道を視察。
  5月21日
第五回平行在来線(横川・軽井沢間)対策協議会を開催し、碓氷ネーチャーランド21構想を発表。
 平成7年  
  1月24日 町議会議員がわたらせ渓谷鉄道を視察。
  2月27日
群馬県が議会で横川・軽井沢間の代替鉄道事業の成立可能性調査結果を公表。
  7月10日
横川・軽井沢間存続問題懇談会を役場で開く。
 10月16日
群馬県知事小寺弘之氏が記者会見で「鉄路断念」の意向を示す。
 11月 6日 町議会第二回臨時議会。「JR信越本線横川・軽井沢間の存続についての決議」を議決。
 11月 7日 町議会議員全員で群馬県知事へ決議文を提出。
 12月 7日
群馬県議会で知事が「現実を直視し、代替輸送機関の手当を考えなければならない」と答弁。
 12月 8日 信越本線横川・軽井沢間存続沿線市町議会意見交換会
 12月 8日 第九回在来線廃止反対対策協議会理事会
 12月25日 町議会が沿線市町議会と合同で国、地元国会議員に存続を陳情。
 12月26日 町議会が沿線市町議会と合同で県知事に存続を陳情。
 12月27日
第十回横川・軽井沢間代替輸送協議会幹事会
 平成8年  
  1月11日
第三回横川・軽井沢間代替輸送協議会。代替輸送はバスと決定。
  2月 9日 第十回在来線廃止反対対策協議会理事会。残念だが新しい課題に取り組むことを決め、協議会の解散を決める。
 平成9年  
  9月30日
信越本線 横川・軽井沢間廃止









余談ですが、碓氷峠を廃線にしないで横軽間の鉄道輸送を存続させた場合に、
当時のJRの試算では、年間10億円の赤字と言われてました。

松井田町が依頼した『信越本線横川・軽井沢間鉄道輸送方策調査委員会』の報告書では、補機(EF63)無し運転の可能性に言及しており、その場合はJRの試算ほどの赤字にはなりません。それでも年間数億円の赤字が見込まれました。補機無しの新たな車両の導入が必要ですが、当時は該当するような既存の車両はありませんでした。
JRの試算は、元々廃止ありきの断り見積のようなものと穿った見方もできます。
赤字の程度にもよりますが、少々の赤字であれば新幹線で得ている年間5000億円の利益から補填して碓氷峠の鉄路を存続させるべきだったと思います。









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バックグラウンドの写真; 妙義山をバックに信越線の列車が走る松井田町の風景