オットコ前ロックぅ〜!!!


 やっとたどり着いた19:00前、会場の扉を開けると溢れだすほどの人と汗のにおいが襲ってきた。すでに期待感で膨れあがった空気が異様なテンションになっている。始まる前からこれだと、ちょっとヤバイかなと思いながらも前に突き進んでいった。今回はどうしても前で見たかった。理由はいくつかあって、ひとつは単純に暴れて発散するミクスチャーロックからいち早く抜け出し、1段も2段もステップアップした彼等の音をキッズ達はどのように楽しのか期待してたこと、そして最大の理由は旬なバンドの勢いを近くで感じたかった。旬のバンドが持つオーラのようなパワーを感じられるライブってロックファンやってて良かった〜って思える至極の時だから、こういうタイミングは逃したくない。

 オーディエンスの期待感で窒息しそうな19:00すぎ、客電が落ちてオイコールを上がる。お決まりの“オイコール”にちょっと違和感を覚えるほど、ラフにメンバーが登場。最後にキャーと高いのノイズが響き渡るとボーカルのブランドンが登場してきた。白いシャツに黒いネクタイ姿(余談だけど、なんで海外のアーティストってネクタイ締めるんだろう?レッチリのアンソニーとか、レディへのトムとか)、うひゃぁ〜やっぱりカッコイイわ♪ 間近で見ると、均整のとれたスタイルやライトに映し出される顔が本当にキレイ。それは女子だけでなくキッズも同じように魅かれるらしく隣の男の子は「カッコよすぎ!」と何回も繰り返していた。目の当たりにするまでは、その男前さがこのバンドを正当に評価するのに邪魔になってないのだろうか?とも思っていたけど、違っていた。ブランドンには“こんな男になりたい”という指針をしめすスタイルがある。それはやはり、このバンドの魅力のひとつだと思う。

 前半は去年発売された3rd『Morming View』の曲を中心に、しっかりと厚い演奏力がぐいぐいと引きつけ一気にバンドの勢いに乗せていく。私は車をもってないけど、この『Morming View』はドライブするときに聴くと気持ちいいと思っている。アルバム全体に解放感と疾走感があり、曲順の心地よい流れに身を任すと最後にはスゥーと一筋が光り目指す道筋が見えるような感覚につながる。その感覚はライブでも同じだった。演奏に導かれて気持ちは高揚し、ブランドンの延びる声がその次の高みへと運ん
でいく。少し冷たくて強い、それでいて爽やかな風を感じているような気持ちよさ。それは彼等を生んだカルフォルニアの空気がそうさせるものなのだろうか? ライブでピョンピョン跳ねながら“アメリカって広いんだろうな”なんてフッと考えていたんだけど、たくさんの歴史や人種が共存する文化のクロスオーバーは、単一民俗の私たちには想像できない拡がりがあるように思う。民俗楽器やリズムを取入れたりする単純なミクスチャーではない、ルーツも政治も飛び越えたどん欲な垣根のなさが大きさと気持ちよさを感じさせるのかもしれない。

 甘美でそして心地よく吹き抜ける力強い流れを最大に受けたクライマックスは中盤のアコースティックセットだった。セット2曲目に演奏された「Drive」。マイクのギターでひとつひとつの言葉を噛みしめるように唄うブランドン。その透き通った声が体に浸透してサァーっと鳥肌が立つ。ちょっと泣きそうになる。サビはみんなの大合唱「So whatever tomorrow bring,I'll be there」。洋楽でのこんな大合唱をoasis以外で聴いたのは始めてかも。彼等のメッセージは単純でわかりやすい。ともすればダサくなってしまうそのメッセージを素直にとらえ、明日への勇気とできるのは一貫したメンバーの姿勢とパワーがあるからかな。

 バンドのメンバーが戻った終盤は、キッズたち暴れろ!とばかりにイキのいい曲がたたみかける。ちょっとハイパーな『S.C.I.E.N.C.E』からの曲などを、息をつかせず爆走。DJキルモアのスクラッチが小気味いいアクセントとなって飛び跳ねる私の足も軽い、軽い。ダイブと汗と叫び声の中、投げキッスと満面の笑顔で消えていった。「see you soon」という言葉を残して・・・。

 空のステージに向かいアンコールを求めるオーディエンス。しかし、彼等は現れなかった。当然、アンコールがあるものの考えていた私たちに消化不良さが残る。(実際、セットリストには「Pardon Me」などの曲が予定されていたそうだ。)1時間弱のライブに「不完全燃焼」と感じてるオーディエンスも多かったようにも思う。この日、ブランドンは風邪をひいたかなにかで体調不良だったらしい。(ライブ前に出演したラジオ番組にも、ブランドンだけ出席してなく、メンバー達が空いた時間に京都に行って抹茶を飲んだり楽しんでいた頃、ホテルで寝ていたそうだ。)ライブでの声の延びは本調子でないように感じ、一部キーを下げて唄っていたようだった。けど、私自身は満足できてないか?いや、そんなことはない。いいライブだった。なにより、彼等はまっすぐに私たちに向かってきていた。その時の状態が映し出されるのがライブだと思う。私が彼等のファンだから甘くなっていのかもしれないけど、今の状態でベストを尽くす姿はやはり心に響いた。ただ、やはりアナウンスはするべき。あれだけの人が長い時間アンコールを待ってるのだから。

 次のライブを「see you soon」という言葉に期待してまっていたい。 text by 浦山

 
 incubus

 2002.2.25.mon

 zepp osaka

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