STEREOLAB

 2002.3.12.tue

 OSAKA BIG CAT

聴かず嫌いはソンをします



 シカゴを中心とする音響派やポストロックの前衛的な音に敷居の高さを感じ、ちょっと二の足を踏んでしまうのは私だけだろうか?豊富な音楽知識を詰め込んだ脳ミソをもってないと理解できなさそうで(イヤ本当はそんなことはないんだけど)、私は今まで聴いてこなかった。そんな感じだからトータスのジョン・マッケンタイアがプロデュースするステレオラブというバンドも、オシャレで、洗練されていて、小難しいという勝手なイメージもっていたのだけど、今回のライブでそんなイメージはキレイに払拭された。いやぁ、イメージ先行の聴かず嫌いはダメだな。

 会場のBIG CATに着いた19:00前、開演直前だというのに観客に緊張感はなく、各々ビール片手に談笑しながらくつろいでまっている。最近インキュバスにケミカルとギュウギュウ詰めの会場でテンパった観客ばかりみてたから、この温さに拍子抜けしつつもゆっくり落ち着いて待ち時間を楽しむ。こういう時に飲むビールってやたらとおいしいんだよね。音楽を生活の一部として満喫するライブ前の余裕を久し振りに味わった。

 19時過ぎにゲストのspeedometerが登場し、和楽のような美しいリズムが耳に届いてきた。勉強不足で申し訳ないけど、私は全然知らないアーティスト。Macに向かってなにやら打ち込んでる姿は地味なんだけど、会場に反響するブレイクビーツは爽快で、音圧による振動の波紋が身体に気持ちよく広がっていく。ステージにホアッと浮かぶラップトップのアップルマークも美しく、シャレた装飾もなにもないのにステージに優美な風景が浮かび上がる。だけど、こういう音って感覚一発みたいなところがあって、最初の音がスムーズに体に入ってくると一気にその音の風景に入り込めるんだけど、ノリきれず取り残されると、もうどうしたらいいもんだか…って戸惑い立ちつくしてしまう。今回は残念ながら後者の方が多かったように感じた。例えば映像を使うとか、照明を凝るとかで音の世界に浸る入り口を作ってやればもっと楽しめた気がするんだけど、ちょっと惜しい気がしたのは私だけかな?

 そして、いよいよステレオラブの登場。結論から先にいってしまうと、最初に書いた私の勝手なイメージを気持ちよ〜く裏切ってくれたハートウォーミングなライブだった。小難しい音なんてどこにもない、60sや70sポップスにも通じるようなキラキラ夢見ポップの優しいメロディと、しっかりと地に足をつけたバンドのハーモニーが清々しい空気を生み、心身をリフレッシュさせていった。こんな素直で気持ちいいライブをするバンドだったなんて…こういうライブならではの嬉しい誤算は大歓迎!なにひとつ楽曲を知らない私でもすんなりと彼等のポップワールドで遊べた。

 ピコピコとしたエレクトロニックな音の重なりとアンニュイなボーカルが作り上げるファンタジックなサウンドは、独自の世界観を形成するけど、その音を聞き込んでない一見さんにはノリにくい。その入り口を、今回はギターを軸にしたギターロック的なアプローチをすることで、クリアしてるように感じた。ホーンなどの生楽器と合わせることで、さらに人の手仕事のような丁寧さと温かさが増し、細胞のひとつひとつを溶きほぐしていく。

 すごく分かりにくい表現をさせてもらって申し訳ないけど、そのサウンドからはひと昔前の実写アニメのロボットみたいな印象を受けた。可愛らしく、かつ素朴でプリミティブ。音響派の視点から見てるファンの人には怒られそうだけど、音のアンサンブルが微妙にギコチないのよ。ズレてるわけでもなく、しっかりとした調和を保ちつつどこか不思議にギコチない。それはもしかしたら彼等のパーソナルな魅力なのかもしれないけど、単に耳障りのよいBGMとなってしまいそうな美しいメロディーに、独自の個性をもたせるギコチなさがたまなく甘美に鳴り渡っていた。

 しかし名は体を表すというか、バンド名も音を表すというか、なんともSTEREOLAB なライブだった。人の手(および好奇心)によってLABで試される音の実験は、観客とバンドとのコミュニケーションによって生まれるライブの反応を楽しむことにもつながっている。観客とともにその反応を楽しもうとする誠実な姿勢は、果てしなく純粋なモノのようにも思えた。ナナメに見ると確信犯か?とも取れるんだけど、1曲ごとにメンバー同志で音を確認しあい、歌い終わるとはにかんだ笑顔で「メルシー」と口にする実直さから生まれた、晴れやかで優しいライブは、音楽を純粋に愛するLABのココロと、長いキャリアを積んだライブバンドの実力を感じさせた。 text by 浦山


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