All That You Can't Leave Behind


U2

 

90年代を通したテクノへの接近を試みた三部作と、前作「POP」とワールドツアーの商業的失敗を経た後に、原点回帰のバンドサウンドは十分予想出来た事だし、多くのファンの望む事だろう。だから今作の事前の情報には、「ああ、やっぱり」と思ったし、と同時に長年のファンとしては「とうとうU2も枯れてしまったんだな」とも思った。

今作も発売してから買うまでに、少々時間がかかったし、買った時も「枯れていくU2も見届けるのもファンの務めだ」なんて、身勝手な思いでCDを手にしたもんだ。
だが!しかし!いいんだよ、このアルバムは!
まず何としても歌がいい。熱く誠実な言葉が美しいメロディーと共に唄われる。それだけの事が、こんなに感動的に響くのは、個人的にはオザケン「LIFE」以来だ。サウンドにしても、決して80年代のU2に戻った訳でなく、むしろ今までの彼らのクドサでもあったものが消え、前作では無理矢理入れたようなテクノ音が、爽やかなバンドサウンドを引き立たせる良い役目をしている。
今までU2を嫌いだった人にこそ聴いてもらいたいアルバムだ。
ゴスペル調のコーラスが感動的な"Stuck In A Moment You Can't Get Out Of"、いかにもU2、だがU2にしか絶対出来ないような熱い曲"Walk On"など、全盛時の名曲群に負けない様な曲が目白押しのアルバムだ。個人的にU2の最高傑作だ。最近はテクノやらヒップホップばっか聴いていて、ロックは全然聴いていない様な人たちには絶対聴いて欲しい。
僕もそうだったから。

もしかしたらU2はこのまま、この路線で行ってストーンズ化するのかもしれない。だが未だ彼らは枯れていない事を、このアルバムで示した。この後のツアーも含め、まだまだU2は目が離せない存在だ。text by 竹内知司

 

| home | menu |