〜宝箱〜


誰もが持っているもの

この世に二つとないもの

代えられないもの

今は ないもの

〜♪♯・♪〜・・♭〜♪♪・・*〜♪・♯〜♪♯*♭♪♪・・

いい曲だね

ええ・・・こんなボロのハーモニカじゃなければもっといいのに

〜♪♯・♪〜・・♭〜♪♪・・*〜♪・♯〜♪♯*♭♪♪・・

おやじさん、オルゴールって知ってますか?
オルゴール・・・ああ、君くらいの年じゃオルゴールなんて見たことないかもしれないね
あ、はい。俺は聞いた話でしか

オルゴールは小さい箱型のが主流でね、昔はよく見かけたものだが・・・
小箱・・・

確かこの棚の奥の方に・・・・・ああ これだよ
フタを開けると音楽が流れるようになっているんだよ
音楽が・・・

〜♪♯・♪〜・・♭〜♪♪・・*〜♪・♯〜♪♯*♭♪♪・・

『そのスペースを自由に使え』
あいつのペンダントに刻まれた言葉

オルゴールって何を入れるものなんですか?

何だと思う?

分かりません

宝だよ
宝?

オルゴールには小さなものしか入れられない
そのかわり想いの大きいものをしまっておくんだ
想い・・・

〜♪♯・♪〜・・♭〜♪♪・・*〜♪・♯〜♪♯*♭♪♪・・

百年以上前に造られた人形がつい最近まで動いていたって言ったら信じますか?
こういう宿屋をやってるとね、不思議な話をよく聞くよ

本当、信じられないことですよね
旅の方の言うことは信じるよ
ありがとうございます

〜♪♯・♪〜・・♭〜♪♪・・*〜♪・♯〜♪♯*♭♪♪・・

このオルゴール動きますか?
もうずいぶんとほうっておいたから きっともう壊れているよ
開けてみてください
でも鳴らないと思うよ
大丈夫ですよ

想い”があるかぎり

・・・え?!

オルゴールは動き続ける

鳴った・・・信じられない
言った通りでしょう

オルゴールが鳴ったのは

ああ こんな所にいたんだね
その人は?
私の妻だよ。もっともこれは若いときの写真だがね
もうあれがいって何年になるのかな

綺麗な人ですね

ああ、綺麗だった

おやじさんが今でも奥さんを想っているという証だろう

〜♪♯・♪〜・・♭〜♪♪・・*〜♪・♯〜♪♯*♭♪♪・・

   『そのスペースを自由に使え』
スペースとはメモリーのことだろう
エルビィはその名とは裏はらに大きなものをしまっていた
あいつはスペースを主人のためだけに使ったんだ

『君が望めば・・・』
そういう意味だったんだな

きっと代わりなんかじゃなかったんだと思う
何かの代わりならあんな言葉を残したりしないし、自由なんか与えないだろう

エルビィ

人は想い人がいなくても生きていけるけど
それは死ぬより辛いことなのかもしれない

 

 

いますよ ここに

 


そうだな

〜♪♯・♪〜・・♭〜♪♪・・*〜♪・♯〜♪♯*♭♪♪・・

誰もが持っているもの

この世に二つとないもの

代えられないもの

今は ないもの

けれど

”想い”という名で心という箱に残ってる


〜オルゴール〜に行く


***あとがき***

オルゴールの続編。完結しました。
自分で書いててしんみりしています。
最後の文字の色はエルビィと彼の色を混ぜたつもりです。

宝は”物”とは限らないと思います。
そのためここでは極力”物”という字を使っていません。

この世に二つとないものだから大事にしていきたいですね。

99.8.23



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