コレッリ: ヴァイオリン・ソナタ集 作品5

(最終更新日2015/04/25) 所有16枚中 (済13/未3) (CD感想欄へ)

全集(9)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
ガッティ Arcana 2003 全集 バロックVn
グリュミオー Philips 1975 全集
ホロウェイ Novalis 1995,96 全集 バロックVn
ハジェット Virgin 1988,89 全集 バロックVn
マンゼ harmonia mundi2001,02全集 バロックVn
メルクス Archiv 1972 全集 バロックVn
モンタナーリ Arts 2002 全集 バロックVn
オノフリ Anchor Records2012,13全集 バロックVn
ウォルフィッシュhyperion 1989 全集 バロックVn
 
選集(2曲以上)
演奏者 レーベル 収録年 収録曲 演奏 録音 補足
バンチーニ harmonia mundi1989 1-6 バロックVn
クイケン Accent 1984 1,3,6,11,12バロックVn
リッチ One-Eleven 不明 8-12
寺神戸亮 Denon 1994 7-12 バロックVn
フェイスアイコンについては「フェイスアイコン」を,評価点については「演奏・録音 評価基準表」をご参照下さい。
<未記入リスト>
  • レミー・ボーデ(Remy Baudet) (Brilliant) (全集)
  • ルーシー・ファン・ダール(Lucy van Dael) (Naxos 2002) (No.1-6)
  • フランソワ・フェルナンデス(Francois Fernandez) (Naxos 2006) (No.7-12)
<未所有リスト>
  • ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin) (EMI 1978,79) (全集) (*LP)

CD感想


エンリコ・オノフリ Enrico Onofri

レーベル Anchor Records
収録曲 全集
録音データ2012年10月27-30日,2013年11月21-22日, 24-25日
カッシーナ・ジャルディーノ(クレマ,イタリア)
使用楽器 anonymous violin, Italy early 18th century(バロック仕様)
所有盤 UZCL-1027 (P)(C)2014 Anchor Records (国内盤)
UZCL-1028 (P)(C)2014 Anchor Records (国内盤)

バロック・ヴァイオリンによる演奏。ピッチはA=390Hzで約1音低い高さとのことです。 これぞ正統派ピリオド演奏と言わんばかりの演奏であり, もしかしたらコレッリが聴いていたのは本当にこのような演奏だったのかもしれない, と思える薫り高いピリオド風味が何とも言えません。 ピリオド演奏によくありがちな過度の粘りや鋭角さはあまりなく,軽快で伸びやかであるところが良いと思います。

録音:

残響は多めですが,各楽器の直接音がやや濃いめに捉えられているので明瞭度や高域の伸びがそこそこあり印象は悪くありません。 残響によって音色のくすみはどうしてもあるのですが,これなら許容範囲です。

(記2015/04/25)


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演奏:3.5
録音:2.5

ステファノ・モンタナーリ(Stefano Montanari)

レーベル Arts
収録曲 全集
演奏者 ステファノ・モンタナーリ(Stefano Montanari) (バロックVn)
オッタヴィオ・ダントーネ(Ottavio Dantone) (チェンバロ,指揮)
アカデミア・ビザンティナ(Accademia Bizantina) (通奏低音:チェロ・ピッコロ,ヴィオローネ,リュート,オルガン)
録音データSala del Refettorio di S. Vitale, Ravenna (Italy) 4/2002 and 8/2002
使用楽器 記載なし (バロック仕様)
所有盤 47724-8 (P)(C)2005 ARTS MUSIC (輸入盤)
SACDハイブリッド盤(SACD Multi/SACD Stereo/CD Stereo)

バロックヴァイオリンによる演奏。 装飾は,教会ソナタ,室内ソナタとも独自ではないかと思います。

私がイメージするバロック楽器での演奏そのものという印象です(バロック楽器での演奏を耳にする機会が増えたためでしょうか)。 伸びやかで美しく,そして明るく躍動感に溢れています。 楽器の美点が活かされています。 音楽の喜びがストレートに伝わってくるのが素晴らしく思います。

一方,通奏低音は攻撃的というか,時としてヴァイオリンを押しのけんばかりの勢いがあり, 活気ある音楽に貢献していることは確かですが,寄ってたかってヴァイオリンを囃し立てているようにも聴こえてしまいます。 録音のせいということも大いにありますが,表現としても少々アンバランスに思います。

録音:

SACD Stereoでの試聴。 残響がかなり多めに取り入れられています。 帯域バランスがやや低域に偏り,低域の響きが中高域にかぶって煩わしく感じられます。 ヴァイオリンと通奏低音のバランスも通奏低音が勝ち気味で, 通奏低音の隙間からヴァイオリンの音が聴こえてくるような印象を受けます。 全体として,低域方向の帯域レンジ感,音像の立体感,リアルさはあるものの,楽器音そのものの明瞭性は全く良くありませんし, なによりも,ものすごく騒々しい感じがする(特に通奏低音)のが印象を悪くしています。 通奏低音はすっきりと,ヴァイオリンはもう少しくっきりと前に張り出す感じでとらえて欲しかったと思います。 明らかに響きすぎです。 ちょっと厳しいですが2.5点としました。

(記2006/03/23)


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演奏:4.5
録音:3.5

エンリコ・ガッティ(Enrico Gatti) (Arcana 2003) (全集)
ガエターノ・ナシッロ(Gaetano Nasillo) (バロックチェロ)
グィド・モリーニ(Guido Morini) (チェンバロ)

バロックヴァイオリンによる演奏。 教会ソナタの装飾はコレッリによるもの,室内ソナタの装飾は独自のもののようです。

明るく情感豊かで歌心にあふれた表現が最高! 音楽が生き生きと輝いています。 みずみすしい音色も素晴らしいです。 どことなく漂う純朴さが,さらに印象を良いものにしています。

装飾は,特に緩徐楽章で華麗に決められていますが,やや無理矢理音符を詰め込んだように聴こえるのが少々残念です。 もう少し曲に自然に溶け込ませて欲しかった。 一方,急速楽章の装飾は素っ気ないほど控えめです。

この演奏で特筆したいのは,教会ソナタの楽しさです。 室内ソナタももちろん良い出来なのですが,それにも増して教会ソナタの魅力あふれる表現に心奪われました。 コレッリのソナタに関しては,前半の教会ソナタより後半の室内ソナタの方が断然おもしろいと思っていたのですが, この演奏を聴いて教会ソナタのおもしろさに始めて気が付いたように思います。 それほどまでにこの全集は素晴らしい!

録音:

少し残響が取り込まれていますが,明瞭感がそれほど損なわれておらず,印象は悪くありません。 楽器の音色も比較的自然です。 やや圧迫感のある音のとらえ方である点, ヴァイオリンに比べてチェンバロとチェロの音が現実感に乏しい点が惜しいと思います。

所有盤:

A 423 (P)2004 Arcana (C)2004 Arcana Charlotte & Michel Bernstein Editeurs (輸入盤)

P.S.

このCDを取り上げている山野楽器の
古楽話題盤試聴室によると, ブックレットにガッティ氏自身による解説が載っており,当時の装飾法,使用した楽譜,演奏の編成などの解説のほか, 批評家や演奏家への苦言など過激な内容もあるとのこと。 非常に興味があるのですが,英文を読む根性がなく,残念ながら何が書いてあるかわかりません...

(記2005/04/20)


CD image
演奏:4.5
録音:3.0

寺神戸亮 (Denon 1994) (No.7-12)
シーベ・ヘンストラ(Siebe Henstra) (チェンバロ,オルガン)
ルシア・スヴァルツ(Lucia Swarts) (バロックチェロ)

バロックヴァイオリンによる演奏。 第9番の装飾はジェミニアーニによるものと記載されていますが,それ以外は明記されていません。 また装飾は,リピートのある曲では,1回目を楽譜通り,2回目に装飾を入れる,というスタイルが採られています。 通奏低音は,第10番,第11番がポジティブ・オルガン,その他がチェンバロで演奏されています。

緩徐楽章は伸びやかに,情緒豊かに,そして静かに高揚し,急速楽章は生気に溢れています。 控えめにさりげなく施される装飾は,まるで元々作曲されていたかのごとく曲の一部として同化し,そして,ピリッと効いています。 音色も艶やかでクリア,テンポの微妙な揺らぎも絶妙。 純粋に音楽の喜びに満ちていて,何度聴いても新たな感動がわき上がってきます。 もうこれ以上何も言うことはありません。 素敵な演奏に感謝!

と言いつつ... 中でも長調の第9番,第10番,第11番が特に好きです。 寺神戸さんの美質は,こういうシンプルで明るく楽しい曲で最大限に発揮されていると感じます。

録音:

響きがたっぷりと取り入れられていますが,ヴァイオリン自体の音は比較的明瞭で,音色の劣化も最小限, 好みの録音ではありませんが,悪い印象ではありません。 背景に心地よい響きが広がり,その上にくっきりとしたヴァイオリンが浮かび上がる, 響きを許せる方にとっては優秀録音と言えるのではないでしょうか。 響きを取り入れるなら,最低限こういう音の捉え方をして欲しいものです(それでもちょっと取り入れすぎか?)。

また,チェロやチェンバロの実在感が希薄でつかみどころがないところも不満です。 ヴァイオリンに比べてあまりにも扱いが低すぎます。 通奏低音とはいえ,しっかりと捉えて欲しいと思います。

所有盤:

COCO-78820 (P)1995 Nippon Columbia Co. Ltd. (国内盤)
録音:1994年8月8-10日,オランダ,ハーグ,旧カトリック教会

P.S.

1995年度のレコード・アカデミー賞(音楽史部門)を受賞した名盤。 私にとっては,聴き比べのきっかけを作ってくれた思い出深い演奏であり,未だにダントツに好きな演奏です。 それどころか,私が持っている全てのCDの中でも最高に気に入っている愛聴盤の一枚です。

このCD,プリエンファシスがかけられたディスクですが,TOC(Table of Contents)にはその情報が書かれていないようです(データに付随するサブコードには書かれている)。 通常のCDプレーヤでは問題ありませんが,特にパソコン等で扱う際には要注意です(TOCしか見ないソフトが多い)。 最近「クレスト1000」シリーズとして廉価盤で再発売されましたが(COCO-70459),この点は改善されていました。 さすがにCD-DA規格上まずいと思ったのでしょう。

(記2005/01/31) ※「クレスト1000」シリーズでのTOCプリエンファシス情報の確認結果追記
(記2005/01/12)


演奏:
録音:

ルジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci) (One-Eleven 録音不明) (No.8-12)
デニス・ネズビット(Dennis Nesbitt) (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
アイヴァー・キーズ(Ivor Keyes) (チェンバロ)

モダン楽器による演奏。 ちょとしたトリルなどは付けられていますが,それ以外の装飾はほとんどありません。

溌剌とした元気の良さがあり,また,ロマンティックな歌い回しが印象に残ります。 ただ,ガンバとチェンバロの通奏低音でありながら,バロックを聴いているという感じがほとんどしません。 ふるえるような独特のヴィブラート,微妙な音程感が良くも悪くもリッチらしいと思います。 残念ながら私はどうしてもこれに馴染むことが出来ません。

録音: アナログ盤からの復刻のようです。 ヴァイオリンにフォーカスされていますが,楽器音は比較的明瞭に捉えられています。 残響感はあまりありません。 残念ながら帯域感(特に高域側)が少々不足していると思います。 もっとも,楽器音捉え方が比較的良いので,それほど印象は悪くありません。

所有盤: URS-92030 (P)1992 One-Eleven Ltd. (輸入盤)
カップリング曲:バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第二番

P.S. なんで第7番がないんだ,中途半端じゃないか,と思いましたが, どうもカップリング曲との関係で1枚に収まりきらなかったからではないかと思います。

(記2004/08/08)


演奏:
録音:

シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken) (Accent 1984) (No.1,3,6,11,12)
ヴィーラント・クイケン(Wieland Kuijken) (チェロ)
ロベルト・コーネン(Robert Kohnen) (チェンバロ)

バロックヴァイオリンによる演奏。 教会ソナタの方は,コレッリの装飾法によるのではないかと思います。

音楽の中に自然に溶け込んだ装飾,起伏に富んだ叙情的な表現(それでいて無駄なくすっきりしている), そして,何より快活でスピード感があるのが良いです。 しかし,なぜか印象が薄いです。 「バロック演奏のお手本」といった感じがするからでしょうか?...不思議です。

録音: 残響が多めに取り入れられており,さらに,楽器からマイクまでの距離が結構あるようで, 楽器音に対して響きの比率が高く,全く明瞭感がありません。 当然音色もかなり損なわれています。 全く私の好みではありません。 苛々が募ります。 演奏の印象が薄くなっているのは,この録音のためかもしれません。 損していると思います。

所有盤: ACC 48433D (C)AGLA p.v.b.a. (輸入盤)

(記2004/08/06)


演奏:
録音:

アンドリュー・マンゼ(Andrew Manze) (harmonia mundi 2001,02) (全集)
リチャード・エガー(Richard Egarr) (チェンバロ)

バロックヴァイオリンによる演奏。 装飾はマンゼ氏独自のものではないかと思われます。

あけっぴろげな感情表現に,聴いているこちらがちょっと気恥ずかしくなってしまいます。 でも,庶民的なトラッド音楽を聴いているような,そんな楽しさがあります。 バロック音楽でもここまでやっていいんだ,と,ある意味感動します。

緩徐楽章はテンポ感が希薄で即興的,ノンヴィブラートの透明感あるトーンがこの上なく美しく官能的, 元気の良い急速楽章も楽しいです。 装飾もここぞというところで即興演奏と思えるくらい大胆に決めてきます(でもフォリアはちょっと下品だぁ...)。 エガー氏のチェンバロも負けず劣らずマンゼ氏に同調して楽しい演奏を聴かせてくれます。 こういう演奏なので,後半の室内ソナタの方が断然面白いです。

正直言うと私の好きなタイプの演奏ではないのですが,次はどんな表現が出てくるんだろう?!,とワクワクさせられますし, 何度聴いてもその面白さが薄らぎません。 ちょっと悔しいですけど4.0点付けてしまいます。

録音: 録音環境の空間性を感じさせる響きが多めに入っています。 響きが被ることによる明瞭感への影響,音色への影響も何とかぎりぎり許容範囲かと思います。 好みの録音ではありませんが,それほど悪い印象ではありません。 響きに抵抗を感じない方なら,心地よい好録音に感じられるかもしれません。 チェンバロはややシャリシャリした音で実在感がないのが残念なところです。

所有盤: HMU 907298.99 (P)(C)2002 harmonia mundi usa (輸入盤)
Recorded November 5-8, 2001 and February 5-8, 2002, at Skywalker Sound, a division of Lucas Digital, STD, LLC, Nicasio, California.

(記2004/04/09)


演奏:
録音:

モニカ・ハジェット(Monica Huggett) (Virgin 1988,89) (全集)
ミツィ・メイヤーソン(Mitzi Meyerson) (チェンバロ,オルガン)
サラ・カニンハム(Sarah Cunningham) (チェロ)
<トリオ・ソネリー(Trio Sonnerie)>
with ナイジェル・ノース(Nigel North) (リュート,テオルボ,ギター)

バロックヴァイオリンによる演奏。 解説書によると,前半の6曲(教会ソナタ)はコレッリ自身の装飾法をベースに, 後半の6曲(室内ソナタ)はそれに似た装飾法を適用したとあります。 通奏低音は曲によって編成が変わります(VnとVcのデュオから全員参加まで)。

どこを取ってもバロックヴァイオリンらしく,その美質がいかんなく発揮された好演に思います。 控えめで上品であり,かつ明るさ,快活さも持ち合わせています。 装飾も,編曲か?と思えるほど派手に付けられている他の演奏に比べるとかなり大人しく感じますが, 嫌みがなくすっきりとしており,むしろ原曲の良さをうまく引き立てているようにも感じました。 音色も立ち上がりのガリガリ感をうまく抑えており,伸びやかで美しく響きます。 表現的にも技術的にも本当に完成度が高く,文句の付けようがないのですが, あえて言うなら,あまりにそつなくきれいにまとまりすぎていて,かえって印象が薄い, というなんとも贅沢な不満があるくらいでしょうか。

録音: 残響が少しあり,明瞭感が落ちていますし,音色も冴えないものになってしまっており, やや苛々させられるところはあるものの,一般的にみれば,それほど悪くなく普通の録音と言えるかもしれません。 ちょっと作為的な音作りになっているのが残念なところで,もう少し素直にすっきりと捉えてくれれば良かったと思います。

所有盤: 7243 5 62236 2 2 (P)1990 (C)2003 EMI Records Ltd/Virgin Classics (輸入盤)
Recorded: May 1988 & March 1989.

(記2004/02/16)


演奏:
録音:

ジョン・ホロウェイ(John Holloway) (Novalis 1995,96) (全集)
デヴィッド・ワトキン(David Watkin) (チェロ)
ラルス・ウルリク・モーテンセン(Lars Ulrik Mortensen) (チェンバロ)
<トリオ・ヴェラチーニ(Trio Veracini)>

バロックヴァイオリンによる演奏。 解説書によると,前半の6曲(教会ソナタ)は主にコレッリ自身の装飾法(第5番の第一楽章のみRoman)が用いられています。 後半の6曲(室内ソナタ)は次の装飾法によっているようです。 第7番:"Manchester Anonymous" manuscriptより(Sarabanda), 第8番:Festing(Preludio),Tartini(Preludio and Sarabanda), 第9番:Geminiani, 第10番:"Walsh Anonymous" manuscriptより(Sarabanda), 第11番:Dubourg。 なおAppendixとして,第3番の第2,3楽章について,Galeazziの装飾法のものが収録されています。

この全集で面白いのは,「トリオ・ヴェラチーニ」というグループ名ながら,トリオで演奏されることはなく, 通奏低音がチェロもしくはチェンバロのどちらか一方だけとなっていることです(曲によって使い分けられています)。 チェンバロだけというのは他にも例がありますが,チェロだけというのはあまり例がないのではないでしょうか。 なかなか新鮮な感じがして,面白いです。 なお最後のフォリアは,チェロ版とチェンバロ版の2種類が収められています。

で,演奏の方ですが...のっけから通奏低音のチェロがやってくれます。 いきなりバッハの無伴奏チェロ第三番プレリュードの最初の音型からスタートするので, 一瞬CDをかけ間違えたのかとドキッとします。 奇を衒ったところは他にはあまりありませんが,語るように大きく表現されているのが印象に残ります。 ただちょっとやりすぎかなと思うところもあります。

肝心のヴァイオリンはというと...確かにいろいろと工夫を凝らして聴き所を作ろうという意図はわかるのですが, そもそも技術的にちょっと辛いところが感じられ,また,音色も粘りがあるものの,ベタッとした感じで締まりがありません。 デュボーグの派手な装飾法を用いた第11番,フォリアまでくると,ヴァイオリンもチェロもやけに気合いが入っており, なかなかの聴きものではありますが,粗さも増幅されてしまって,安心して音楽に身を任せられないのが残念です。

録音: 教会での録音のようですが,あまり響きは感じられません。 ヴァイオリン,通奏低音とも明瞭に捉えられており,私好みの録音なのですが, ちょっと音色が濃すぎる感じがして,なぜか今ひとつスキッとしません。 まるで原色の油絵の具でコテコテに塗りたくった絵画を見ているかのようです。 決して嫌いではないのですが...

所有盤: 150 128-2 (P)(C)1996 AVC AUDIO VIDEO COMMUNICATIONS AG, SWITZERLAND (輸入盤)
Recorded: St. Paul's Church Rusthall, Kent, 15-17 November 1995 and 11-12 March 1996

P.S. それにしても,デュボーグの装飾法が用いられた第11番,ちょっと全体から浮いています。 他にも採用している演奏者がいますが,うーん,あんまり好きになれないです。

(記2004/01/09)


演奏:
録音:

エリザベス・ウォルフィッシュ(Elizabeth Wallfisch) (hyperion 1989) (全集)
ポール・ニコルソン(Paul Nicholson) (チェンバロ,オルガン)
リチャード・トゥニクリフ(Richard Tunnicliffe) (チェロ)
<ロカテッリ・トリオ(The Locatelli Trio)>

バロックヴァイオリンによる演奏。 解説書によると,前半の6曲(教会ソナタ)はコレッリ自身の装飾法を多く取り入れていると書かれています。 後半の6曲(室内ソナタ)は特にどの装飾法とは明記されていないように思いました(間違っていたらごめんなさい)。 面白いことに,Appendixとして,最後に第九番のジェミニアーニの装飾法による演奏が独立して収められています。 第九番は私の最も好きな曲の一つなので,二つのバージョンが聴き比べられるというのはなかなかうれしい企画です。 また,通奏低音は,教会ソナタはオルガンが,室内ソナタはチェンバロが使われています。

緩徐楽章の柔らかな表現,急速楽章の小気味よさが気持ちよく,そして, 急速楽章であっても上品さを失わない好演です。 大人しい,どちらかといえば地味な演奏ですが,嫌みがなく何度聴いても飽きが来ません。 装飾も派手に決めるわけでもなく,どちらかといえば控えめに思いますが,ツボをしっかり押さえていて, 原曲の良さをうまく引き立てていると思います(特に室内ソナタ)。

最後に収められているジェミニアーニの装飾法による第九番の演奏ですが,繰り返しの一回目は装飾なし, 二回目に装飾を入れるというのが通例と思っていたのですが,この演奏では一回目も二回目も同じ装飾を入れていて, 少ししつこい感じがしました。 やっぱり通例通りの方がまとまりが良いように思います。

録音: 少し距離感があって,残響時間は長くないものの,やや響きが多めに取り入れられています。 そのために少し明瞭感,鮮明さが失われ,ヌケの悪さを感じるのが残念なところです。 とはいえ,残響があまり悪さをしていないので,印象としてはそれ程悪くありません。

所有盤: CDA66381/2 (P)1990 HYPERION RECORDS LTD. (輸入盤)
Recorded on 11, 12, 13 October, 7, 8, 9 November 1989

(記2003/12/03)


演奏:
録音:

チアーラ・バンチーニ(Chiara Banchini) (harmonia mundi 1989) (No.1-6)
Jesper Christensen (チェンバロ)
Luciano Contini (アーチリュート)
Kathi Gohl (チェロ)

バロックヴァイオリンによる演奏。 作品5全12曲のうち,前半の6曲(教会ソナタ)が収められています。 おそらくコレッリ自身の装飾法を用いているのではないかと思います(解説書を読む根性なし...)。

急速楽章はテンポも良く快活であり,緩徐楽章はじっくり伸びやかに歌っています。 緩急強弱も適度にあって,バロックヴァイオリンの良い面が出ている好演です。 特に緩徐楽章での透明感ある輝かしい音色が本当に美しく素晴らしいです。 まるでバロックヴァイオリンの見本みたいな演奏であり,全体通して完成度が高く文句の付けようがないのですが, 余りにも整いすぎていて,もうちょっと何か味付けが欲しいなんていう贅沢な不満を持ったりもします。

録音: 残響感はわずかにあるものの,ヴァイオリンの音は比較的明瞭に捉えられていると思います。 高域の帯域感も十分ではないものの,そこそこあるように感じます。 ただ,中低域の充実感のない浮いた音であり,実在感が希薄になってしまっているように思います。

所有盤: HMA 1951307 (P)1989,2000 harmonia mundi s.a. (輸入盤)

(記2003/11/26)


演奏:
録音:

エドゥアルト・メルクス(Eduard Melkus) (Archiv 1972) (全集)
ユゲット・ドレフェス(Huguette Dreyfus)(チェンバロ,ポジティーフ・オルガン)
ガロ・アトマカヤン(Garo Atmacayan)(チェロ)
カール・シャイト(Karl Scheit)(リュート)

バロックヴァイオリンによる演奏。 曲により通奏低音の編成が使い分けられています。 前半の6曲(教会ソナタ)は,主にコレッリ自身の装飾法が用いられています。 後半の6曲(室内ソナタ)は,第9番がジェミニアーニの装飾法,それ以外がデュボーグの装飾法をベースにしているようです。 また第7番は,ジェミニアーニによるコンチェルト・グロッソ編曲版で演奏, その他にも部分的に編曲版が用いられています(例えば,第10番の第4楽章,第11番の終楽章は,デュボーグ編曲の変奏曲版で演奏)。

それにしても,第1番の第1楽章,のっけからすごい! このアグレッシブさは一体何なんだ! バロック音楽で,コレッリでここまでやるかぁ?! おいおい! ってなもんで,あまりのテンションの高さに思わず笑ってしまいました。 しかもヴァイオリンだけでなく,チェンバロもためをはってバシッと決めてくれてます。 いやぁー,こんなの大好きです。

しかし,第2番以降ややテンションが下がっているのが残念! やっぱりアグレッシブにいくなら徹底的にいって欲しかった...ちょっと残念。 とはいえ,全般に快速なテンポであることには変わりなく,装飾も派手に決まって, これはこれで聴いていて楽しいです(でも一方で,ちょっと落ち着きなくせかせかと滑りすぎの感じもしますが)。

第7番の合奏協奏曲版も編曲がツボにはまって,ともすれば単調になりがちなこの曲を活き活きしたものにしていますし, あれっ,こんなんだっけ,と一瞬戸惑うような変奏曲編曲版も楽しめました。 全体にちょっと異端っぽい感じがしますが,バロックヴァイオリンによる演奏の枠にとらわれないチャレンジ精神が感じられて聴き応えがありました。

録音: 比較的明瞭に捉えられていると思いますが,残響時間は長くないものの響きが少々あり, なんとなくゴチャゴチャした感じがあってすっきりしません(特に通奏低音のチェロの音が全く良くありません)。 高域の伸び感もわずかに不足している感じで,スキッと見通しよく聞こえてきません。 どことなく古さを感じる録音ですが,これは仕方ないかもしれません。

所有盤: POCA-3064/5 (449 272-2) (P)1973 Polydor International GmbH, Hamburg (国内盤)
録音:1972年1月,3月,ウィーン

P.S. 録音が1972年ということで,手持ちの中では最も古いものですが, そのアプローチは最近のバロックヴァイオリンの演奏よりも新鮮に感じます。 当時はまだバロック演奏の研究途上ということもあったんでしょうか? 新鮮味を感じるのはそのためかもしれません(根拠なしですが...)。

(記2003/11/10)


演奏:
録音:

アルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux) (Philips 1975) (全集)
リッカルド・カスタニューネ(Riccardo Castagnone)(チェンバロ)

モダン楽器による演奏。 概して,緩徐楽章は速めで淡々と,急速楽章は丁寧できっちりと,全体として緩急強弱の変化が少なめという印象です。 装飾も控えめで,バロックヴァイオリンによる多くの演奏を思うと,ほとんどないに等しいです。 音色は甘美で上品,まさにグリュミオーの本領発揮と言えます。

グリュミオーらしい品格と個性を堪能できる好演なのですが, 最近のバロックヴァイオリンの多彩な演奏を聴くにつけ, この演奏に対して物足りなさを感じてしまうのも事実。 まるで色褪せたセピア色の懐かしい写真を見ているようで,一種の切なさを覚えます。

録音: 残響感がほとんどなく,ヴァイオリン,チェンバロとも明瞭に捉えた好録音。 特にチェンバロがすっきりと透明感のある音色で心地よいです。 一方肝心のヴァイオリンは,やや音色に癖があるように感じます(これが本来の音色なんでしょうか?)。 仕方のないことと思いますが,ちょっと古臭さを感じます。

所有盤: PHCP-9665/6 (462 638-3) (P)1975 Philips Classics (C)Philips Classics (国内盤)
録音:1975年1月15-25日

P.S. アナログ時代から愛聴してきた演奏です。 当時,比較的簡単に手にはいるのはこのグリュミオー盤だけだったと記憶しています。 この企画のために久しぶりに引っ張り出してきてじっくり聴き返しました。 よく聴いていた当時のことが懐かしく思い出され,しばし感慨にふけってしまいました。

(記2003/11/01)