花鳥風月     

スピッツ  

Text by 浦山

 

“春になるとスピッツを聴きたくなる”そう思うのは私だけじゃないはず。その事を本人達も自覚しているのか、彼等の新譜はいつも春に届けられる。そして今回も新譜ではないが、彼らの音が届けられた。マサムネが他のアーティストに書いた曲のセルフカバーと陽の目を見なかったカップリング曲。そして、発売した時にはまったく売れなかったが今はべらぼうに高値で売買されているインディー盤『ヒバリのこころ』からの名曲。とスピッツから季節はずれのお年玉を貰った気分だ。話ははじめに戻るけど、春ってあたたかくなって新しい何かがはじまりそうなワクワクとした季節。みたいなこと言われてるけど、案外そうでもない。新しい事が向こうからやってくるのは学生時代ぐらいなもんだし、それだって学校で強制的に新しい枠に入れられてるだけで、本人は全然ありがたくなかったりする。ドキドキ・ワクワクなんて迷惑な話だ。そんなの何処にでも転がっているわけじゃない。おいてけぼりを喰って1人拗ねて見る桜はやたらと心に染みる。そんな時に聴くスピッツは肌触りのよい毛布だ。感情より感覚に、心より五感に、頭より皮膚に働きかけてくる音は心地よく包み込んでくれる。私だけの宝物。こんなこと言うとなんだが、スピッツの音って共有するものじゃないと思う。ユニセックスなマサムネの声や、少し歪み気味のギターは小さなマイワールドを与えてくれて、「ネコになりた〜い♪」とか「君のおっぱいは世界一〜♪」とか「鳥になって〜♪」とかのフレーズでニヤケテみたりして。1人遊びを楽しむ。変!と言われようが、暗い!って言われようが、空想の世界の遊びは何もかも自由で無限で止められない。現実と空想の掛け橋=スピッツ。まだ少し寒さが残る春の休日、なんにもせずに毛布の中でゴロゴロしながらこのアルバムを聴いている。なんて、幸せな時間なんだろう・・・。

 

 

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