The Sky is too High

Graham Coxon

 

 

聴いてて心の底から嬉しさがこみ上げてきて、自然とニヤニヤとしてしまった。
Graham Coxonの『The Sky is too High』はそんな素敵な1枚だ。

UK、No.1バンド『ブラー』のギターリストとして、常にスポークスマンのデーモンの隣で
黙々と奏でていた恥ずかしがり屋のグレアムが、包み隠さず自分の気持ちをこのアルバムに放り出している。
たった5日間で、しかもすべて一発録りで録音されたという通り、とてもラフで雑然としているが、
逆に変に計算された緻密さなどまったく無く、ストレートに楽曲に対する情熱が感じられ、
ハンドメイドの暖かみというか、何か手触りのすごくいいアルバムなのだ。

楽曲自体は彼が影響を受けてきたアーティスト(ギターリスト)達に敬愛の念を捧げるかのような、
ネタ元バレバレのものが多いが、それもソロならではであり、ここまで自由で開放的な
グレアムを感じられて、何度も書くが嬉しさが込み上げてくる。

歌詞のほうも、不器用だけど自分が感じることを自分の言葉だけでつなぎ合わせて飾らずに
表現していると思う。
確かに、そこには彼なりの孤独とか切なさとか疲労感などが顔を出している。
しかし同時に、そんな事と顔をつき合わせていながらも「しょうがねえなぁ」と言いながら、
決して背を向けない強さを持った、ただの音楽好きギター小僧のグレアムを感じることが出来る。
だからこそ僕はこのアルバムを聴いて、心から嬉しくなるのだ。

『ブラー』のギターリストとして成功も挫折も経験し、酒に溺れて自分を見失いかけた時期も
あったみたいだけど、グレアムは現在しっかりと地に足をつけて、デーモンとは違った視点で
現実を、世界を、音楽を、自分自身を、ひねくれ嘲りながらもしっかりと見据えている。
そんなグレアムが、そして『ブラー』が、僕は大好きなのだ。
           

                                    TEXT BY 伊藤

 

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