犬の渡独・帰国手続のご紹介…2005年7月シャーリの場合 


「シャーリも連れてドイツ行こうかな。」そんなことを考え始めたのは2005年4月の後半でした。
それから、実際にドイツへ出発したのは、2005年7月19日、2週間の滞在後、日本に帰ったのが8月3日。

準備は複雑なように見えましたが、ひとつひとつ積み重ねてきちんと準備すれば、犬連れで海外旅行へいけてしまうことがわかりました。

2004年に規則改正された、新しい検疫制度についての情報は、
動物検疫所のホームページの「犬等の新しい検疫制度」で確認できます
渡航準備にあたっては、早期から、出発する空港の動物検疫所と連絡を取ることが重要です。丁寧に対応頂けますので、迷わず、まず、連絡をしてみるとよいと思います(電話、メール、FAXで対応して頂けます)。

シャーリの場合は、成田空港の動物検疫所に問合せをしました。
シャーリが一緒にドイツに行って一緒に日本に帰ってくるには、
@ マイクロチップの装着
A 2回以上の狂犬病予防接種 (ただし、1回目と2回目とは、30日以上間をあけること)
B 農林水産大臣の指定する機関における抗体価検査で0.5IU/ml以上をクリアすること

C 帰国日の40日前までに動物検疫所に帰国日について連絡をすること
D 帰国前に、ドイツでマイクロチップによる個体識別等の必要事項が記載された輸出国政府機関発行の証明書を取得して帰国すること
、という手続が必要だということがわかりました。


動物検疫所のホームページの「よくある質問Q&A」にも説明がありました。
「日本から海外への犬、猫の持出しについて」
(http://www.maff-aqs.go.jp/ryoko/newquarantine/systemqa/dogcatqaex.htm)

なにはともあれ、マイクロチップを装着しないと始まらないので、シャーリは2005年5月14日、マイクロチップを入れてもらいに、K獣医師のところに行きました。
マイクロチップは、特に予約も必要ないとのことで、普通の予防接種を受けるような感じですぐ終わりました。

←マイクロチップ装着直後のシャーリ

マイクロチップは、直径約2mm、長さ約10mmのガラス製の筒状のもので、注射器のようなもので皮下5-10mmのあたりに装着します。マイクロチップを入れる場所は肩甲骨のあたりで、シャーリのエリマキから少し右背中側でした。ただ、マイクロチップは装着後、左右にずれることがあるそうです。最初装着した場所で反応がない場合は、他のところも探してみないといけないんですね!マイクロチップ装着後、シャーリの肩にリーダーをかざすと、ちょうど右肩の上を通過するときに、「ピ!」と言ってリーダーに番号が現れました。ちゃんと機能してます!
 



マイクロチップ装着費用は3,000円でした。(獣医さんによって異なるようですので、かかりつけの獣医さんに確認してみてください。)終わってみると本当にあっという間で、外からさわっても分からないし、本犬も特段どうってこともなさそうです。これで迷子になって鑑札が取れてしまっても安心だし(保健所にもマイクロチップリーダーがあれば個体識別可能)、海外旅行にだって一緒に行けるようになるのなら、どのわんちゃんにもお勧めしたいですね。

さて、マイクロチップを装着できたので、次は狂犬病の注射を打ちました。
マイクロチップ装着後、2回以上狂犬病の注射を打つことが渡航手続の条件です。

2回目の狂犬病予防注射を6月18日にしてもらうことにして安心していたのですが、狂犬病の抗体検査をしてもらうための血清は、2回目狂犬病注射後、すぐに作れるんだろうか?
K獣医師に聞くと、血清は、血液を採取した日のうちにも作れるけれど、検査機関に送るための血清は、狂犬病の注射を打ってから3―4週間後作って検査機関に送るんですよ、と説明を受けました。3―4週間後?

6月18日 2回目狂犬病注射
7月17日 4週間後に血清をつくり、検査機関へ送る

7月29日 検査結果がでる

シャーリのドイツ行きは当初7月17日の予定でした(その後7月19日に変更)。あれ、もしやこの調子だと間に合わない???

あきらめきれずに5月16日、直接(財)畜産生物科学安全研究所の企画調整室に問い合わせをしてみました。そこで、シャーリは既に今年4月に狂犬病の注射を受けているので、6月18日に受ける予定の2回目の狂犬病注射の時点ですでに2回狂犬病の注射をしている状態で、すでに抗体価があがっているだろうということを教えて頂き、間に合うことが分かりました。。

6月18日 2回目狂犬病注射
6月20日 すぐに血清をつくり、検査機関へ送る

7月 1日 検査結果がでる

本当に分からないことだらけで、ひとつひとつ聞いては前進の繰り返しです。

次は飛行機です。5月18日に手配したところ、往路は取れましたが、復路の第1希望日はウェイティングリストになりました。


ANAの国際線では、縦50cm×横40cm×高さ25cm以内のケージに入れるペットは、機内持ち込みができることが分かりました(後述の通り、その後、変更)。ただ、注意すべきことは、機内持ち込みにできるペットは1飛行機につき1匹なので注意が必要です。(註:旅行後、変更があり、ANAでは2005年8月以降、ペットの機内持ち込みができなくなりました)

ペットの輸送には超過手荷物料金を支払わなければなりません。ケージ込みの重さ1kgあたり約6千円とのことでした。また、ケージは、ハードタイプでなくても、キャリーバッグでも、安全に、長時間、入っていられるものであれば問題ないとのことでした。飛行機の中では食事を与えることは禁止、水を与えることはOK、ケージから出すことは禁止、です。


飛行機を手配したときに、ドイツ入国時に必要な書類については、在日ドイツ大使館に問い合わせてくださいと言われたので、在日ドイツ大使館領事部に問い合わせてみました。

ドイツの入国時には、
@ 大使館のホームページから入手できる書式による獣医師の診断書
A 日本出国時に成田空港で発行される証明書
が必要だということが分かりました。

ところで、反対にドイツの出国時に必要なのものは?と聞くと、それは直接フランクフルト空港の動物検疫所に問い合わせてくださいと言われました。
ほんと、一から十まで、問い合わせばかりです。 


5月30日にフランクフルトの動物検疫所から返事が来ました。
「日本はEUのリストに掲載された国ではないのでドイツへの入国は簡単です。あなたの愛犬はタトゥーまたは(より好ましいのは)マイクロチップで個体識別が可能であること、さらに、有効な狂犬病予防注射済みであること(30日以上12ヶ月以内)、そして獣医による証明書を取得済みであることです。サンプルを送りますので、官庁の権限のある獣医に発行してもらってください。」

さらに、帰国時に必要な、日本の動物検疫所推奨のフォームとフォームを送って、ドイツでこれを発行してもらえるのでしょうか?と問い合わせてみたところ、
「フォームAは滞在先の獣医が発行できます。フォームCは空港でサインしてもらえると思いますが、Amttierarztにアポイントをとって確認してください。」
との返事。

Amttierarztって日本語ではなんと言うのでしょう。Tierarztは獣医。Amtは官庁。普通の民間獣医ではない、公職の獣医さん。後日分かったのですが、Amttierarztというのは、獣医師の資格を持った検疫課職員。獣医の資格は持っているものの、実際に診療は行わず、役所で仕事をしている公務員のことでした。
今回留学しようとしているアシャッフェンブルク犬学校のぺトラにメールをして聞くと、アシャッフェンブルクにもいることがわかりました。


渡航手続の途中で、ホテルの予約もしました。アシャッフェンブルクのアルテス・ズートハウス。1泊38ユーロ、
犬は1泊4ユーロ。長期滞在するので、特別料金を交渉したところ、犬も一緒で1泊40ユーロになりました。

帰国日の40日前までに成田の動物検疫所に届出をしないといけないのに、相変わらず帰国便はウェイティングリストなので、動物検疫所にまたしても確認をして、可能性のある帰国日の中でもっとも早い日の40日前までに届け出ること、後から帰国日が変更になった場合は、変更届を出すことで変更を行うこと、ということが分かったので、とりあえず、もっとも早い帰国日7月31日で届け出ることにしました。

この頃、アシャッフェンブルクのAmttierarztのオーバーマイヤーさんとやっとメールで連絡がつき、帰国時に必要なフォームAとフォームCの両様式の証明書を送り、アポイント希望日を申し込みました。6月17日、これに対して返事が来て、アポイントはドイツに行ってからでも、直前の予約でOKとのこと。また、狂犬病の抗体価検査の結果を英語でもらうようにとの連絡がありました。ホームページを見ると、英語版もあったのでこれを使うことにしました。

6月18日の朝、シャーリは2回目の狂犬病注射を打ち、それに続いて血液採取、それを血清にしてもらいました。できあがった血清は黄色味を帯びた液体で、これを和文、英文の検査申込書と共に、夕方クール宅急便で検査所へ発送しました。



7月1日、予定通り、抗体検査の結果が速達で届きました。おそるおそる検査結果を開くと、7.8IU/ml。高い数値なのかどうかの判断もつかないけど、とにかく0.5IU/mlは超えたからOKです!

アシャッフェンブルクのAmttierarztに検査結果の用紙と、日本から持参する犬の輸出に関する書類をスキャナーで読み込んで送り、7月4日に、これで大丈夫かどうかを聞いてみたところ、翌日返事が来て、送付した書類のオリジナルを持参すれば、フォームCへのサインはできるでしょう、とのこと。これで、帰国時の書類はお願いできそうです。

7月に入って、帰国日は8月3日に確定しました。早速成田の動物検疫所へ帰国日の変更届をファクスで送り、受理書の発行をお願いしました。
受理番号というものが、出発当日必要になるので、何度か電話で催促をして、ファックスで送付してもらいました。


ドイツへ入国するための書類は、色々問い合わせた結果、3種類手元にありました。
いったい、どれが本物なのでしょう?それを知る由もなかったので、とりあえず、獣医師には、すべて署名をお願いし、どのフォーマットを要求されても対応ができるように準備していくことにしました。分からないので、リスクを排除する方法を取るしかないのです。
こうして、準備できることはすべて念には念を入れて準備してのぞんだ、ドイツ旅行でした。


手探りで、調べて調べての渡航手続でしたが、こうして、なんとか、出かけることができ、そして、手続をきちんと行ったおかげで、シャーリは無事に日本へ帰ることができました。



ペット倶楽部9月号から6回の連載で「愛犬と海外旅行」を掲載頂けました。
こちらから⇒「愛犬と海外旅行」

シャーリのドイツ滞在記が本になりました。
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