奥田民生

2000.5.29.mon
京都会館第一ホール


text by 浦山

 

 インタビュー(ROCKIN'ON JAPAN 2月号)で本人も言ってることだけど、99年のフジロック出演後から民生の音に対する姿勢は明らかに変わってきている。簡単に言えば、「戦闘体制に入った」ということだと思う。“股旅ツアー”でやってた(その時点での)新曲やシングル“月に吠えろ”を入れてない最新アルバム、『GOLDBLEND』の音を聞いてもそれはよくわかる。それ以前の『股旅』やパフィ−のプロデュースに代表される、表面「トロ〜ンとしててノホホ〜ン」なスタンスも、独自のリズムで嫌いではないんだけど、それを逃げ道として(ニール・ヤング風とか言って)老成したロックやられても困るなぁ〜と思ってたから、今の民生は大歓迎だ。(「身を削って生き急いでないアーティストのCDは買う価値ナシ」といのが私の勝手な持論。)

 そして、ライヴ。自ら「YMOみたいな」と表現したセットは、ステージのバックヤードをそのまま見せてるだけのシンプルなもの。その中で唄う民生はロック全開。登場から何も言わず3曲たて続けにギターかき鳴らし吠えたてる姿は、今までに見たことない救心力を持ったロック・ミュージシャン然とした佇まい。『GOLDBLEND』の1曲目“荒野を行く”を聞ききながら、「70年代のロックがまだピュアで新鮮なものとして成り立ってた時の音って、こうゆうテンションの高さがあったんじゃないかなぁ」なんて感じたりして。(←当然、知らない時代のことなので、想像の粋はでてませんが。)と、私のテンションもめらめら上がっていったのですが・・・なんかね、周りのオーディエンスはどう着いて行っていいのか戸惑ってる様子でした。正直、盛り上がっているとは思えない。(←特に私のいた1階の前の方では。)曲間やMCの時には、盛り上がるんだけどねぇ・・・。民生も「これは京風なんですか?」と、冗談とも皮肉にも聞こえるようなこと言ってたけど。でも、これが今の民生の状況なのだと思う。アーティストとファンの温度差の違い。別に「ロック温度が高いから良いオーディエンスになれる」なんて言ってるわけじゃない。聞く耳と動きを捉える目は、みんな持っていると思う。でも、今の民生の音は、「ただ、感じろ」って風に私には聞こえる。身を任せて体を揺らせば、トランス入れるくらい勢いのある強い音が会館の中に充満していた。そこには「キャー!タミオ!」って叫ぶ意外の何かがある、と私は思うんだけどね。お節介だけど。

 とはいえ、(民生が)サックスを吹いたり、(ベースの根岸さんが)スカイウォーカーで演奏したりと、いつもの遊び心も忘れてはいない構成で、最後にはみんな盛り上がりて幕を閉じたのでした。こういう所は、やはりベテランの上手さかな。個人的に言えば、余興はいらない気がするけどね。

 『GOLDBLEND』最後の曲“トロフィー”で「僕は先に行く」と唄う民生。その言葉どうり、「このまま行けるところまで行ってやる」という意志の音を感じた今回のライヴ。くどいようだけど、大歓迎だ!


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