2001.9.30 sun
大阪城ホール

 昨日の(前方で見たため)頭マッシロ、胸ドキドキで肝心の音を今ひとつ覚えてない状態を反省し、音に全てを傾けることにする。席も天井に限りなく近いスタンドだし。

 ということで、前座のクリニックの音も今日は心地よく耳に入ってくる。大阪城ホールでは、アンバランスなローファイな音なんだけど、稀妙な引っ掛かりをもった構成で面白い。マスクをしたまま唄うボーカルといい、ちょっと異形なユーモアがある。クアトロあたりでもう一度聴いてみたい。

 クリニックも終わっていよいよレディオヘッドってとき、急にトイレに行きたくなりダッシュで走る。そして、用を足してる時にフッと考えた。こんなに胸が高鳴るライブって何年ぶりだろう? 楽しみにしてるライブも、楽しかったライブもいつもたくさんある。けど、はじまる前に緊張のあまりトイレに行きたくなるなんて・・・原点回帰。初期衝動。へんな話だけど、個人的な理由で最近音楽を聴いてなかった私を、音楽に戻したした瞬間はこのトイレの中かもしれない。

 昨日同様「THE NATIONAL ANTHEM」のローブローのようなベースで幕が開く。今日は、どこかで収集してきたと思われる日本のラジオ・TVの音がサンプリングされていた。相変わらずの、彼らの音に対する探求心というか好奇心の強さに感心させられる。この日、私のピークは4曲目の「Karma Police」だった。シーンと静まりかえった会場の中、トムの声だけがオーディエンス1人、1人に語りかける。トムは歌が上手い。前から感じてはいたけど今日は特に強く感じる。優しく、力強く、そしてオーディエンスにまっすぐに届く声と歌。憎しみとか悲しみとかの感情が伝わるだけではない、誇張して言うと一種の生命体みたいだ。「This is What you get?」昨日はCDと同じメロディで唄ってたトムは、今日はを語りかけるように、優しく質問を投げかけるように語尾を上げて唄っている〜これがオチか?〜。いや、違う。多分違う。またもや、泣きながら私はそう思っていた。オチなんて死ぬまでこないんだよ、きっと。

 このライブでもトムはよく喋ったのだけど、トムの日本語の発音の良さには驚かされる。多分、耳がすごく良いのだと思のだけど、向こうのアーティストが日本に来て言う「あ〜りが〜とっ(↑↓→↑)」というような、英語イントネーションはなく、ほとんど完璧に近いネイティブな発音。(余談だけど、ジョニーは日本語の響きが好きで日本語を勉強し、そのうえ読み書きにも興味があるとか。だからアタックNo,1仕様のギターなのか?)今日は、その日本語に大阪弁がくわわってて笑えた。正常と狂気の間を行き来するような、歪んだ世界観をかもし出し、ホールを今を表現する混沌の音で支配した直後に「おおきに」と、これまたよく出来た発音で言われると・・・。ちょっと、ズッコケる。しかし、これが今の彼等の雰囲気であり、許容量の広さなんだろう。オーディエンスもメンバーも幸せな笑いがこぼれ落ちる。

 そしてアンコール、オーディエンスの盛り上がりを一気に爆発させるイントロが流れる「Just」!!!!昨日のリクエストを聞き入れたわけではないだろうけど、みんながやって欲しいと願い、でも諦めていた曲(それの1位は当然「クリープ」だろうけど)を彼等はやってくれた。「むちゃ嬉しすぎる!」そんなオーディエンスの思いが溢れる中、ディストーションギターは気持ちよくかき鳴らされる。“あぁ、レディオヘッドは私達ファンに逢いに来てくれたんだ”そう素直に感じ、感極まる。やっぱり彼等は生々しい人間で、言いたいメッセージを叫べるロックバンドだ。この場所にいることが、なんて気持ちのよいことか。「生きてて良かった」鼻血でそうなクサイことも今なら真剣に言える。私も単純ハッピーなアホだ(笑)。

 2度目のアンコールには、この曲をブッシュに捧げると告げCANのカヴァ−「The Thief(こそ泥)」を披露。政治や社会情勢にも敏感な彼等だから、テロについてなんらかのメッセージはあると思っていたが、彼等はあくまでミュージシャンとして、真摯に自分達の意志を伝えた。そんな思いはブッシュに届くわけもなく、報復は始まった。暴力は暴力しか生まず、どんな状況でも“人を殺す行為”に正統性はないのに・・・。
ラストの「The Tourist」が美しく流れるなか、オーディエンスの中では様々な思いが交差し、整理できない感情がモヤモヤと広がっていくのを感じてたのではないだろうか。「Hey men slow down」このトムの優しいつぶやきを、誰かに伝えたいと思ったのは私だけではないはずだ。 text by 浦山



 30日は、2階のスタンド席だったので、1階8列目だった昨日よりは騒がず、じっくりライブを聴いた。昨日と同じく大声援で迎えられ、曲目も替えてきて、日本語でのMCもかなり増えていた。最初からバンドも観客のテンションも高いままアンコールに入り盛り上がりは最高潮に。大阪の2日目を1日目より良かったという声は多く、私も演奏そのものだけを考えたら2日目のほうがレディオヘッドらしい完璧さやダイナミズムを感じた。反面、音の感触はCDに近い感じで1日目に体験したようなポジティブでプリミティブなパワーはあまり伝わってこない印象も受けた。でもこれは自分がライブをどこの席で聴いたか関係するので、ステージに近い良い席で見た場合のほうが、よりダイレクトに感じるだろうから、簡単には比較できないけど私は1日目ほうが良かった。30日はアンコールに「・・・ブッシュに捧げる」と明らかに彼らの曲じゃない、パンクっぽいな変わった曲を演奏。(後から知ったけどカンの曲らしい)どうきいてもブッシュを讃える曲調じゃないし、彼らがはっきりとアフガニスタンへの報復戦争に反対している事がわかったのと、それを大阪で音楽で伝えてくれてうれしかった。テロも報復も不毛だ。死ぬのは結局関係のない人達なのだから。自分だって巻き込まれるかもしれない。そんなのゴメンだから。

 何言ったって変わらない、世界は悪くなる一方で、できることと言えば今のウチに楽しんでおく事ぐらいなのかもしれない。権力のある奴に適当に合わせて無駄な労力を使わずに。でもできない。やっぱり。だから辛くなったりシンドクくなったり。逆らって疲れてボロボロになってもほんとうに大切な人達のところへ、そしてレディオヘッドのところへトムの歌声の中に帰って行けばいいんだと思う。そして元気になったらまた向かっていく!きっと、死ぬまでその繰り返しでいいんだと思う。

 前回の大阪厚生年金で見たライブも素晴らしいものだった。正直、私がレディオヘッドが好きになったのはこのライブを見た後だから。『OKコンピューター』の世界を完璧に表現し、誰もがただ呆然と立ちつくしてていた。今回もライティングからして何ら手抜きのないステージにファンも負けずに、暴れ回るわかではないけど、自分たちの思いを彼らにちゃんと伝え、それにレディオヘッドが反応して彼らのロック・バンドとしての特性が十分に発揮された理想的なライブになったと思う。個人的には無機質で聞いていて滅入るけど歌詞も曲も好きな[キッドA]の楽曲が、アグレッシブにロックに演奏されていたのはうれしかった。あと「ノー・サプライゼズ」が2回聴けたのは…はそれだけで最高の年!。

 私の勝手な想像だけど、彼らが実は非常に「熱い」バンドなのでは?。音はクールだけど底に流れるものは激しくて熱い。敵対(?)しているオアシスと本質的には一緒なのかもしれないと考えたりして。コアなファンには抗議されるかもしれないけど。(間違っていたらスイマセン) text by 矢野

セットリスト

1.National Anthem
2.Morning Bell
3.Lucky
4.Karma Police
5.In Limbo
6.My Iron Lung
7.Climbing Up The Walls
8.Exit Music
9.No Surprises
10.Dollars And Cents
11.Fake Plastic Trees
12.I Might Be Wrong
13.Pyramid Song
14.Paranoid Android
15.Idioteque
16.Everything In Its Right Place
<アンコール1>
17.Permanent Daylight
18.Just
19.You And Whose Army
20.How To Disappear Completely
<アンコール2>
21.The Thief
22.The Tourist


| radio head

| Top | News | LiveDiscFuji Rock映画エッセイモニターにその他真・雅掲示板Link |