=== 誰そ彼 === 月光に沈むの塔の街 銀細工の職人は宙へ昇り星と挨拶を交す 笛の音 ネオンの煌き シトロンの匂い それらをその腕(かいな)に抱き 街は眠る 塔に降り立ち 僕も微睡む 彼は塔に住んでいた 魚たちが月に登る時刻に鐘を鳴らす 水晶飾りのプロキオン 瞳から滴が零れる 鐘の意匠をなぞる僕をみつめて彼は言う 「君、天使だね」 「羽が付いてないもの」