JR三社の利益

◆新幹線を運営するJR三社合わせた営業利益は一兆円を超えています。

 

1990(平成2)年、整備新幹線の取り扱いについての政府・与党申し合わせに、『建設着工する区間の並行在来線は、開業時にJRの経営から分離することを認可前に確認する』という内容が盛り込まれました。この申し合わせにより、JRは新幹線開業後、並行して走る在来線を運行しなくても良くなったのです。
この申し合わせが成立した背景には整備新幹線は儲からないこと、並行在来線は更に儲からないこと、そのためJRに整備新幹線と並行在来線の両方の運行を負わせると「双子の赤字」によって経営が危惧されるのではないかというJRへの忖度が働いたものと想像できます。

前記の政府与党申し合わせから27年、1987年の国鉄分割民営化から30年、1997年の信越本線碓氷峠の廃線から20年を経た今日、JRの経営状況を直視して、政府与党申し合わせの妥当性について検証してみる必要があります。
検証した結果、問題や偏った状況が発生していれば軌道修正することを考えるべきだと思います。

偏った状況としては、比較的人口の多い地域で新幹線を運行しているJR三社の儲けすぎです。JR東日本、JR東海、JR西日本の三社を合わせた営業利益は一兆円を超えてます。純利益でも2017年3月期決算では、7600億円を超えております。

その一方で、人口密度の少ない地方で運営するJR北海道、JR四国は慢性的な赤字に苦しみ、路線の廃線が取り沙汰されています。また、新幹線開通のため経営分離された在来線は三セク経営になり、特急料金収入が無いため苦しい経営を強いられていて、第三セクターのほとんどが赤字経営に陥ってます。赤字を減らすために運賃が値上げされ、利用者の負担が増しています。地方の在来線利用者が負担をかぶることにより間接的に新幹線運営会社の利益を押し上げているのです。

一方が赤字に苦しんでいるのに、一方は大儲けしているという構図は社会的にも良くないことだと思います。赤字と大儲けの原因が、分割民営化時の分割のしかたや政府与党申し合わせの忖度に起因しているとしたら、碓氷峠廃線20年、JR発足30年の節目を機会に検証して問題を洗い出し格差是正を行うべきです。新幹線開通と引き替えに並行在来線を経営分離する条項を廃止しても良いと思います。

JR三社の年間7600億円の純利益に対して、JR北海道の赤字は、398億円(平成29年3月期連結)、JR四国の赤字は、101億円(平成29年3月期連結)、因みに碓氷峠の鉄道を維持するための年間の赤字額は、当時のJRの試算では、EF63使用で10億円ということで廃線になりましたが、補機を使わない車両であれば半分以下で済むと言われています。

2017年3月期の決算ではJR東日本の営業利益4663億円、純利益2779億円です。
碓氷峠が廃線になる前の1997年3月期の決算では、営業利益3834億円、純利益577億円です。この20年間で経営が危惧されるような決算は一つもありません。これら決算の数字は、政府与党申し合わせの「在来線経営分離」が本当に必要且つ妥当だったのかと疑念を持つくらい利益を上げているのです。









最近5年間のJR三社の利益を見てみましょう



◆平成29年3月期決算             (単位;百万円)
会社名 営業利益 経常利益 当期純利益 備 考
JR東日本 466,309 412,311 277,925 平成28年3月に北海道新幹線新函館北斗間まで開業
JR東海 619,564 563,973 392,913  
JR西日本 176392 160,783 91,288  
三社合計 1,262,265 1,137,067 762,126  




◆平成28年3月期決算             (単位;百万円)
会社名 営業利益 経常利益 当期純利益 備 考
JR東日本 487,821 428,902 245,309 平成27年3月に北陸新幹線金沢まで開業(上越妙高が境界)
JR東海 578,677 511,455 337,440  
JR西日本 181,539 162,260 85,868 平成27年3月に北陸新幹線金沢まで開業(上越妙高が境界)
三社合計 1,248,037 1,102,617 668,617  




◆平成27年3月期決算             (単位;百万円)
会社名 営業利益 経常利益 当期純利益 備 考
JR東日本 427,521 361,977 180,397  
JR東海 506,598 428,134 164,134  
JR西日本 139,774 121,999 66,712  
三社合計 1,073,893 912,110 411,243  




◆平成26年3月期決算             (単位;百万円)
会社名 営業利益 経常利益 当期純利益 備 考
JR東日本 406,793 332,518 199,939  
JR東海 494,612 404,260 255,686  
JR西日本 134,593 112,961 65,640  
三社合計 1,035,998 849,739 521,265 営業利益一兆円超える




◆平成25年3月期決算             (単位;百万円)
会社名 営業利益 経常利益 当期純利益 備 考
JR東日本 397,562 317,487 175,384  
JR東海 426,142 328,099 199,971  
JR西日本 129,497 104,671 60,198  
三社合計 953,201 750,257 435,553  
 


新幹線を運営する会社の利益について
新幹線料金は、従来の在来線特急料金よりもかなり高くなっています。新幹線開通で料金収入が増大するのと同時に、経費のかかる在来線を運行しなくても良いことにより出費が無くなり、相乗効果で双子の儲けとなって利益を押し上げているのです。区間により在来線特急扱いになるミニ新幹線では、全車を指定席にするという姑息な手段まで使って利益アップを図っています。






【参考資料】平成29年3月期決算短信から利益の部分を抜粋 




【JR東日本 平成29年3月期決算】
JR東日本H29決算

JR東日本のサイトで1997年まで遡って各年の決算を見ることが出来ます。
http://www.jreast.co.jp/investor/financial/


【JR東海 平成29年3月期決算】
JR東海H29決算

JR東海のサイトで1997年まで遡って各年の決算を見ることが出来ます。
http://company.jr-central.co.jp/ir/brief-announcement/


【JR西日本 平成29年3月期決算】
JR西日本H29決算

JR西日本のサイトで2002年まで遡って各年の決算を見ることが出来ます。
https://www.westjr.co.jp/company/ir/library/earnings/







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