BURNARD BATTLER

2000.2.24.thu
大阪IMPホール



text by 浦山

 


 景気の悪い話ばかりが耳に入るようになった少し前から、「癒し」という言葉を良く聞くようになった。「癒しの本」癒しの色」癒しの食べ物」・・・。去年行った旅行先には「癒しの道」なんてのもあった。
けどなぁ、そんなの他のモノに求めるもんかな?なんか他力本願でイヤな気がするんだよなぁ。
 な〜んて大きなこと言っときながら、私はバーナード・バトラーのライヴに「癒されたい」と思っていた。年度末に伴うハードワークとストレスの中、帰って聴く彼のソロデビューアルバム『people move on』は、「よくがんばった」って耳もとで囁いてくれているようで、疲れた身体を癒してくれてた。

 そして、今回もやっぱり彼は、そんな私の甘い下心を、心地よく裏切ってくれた。

 2ndアルバムの『friends and lovers』から幕を開けたライヴは、しっかりと深いバンドの音で構成された、逞しささえ感じる強いライヴだった。彼のライヴを見るのは、一昨年のクアトロ、去年のフジフェスと今回で3回目なんだけど、ライヴごと確実に大きく力強くなっていってることを感じる。見た目の折れそうな細い身体と美しい顔で「繊細王子」的なイメージを持たれがちだけど、実は自己中心型「頑固ロックギターリスト」だったりするバーナード。暴走気味に走るギターは、良い意味で自己陶酔・自己顕示欲が誇示されていて、彼独自の音の世界に引き込んでいく。弾き初めの少年のように終始ギターをかき鳴らし、弾きはじめるとマイワールドに入っていって出てこない、そんなギターリストエゴも見えてなんだか楽しくなる。「バーナードって、絶対性格悪いよね〜」なんて勝手に思ったり(笑)。(←悪気はないです。ロック・スター必須アイテムですから。)
 
 1st、2ndをバランスよく配置した構成。そのライヴは、押しつけるでも、引き離すでもなく、ステージと客席を居心地のいい距離感でつないでいる。日常のトナリにある音。そんな音なのかな?と思う。世界を一変する強烈な個性があるわけではないけど、気がつくと心の片隅にある音。本編ラストの『not alone』で、そのことを一番強く感じた。「この曲を聴きたいが為にこのライヴに来た」と言ってもいいほど大好きなこの曲。ステージから降りそそいでくる音は、キラキラと光る結晶になって客席を包み込みこんでいく。天気の良い日に公園のベンチに座ってボーっとしてると「生きてるっていいなぁ」なんて思うような、単純で小さな感動。この曲にはそんな感動がたくさんつまっていて、幸せで勇気がです。

 アンコールのアコースティックバージョンの『my domain 』『woman I know 』。そしてラスト、バンド形式に戻っての『stay』。美しく力強い笑顔で去っていったバーナードの後ろ姿を見つめながら、「生きてるっていいなぁ」なんて単純に感動している自分がいた。
 単純で小さな感動。それをつなぎ合わせて私達は生きている。他力な「癒し」なんて必要ない。自分の力で復活できる力を持っているのだから。


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