信越本線横川-軽井沢間を廃止しないで維持するためには、JRの見積では、年間10億円の赤字になると言われてました。試算の内容は開示されてませんので、想像になりますが、見積条件としては従来通り補助機関車EF63を使用して169系の普通列車3両編成を押し上げる方式で、1日の便数も廃線前の往復7便とする条件での見積と推測してます。
EF63の運用については、電車に連結したままで、横川-軽井沢間を往復する方式か、高崎方面から来た普通列車に連結して押し上げる方式まで想定していたのか、運用のしかたは不明です。
そもそも、経費をいかに安く抑えようかという主旨の綿密な見積ではなく、碓氷線を廃止にする理由付けの一つとしての年間赤字額10億円を印象づける花火のような大雑把な見積だと推測されます。
JRの試算に対して、群馬県が検討した試算は確度が上がっていると思われます。方式としては、補助機関車EF63は使用しないで、自力登坂可能な登山電車方式の車両を使用して年間4億円の赤字になるとの見通しでした。しかし、新たな車両が必要で、初期投資額が110億~150億円必要だと言うことが判り、群馬県は鉄路存続を断念しました。
見積の断片的な情報は得られていますが、試算した計算式等の詳細なデーターは入手出来ておりません。
碓氷峠の廃線から20年の月日が流れ、世の中の技術は進歩しました。今日の技術を持ってして、碓氷峠の鉄路維持費を試算すれば、赤字幅はかなり圧縮できるのではないかと推測できます。費用節減に繋がる新しい技術としては、
1.架線の要らない蓄電池式電車
JR東日本のACCUMのような蓄電池式電車では、架線も変電設備も要りません。横川駅と軽井沢駅で既存の架線から充電すれば、給電のための新たな設備投資も不要です。架線を維持するための人員もメンテナンス費用も要りません。
2.電気料金につて
20年前と比べれば電車は省エネになっています。蓄電池式車両では回生エネルギーが利用できます。峠を下る時に発電して蓄電すれば、電力消費量は20年前の見積よりは格段に小さくなるはずです。
3.登坂能力66.7‰への見通し
蓄電池式電車のACCUMのような車両で登坂能力が高い仕様のものは改造で対応可能と推測されます。LRTや路面電車では80‰の登坂能力があるものもあるそうです。電気自動車のレールバスなども出てくるでしょうから碓氷峠に運行できる車両も出現する可能性は大だと思われます。
4.クルーズトレインへの期待
豪華なクルーズトレインがたくさん出現していますが、四季島のように架線のない区間を走れる車両もあります。登坂性能は不明ですが、66.7‰を登れる車両が出現すれば価値ある碓氷峠クルーズも夢ではありません。線路使用料も期待できます。
見積者 | JR東日本 | 群馬県 | ? |
年間赤字予測 | 10億円 | 4億円 | ?円 |
見積時期 | 1990年頃 | 1995年頃 | 2017年以降 |
車両の方式 | 補助機関車EF63重連+169系電車3両編成 | 登山電車型車両 (補助機関車は使用せず。箱根登山鉄道のイメージで。) | 蓄電池型電車 JR東日本の「ACCUM」のイメージ |
車両イメージ図 | ![]() |
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車両重量 | EF63 108t 169 40t |
モハ2型 33.3t | 37.7t |
電動機出力 | EF63 425KW×6 169 120KW |
95KW | 95KW |
電気代 | 大 | 中 | 小 |
架線/変電設備 | 架線と変電設備が必要 | 架線と変電設備が必要 | 架線と変電設備が不要。(駅で既存の架線から充電。) |
人員 | 補助機関車の運転、整備の人員が必要。架線維持の人員が必要。 |
架線維持の人員が必要。 | 架線維持の人員が不要。 |
新規投資額 | 新規車両導入に初期投資が110 億~150億必要 | 蓄電池駆動車両は実現しているが碓氷峠にそのまま使える車両は、まだ無い。改造または新規開発が必要。 | |
備考/付帯条件等 | 年間赤字10億円の詳細な試算方法は不明。 | 自力登坂可能な登山電車型車両を新規導入。運賃を大人500円に値上げ。廃止前と同じ1日上下各7便を運行する条件で見積。 | 碓氷峠用に改造が必要と思われるが、概略の費用試算は可能と思われる。 |
1987年の国鉄分割民営化から30年、1997年の信越本線碓氷峠の廃線から20年を経て今日の技術で碓氷線を再開した場合のコスト試算をやってみる価値はあると思います。試算の結果、赤字がかなり圧縮できるようであれば、鉄路復活を考えるべきだと思います。
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