太陽   

中村一義     

 

なにか確信したようなポジティヴさが今は眩しかったりして、それでスピードやウルフルズの新曲がいろんなところで歌われたりして、素直になってきたんだと思う、聴く人の感性が。なんてことで、本命、中村一義。『太陽』だなんて、じつに逞しくて眩しいタイトルだと思う。『金字塔』から1年余りで、この開き直り、位相変化には相当なものを感じるのだけど、これはもう頭ん中、爆発してた状態でしょう。変テコな人ゆえのポップ、センスというか。ポール・マッカートニ−とかも、あの普遍性が逆にあやしかったりするんですよ。そんなわかりやすいやつじゃないくせに、みたいな。新作は強烈にポジティヴでありながら、けっきょく自己抑制ができずに「消えそうだったあの歌を、僕等、今、歌いだす」なんて歌ってしまうという青さが好きかなぁ、やっぱ。とか言って、本当は『金字塔』のほうが好きだったりして。でも、どっちでもいいんだ、これが。奇跡の1枚。 Text by 梅木
太陽。愛。笑顔。いつも2人で。生きている。幸せ。……。
形にしてしまうと嘘くさくなってしまいそうな言葉達が、キラキラと息づいてる。
少し癖のある唄い方と、単調なくり返しのようなリズムせいで、最初はダルさを覚えるかも知れないが、この中村一義の『太陽』というアルバムは、いろいろな大切なものを与えてくれる、幸せなアルバムだ。
“呼吸をするのと同じレベルで音楽をしている”彼の音を聴くと、何時もそう感じる。例えば、人を愛するように、自転車を漕ぐように、ご飯を食べるように、音楽を演っている人は結構いると思うけど、息を吸い込むのと同じくらいの必要性を持って音をだしているアーティストは、かなりの小数だ。弱く、危うい、ギリギリの音である。しかし、そんな音や言葉なのに、このアルバムは、なんて生命力に溢れて幸せな気分になれるのだろう。
昨日見たテレビの受け売りで申し訳ないが、赤ちゃんが産まれてきて初めてする息は、吐く息ではなく、吸い込む息だそうだ。外に出て、その世界で生きて行く為に思いっきり、吸い込む息。力強く、希望に満ちた息。赤ちゃんは決して一人では生きて行けないけども、自分の力で生きて行こうとする意志をもって、努力する。生きるという行為に努力する。当たり前のことで忘れられてるが、私達は生きる為に努力しているのだ。だからこそ、毎日生きてるんだ。その、当たり前のことに気付いた清清しさ。このアルバムを聴いた後の爽快さは、そこだ。ジャケットの素晴らしさと共に、大切に持っていたいアルバムの1つなのです。   Text by 浦山


 

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