BECK

2000.5.17.WED
大阪城ホール


 

  開演前に一緒に行ったBECKミーハーの矢野さん(←一緒にこのペーパーを作ってる人)が、「曲的に言うとハズレの方が多いかもしれない。最近のファンクノリもよーわからんって感じやし。けど、ベックでしか出せないなぁって音出してるからやっぱり好き」と言うのを聞いて、なるほどなぁ〜っと思った。ある種、BECKがやるから総べてOK!的な盲目的な発言に聞こえるけど、何をやってもBECK印のつく個性と完成度の高さは、やはり独自のモノを表現できる数少ない才能あるアーティストだと言えるし、その個性のままで、新しいものを欲して触覚をだしている音楽ファンも、なんとなく耳に入ってきた音を受け入れるだけの大衆も、全部ひっくるめて受けもつことは凄いことだと思う。(とはいえ、「BECK聴いとけばとりあえず大丈夫」的なエセ・サブカルのアイドルであることには間違いないと思うけど。)そういう意味では、BECKのベクトルがエンターテイメントの方に向くのは正しい(?)選択なのかな。そんなことを考えながら開演を待つ。

 「BECK、マジやぁ〜」っていうのが、今回のライヴの最初の感想。エンターテイトされたショウになる、というのは前情報としてあったんだけど、多分それは「エンターテイメントされたものをナナメに見たモノななんだろうな?」と勝手に思ってた。けど、そんな浅はかな読みはすぐに大ハズレ。BECK大真面目にエンターテイメントしてました。確かに、皮肉って力抜いて演られてもエンターテイメントに失礼だし、中途半端に終わることだと思う。けど、最初から、目の前で力一杯、盛り沢山のショウを見せられると、ちょっと引いてしまうものがあるのも確か。しかし、これまた、最初ピンとこなかった最新アルバムが後から結局ヘビーローテーションになってしまったように、すぐ彼のペースにまんまとハマりショウの中に引きずりこまれていってしまう。
「マジかよ〜」って思うほど、デコライティブな外枠に、細かいところまでこだわった中身。こんなちょっと歪んた構成が、いかにもBECKらしいと言えば、らしいんだけど。昔からある音やステージ演出の伝統を踏襲しつつも壊して組み立てる作業は、初見ではシニカルな目の位置でのことなのかな?と感じるんだけど、その完成度の高さから大真面目に取り組んでいることがわかる。「本当に音楽ファンなんだなぁ」と感じられて微笑ましかったり。

 中盤のベットが出てきて(天井から降りて来た)の1人芝居は、まんまプリンスでありながら、彼を皮肉ったように見えないのは、やっぱりそれが単なるモノマネでなく、敬意を払ってのリスペクトだからだと思う。そして、ステージに立ってるのはプリンスのコピーではない、まぎれもないBECK自身。“音楽と笑い”って、同じように必要性を持たれているものだけど、共存するのって意外と難しい。(バカ・バンドが、その存在だけで笑わすというのは割とある気がするけどね。←バカ・バンド大好き!)それを飛び道具ナシで演り、1万人近くの人を笑わして、「楽しかった!」と口々に言わす力量。恐れ入りました。BECKの勝利!オーディエンスから求められてるものと、自分のやりたいことの融合する場所のもって行き方の上手さは、やはり天性のものなのかな。

 にしても、BECK小さかったなぁ。今回、客席に降りてきてくれて、2列目の私は等身大の彼を確認することができたんたけど、162cmの私の目線と同じだった。アメリカでは多分、イジメられっ子だったんだろなぁ。ハンサムだけど、微妙にバランス悪いし。(←それが可愛いとの意見もあり)アコギシリーズでの“Nobody Not But My Oun”の出だしの歌詞を忘れた時に、「I can't・・・」と言ってたのがむちゃくちゃ可愛かったけど。text by 浦山


 最近の私はツイている。oasisは1列目、エレカシもライヴハウス磔磔で目の前で見れたし。そして、このBECK。今いるミュージシャンの中で、もっとも好きな人を2列目ど真ん中で見れることができたのだ。やっぱり、前は良い!後ろで見てても、良いライヴは良いライヴなんだけど、(前だと)顔も見れるし、もしかしたら触れるかも(キャー!)という期待もできる。しかし、もっとワクワクしてもよさそうな開演前、思ったよりウキウキしてこないのだ。原因は3rdアルバム『ミッドナイトバーチャルズ』のノーテンキ・ファンキー路線が気に入らないのと、今回のライヴが「ショウアップされたものになるらしい」という記事を読んだからだ。シンプルなoasisのライヴに感動したばかりだっただけに、果たして自分が(ショウアップされたライヴに)楽しめるのか、心配だった。実際、始まって2・3曲目までは、黒のタンクトップにブカブカパンツで(お馴染みの)ヘナチョコダンスをするベックを目の前にしても、ノリきれなかった。
演奏はCDとひけをとらないクオリティーだし、楽しいパフォーマンスなのに・・・。がっ、大好きな“ルザー”を聴いてから気持ちが和んだのか(?)、「楽しもうよ!」という空気にも馴染み始め、“ミッドナイトバーチャルズ”でプチン!と弾け、「やっぱり、楽しい!ベック最高!!」と跳ねてました。

 ミラーボールにベット、アフロのベースにヘビメタ崩れのキーボードとごちゃ混ぜのおかしさ。その開放感に浸り、笑って踊る。こんなにリラックスしてライヴを見れたのは初めてかも。洋楽の場合、椅子席は割と盛り上がらないのだけど、今日は周りの人達も楽しく踊っているし、声援も多い。いわゆる「黄色い声」が飛び交うのを聞いてると、ベックはアイドルなのだと再認識する。確かに金髪のハンサムで小動物みたいでかわいいけど、音楽事体はちょっとこ難しかったりするんだけど・・・。でも、それはとても正しい反応だと思う。シリアスでクオリティーの高いロックの提供しながら、同時にミーハー的な欲求に応えられるアイドルであることー、を両立していけるのが、優れたロックミュージシャンなのだから。好きな音楽を妥協せずに完璧に演りながら、楽しませる。今のベックはそうした数少ないミュージシャンの1人だ。

 バックも一体となってショウを盛り上げていた。下まで降りてきて席の上を歩くベース(触った!)、ワインを飲ますホーン、ベック本人も降りてきて前列と握手したりして・・・もう、怒濤のエンターテイメントショウ。ただ、普通のエンターテイメントショウと違うのは、「完璧なエンターテイメントショウ」を皮肉ってるところが随所に見られたこと。セット事体も手作りぽいところを残していた非ゴージャスだし(趣味は良いです)、ダンスや演出もプリンスやマドンナの真似ぽいところを見せ、「スターになってしまった自分」や周りの環境を笑いに転換してる感じがしたし。そして、それがベックのエンターテイメントショウなのだ。だから、私も楽しめたのだと思う。とはいえ、昔からのファンとしてはアコギで“Nobody Not But My Oun”を聴いている時が1番良かったかも。思いっきり歌詞忘れてたけど、凄く好きな歌だからうれしかった。彼の声と歌とギターの上手さが十分に味わえたし。ラストはお待ちかねの『オディレイ』からのヒット曲の連発。ファンキーノリから、一気にロック・ヒップホップノリへ。やっぱりこうじゃなきゃぁ!で、結論、「やっぱり、BECKはやめられない!」のでした。
text by 矢野

 


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