異端の王子ここに君臨!
セカンドの『ORIGIN OF SYMMETY』で、21世紀のスペースオペラをリアルな爆音で鳴り響かせたミューズ。内省とセンチに走るUKの新しい救世主なんだか、単なる勘違い大バカなんだか判んないスケールのでかいその異端さが私のロックココロを高揚させて毎日聞いていた。そんなワクワクはみんな同じらしく、ここ大阪のIMPのライブは10分でソールドアウト。並んでも手に入らなかった私は、ネットを通じてやっとのことで買うことができた。
整理番号が遅かったからIMPに入れたのは開演15分前。オーディエンスのタイプは見事にバラバラで、年齢層も幅広い。人気の高さを改めて感じた。そんな会場に響くSEが、レッチリ、ニルヴァーナ、スマパン、レイジ。それも代表曲のオンパレード。大好きな曲ばかりだけど、あまりのベタさに「おいおい田舎のロック少年並みやで」とツッコミを入れたくなる。だけど後から考えると、このベタな選曲がこのライブのスタンスを表していたのかも。
レイジの『BULLS ON PARADE』の終了と同時に客電が落ち、壮大な物語りのはじまりを感じさせるナレーションが流れ、ステージの2つのスクリーンにシルエットが浮かび上がる。これからはじまるロックショウにオーディエンスの期待感が最高潮に達したオイオイコールの中、メンバー登場。新曲(?)らしい曲をかき鳴らす。これが、さっきまでのSEのレイジと見事にリンクしてるのには笑った。ギター同じだよ。狙ってるのか、タマタマなのか判んないけど。
そんな中、オーディエンスは跳び狂い、ひたすら立てノリ。変則リズムの跳びにくそうな曲にも立てノリ。「え〜っこの曲でも立ノリなわけ?」と最初面喰らったりもしたのだが、私もいつの間にか前に跳んで行って、跳んでる。この単純に盛り上がれるノリ、ヘビィロックだわ。内省も鬱積も、エモーショナルなギターと美しいメロディの勢いで直接的な感情の吐き出しと攻撃性にシフトし、オーティエンスの発散する熱気と共振する。(だけど今回の音響は小さめだった?場所によって音鳴りも違ったし。その分、素直に耳に入ってはきたけど。)ミューズが出てきた頃、レディオヘッドに似てるって叩かれたりしたけど、ライブを聴くと、音の立ち位置の違いをすごく感じる。高度な演奏力と演出力。そして心に響く声をもった、歌の上手いボーカルがいるということは同じだけど、ミューズは、突発的で直情的な感じ。子供がおもちゃ箱をひっくり返すように、今やりたい、今出したい音をぶちまけ、オーディエンスと共有する。だって、まだライブの中盤なのにギター壊して客席に投げるんだもん、気持ちの赴くままとしか思えない。
それにしてもフロントマンであるマシュー、可笑しい。今どき髪の毛をツンツンに立てて、ライトハンド奏法(って今でもいうのか?)するのもブッ跳んでるが、アンプの上で飛び跳ねまくったかと思うと妙にキメキメのポーズをとる。(その様式美はある意味メタルっぽい。)もう笑うしかない異端のロック王子っぷり。極めつけは、『Feeling Good』で噂の自作紙吹雪を自分に降らす自爆スレスレの演出。だけど、それが古めかしくなく今の求めるものにリンクできるのは、自分の好きなことを信じられるカッコよさなんだろうな。それと確かな演奏能力。3ピースでも、あそこまで深い音が出せるんなんて、バンドの可能性って無限だな。
今日はツアーの最終日ということもあるのか、終盤は曲のバランスなどおかまいなしにやりたい放題。それが、ここでしか味わえない刹那な音となって曲の力強さをさらに加速させる。デタラメなギターで大合唱する『plug in baby』の気持ちよさったら! 巨大な風船が投げ込まれ、客席を泳いだ風船がステージに辿り着くと、メンバーが風船を割り中の銀紙吹雪がステージにキラキラと舞う粋な演出でクライマックスを盛大に迎えた後、嬉しい言葉が飛び出した。クリスの24歳(?)の誕生日とツアー最終日を祝うMCの後、「次はフジロックで逢おう」と発表! 気は早いけど、澄みきった野外の空気に幻想的に響くであろうフジのライブに今から心躍る。ラストは最後の大盛り上がり大会となり、メンバー&スタッフがドラムにダイブして終了。マシューはその後も「アンコールんかあるもんか」とばかりドラムをとことん破壊。実に楽しそうな笑顔と狂気が入ったむちゃくちゃな高テンションで、最後の最後はメンバー全員で客席にダイヴ!ダイヴ!ダイヴ!もう、なんでもアリの曝走。ロックも、クラシックも、メタルも、ヘビィロックも、何もかもを混ぜ合わせた新しいパワーロックライブ。音楽もバンドも常に進化しつづけてる。だから音楽ファンはやめられない。 text by 浦山
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