Suiwooの熱帯魚講座--中級者編




 かくいう私は,はっきりいって熱帯魚初心者です。しかし,熱帯魚のベテランがかつてそうであったように,いろいろ本を読んだりショップの人や友人にわからないことを尋ねたりして,いろいろなことを勉強しました。このコーナーで解説している内容は,熱帯魚を飼育する上で必ずしも必要な情報ではありません。事実私の友人(熱帯魚飼育歴15年)で知らない人もおりました。理科系の私ならではの,ややマニアックな内容を扱います。ですがみなさんの熱帯魚ライフのお手伝いができる内容に仕上がっていると自負しております(笑)

1.水が汚れるということ

 魚も生き物ですから,当然排泄行為があります。この排泄物と残ってしまった餌,そして魚の粘膜からの分泌物等が始まりとなります。これらは以下のようにバクテリアによって次第に姿を変えていきます。


 上記の不要物に注目してみると,水槽内の水を酸性に傾けるものが多い,ということにお気づきでしょう。特に亜硝酸や硝酸,あるいは他の有機酸によっていずれ水槽内の水は酸性化していきます。ただしアンモニアより亜硝酸が,亜硝酸より硝酸が魚にとって毒性が低くなるという特徴があるため,このような細菌による化学変化は魚にとってメリットがあるわけです。
 つまり水槽内ではアンモニア等の毒性が高いものを硝酸のように毒性が低いものへと変化させ,植物や水換えによって除去するプロセスをとることで有毒物質から魚を守っているんです。目に見えるような大きいゴミがないからといって,その水が魚にとって好ましいとは必ずしもいえないわけです。
 ところで,みなさんは日々コケとの戦いを繰り返していらっしゃることと思います(笑)初級者編で解説した「こなれた水」には,このにっくきコケの栄養分となる窒素酸化物やリンなど栄養分があまり溶解しておりません。例えば最近琵琶湖をはじめとした日本のいろいろな湖で問題になっている「富栄養化」というのは,この窒素やリンが非常に多く湖水に溶存しているわけですね。こなれた水ではこの逆ですので,コケの発生を最小限に押さえてくれます。ですが,前述したように窒素酸化物のひとつである硝酸は,生物濾過をもってしてもこれ以上分解されることがありません。ですから,換水というのはコケの発生を押さえるという意味あいも当然含んでいます。

2.濾過総論

 熱帯魚入門書等には細かく掲載されていますが,濾過の方法というのは大別して3種類あります。物理濾過というのは,その名の通り大きなゴミを通過させずに濾過する方法です。生物濾過というのは1.で示したような細菌による濾過(アンモニアの無害化)不要物を変化させるものです。活性炭やゼオライトのような濾材はこれらの物質を化学的に吸着するため,これを化学濾過といいます(文献によってはこれも物理濾過に含めることがあります)がコスト面などであまり一般的ではないと思われます。ですから一般に使用されている濾過装置によって分解産物を廃棄することは,「原則的には」できません。
 ところで,生物濾過というのはどこで行われているのでしょうか? 実は,生物濾過を行う場所というのは主に「濾材」「底槽砂」の2カ所です。水槽の中で大きな体積を占めている「水」の中では,生物濾過は微量にしかに行われていません。というのも,水の中よりも濾材や砂利の中といったところの方が各バクテリアが繁殖・固定しやすいからなんです(ただし砂利等に定着するためには時間がかかります)。しかも,1.で示したとおり,酸素が欠乏すると「嫌気性菌」が発生し,せっかく酸化したアンモニアを還元してしまいます。酸化作用には,細菌は莫大な酸素を要求しますからね。ですから,濾材がつまる(水流がなくなる)と水槽水中の溶解酸素がいきわたらなくなり,嫌気性菌発生によるアンモニア増加が生じてしまい,魚にとって有害であるわけです。特に底面濾過を使用している場合,つまりやすいことが知られています。
 だからといって濾材を頻繁に洗うのは,せっかく定着したバクテリアを殺すことになってしまいます。特にこれらバクテリアは塩素(カルキ)に非常に耐性が低いため,水槽水をバケツにとっておいて,濾材をすすぐ程度でいいわけです。このことはどんな本にも掲載されていますね(笑)

3.pHの推移

 1.で示したとおり最終的には水槽内の水は酸性へと傾きます。この酸性・アルカリ性の尺度がpH(potential of Hydrogen)であるわけです。pHは上記のように定義されておりますので,H+の上昇に伴って減少します。しかも[pHが1低下する]=[H+濃度が10倍になる]ということもこの式からおわかりですね。酸性にもアルカリ性(塩基性)にもなっていない場合を中性といいますが,このときに[H+]=10-7mEq/lとなり,pH=7となることは周知ですね。なお,水換えをしなかったり,流木やサンゴなどpHを変化させる物質が水槽内に存在しない場合,水槽内pHは以下のように変化していきます。理由としては,硝酸という「酸」ができるというよりも,むしろ硝化バクテリアが作用する際に多量の塩基を使用するからなんですが,これについては私もよく知りませんので省略させてください。


 魚によって至適pHは異なりますが,強酸や強塩基が魚にとってよくないことは想像に難くないでしょう。それに加えて,魚にとって急激なpHの変化は「pHショック」をもたらし,時には死に至ることとなります。

4.硬度とは?

 よく,「軟水を好む魚」なんていいますが,そもそも硬度というのは何物なのでしょうか?定義の始まりはイギリス産業革命時にまでさかのぼります。CaやMgを多量に含んだ水を水蒸気として利用すると,釜にCaやMgが析出してしまい,これを除去するのに大変苦労したといいます。そこで蒸気釜中の水溶液のCaやMgを測定するようになり,この付着量のことを「硬度」と呼んだのに起因しているんですね。現在ではおおよその硬度の値を算出するのに以下のような式が利用されています。


 この式からわかるとおり,硬度はおおむねCaとMgで規定できることがおわかりでしょう。軟水,硬水の定義は国によって様々ですが,日本ではおおよそ100以下の水を軟水,200以上の水を硬水と呼んでいるようです。日本の水道水の平均値は[Ca]=8.8mg/l,[Mg]=1.9mg/lですから,硬度はおおよそ29.6となります。そして日本の水道水はほとんどが50以下の軟水ですが,おおむね東日本よりも西日本の方が硬度が高い傾向にあることが知られています。
 Caは炭酸カルシウム(CaCO3)となり,pHを非常に不安定にします。どうもpHが安定しない,というときにはこの硬度を測定してみてください。ここで解説したものは「総硬度」なんですが,こと熱帯魚水槽の検査をする場合は,「炭酸塩硬度」のみを調べるだけで十分実践的かもしれません。数社から測定キットが販売されています。

5.熱帯魚の餌とその嗜好

 繰り返しになりますが魚も生き物です。ですから,当然個体差というものが存在します。例えば性格,性癖,餌の嗜好等に同一種内での相違が認められるんです。同一種でも飼育者に慣れやすかったり慣れなかったり,クリルを好んだりアカムシしか食べなかったり,などなどあげればきりがないことと思います。
 私のナイフはドロミンを全く食べようとしません。だからといって生き餌だけ与えていればいいというわけではなく,魚のことを考えればいろいろな種類の餌をあげた方がいいとされています。単一飼料だけですと栄養的に偏りが生じてしまうことは免れません。例えば金魚(小赤)を例にとってみましょう。
 小赤には「サイアミナーゼ」という酵素が多量に含まれており,これが熱帯魚のビタミンB1を破壊します。そうすると成長が抑制されたり,時には背中が曲がったりといった状態を呈することがあるんです。
 ここでは,栄養や嗜好の面から主に中型魚の餌についてメーカー名までズバリ示します。なるべく広く情報を集めてはいますが,嗜好性に関しては一般論ですので,100%この限りではないことに注意してください。また,サイズや肉食・草食等によっても大きく異なります(基本的に,中型魚でも幼少の時は嗜好云々ではなく何でも食べるんですね)が,細かいところはご自分で判断してください。

嗜好性 寸評・注意
生き餌 イトミミズ とても高い 水道水のカルキに弱い。ヒルをもっていることがある。
アカムシ とても高い 熱帯魚ショップでは手には入りにくいため,釣具屋さんがおすすめ。ただし保存が難しいので,無理せず冷凍の方がいいかもしれない。
ブラインシュリンプ とても高い いわゆるシーモンキー。卵で売っているので,自分で孵化させて使用する。休眠卵のため,保存がきく。プランクトンの一種で,ミジンコをイメージしてもらえばよいだろう。
メダカ 高い 入手しやすい。表層を泳ぐ傾向が強いため,バタフライフィッシュやアロワナなどに向いているかもしれない。私のナイフが異常に好んで食べる。
アカヒレ 高い メダカと異なり全層にわたり泳ぐ。美しい魚であるためきれいだというメリットはあるが,これを「餌」ではなく「熱帯魚」として飼っている人もいるので賛否が分かれるところではある。
小赤(金魚) 高い 入手が楽。メダカよりも大きい魚向けである。サイアミナーゼ高いので,単食には十分注意が必要。なお,嗜好性は高いものの,魚の成長は遅め。
天然乾燥餌 Tetraクリル とても高い クリルとはオキアミの英名。脂肪が多いため,与えすぎると吐くことも。口が小さい魚には小さく切って与えるとよい。常温で保存可能であるが湿度に弱く,酸化しやすい。未だにこれを食べない中型肉食魚というものを聞いたことがない。
パックde赤虫 普通 ヒル混入の心配はないが,嗜好は実際のアカムシよりも高くないため,慣れるまであまり食べようとしない。
冷凍餌 ヒカリクレスト・クリーン赤虫 とても高い 嗜好は極めて高いが,与えすぎると水が汚れやすい。他の餌に比べて価格が高いが,栄養価も高く,これだけで飼育可能という人がいるぐらいおすすめ。ただし長期冷凍や解凍後の再冷凍はさけたほうがいい。
ディスカスハンバーグ ??? 使っている人が周りにいないのでわかりません。ディスカス以外にもあげている方,教えてください。
人工飼料 Tetra Min・ステープルフード やや高い 栄養価も合格点である。小型で雑食魚に向く。このシリーズにはテトラフィン・テトラグロースフード等があるが,嗜好性はほとんど同じ。栄養価に関してはテトラグロースフードがやや高いといわれている。
ヒカリクレスト・キャット やや高い 栄養価も食いもまあまあ。特にコリドラス,ポリプテルス等に嗜好が高いような気がする。水槽内ですぐに沈むため,底槽を泳ぐ肉食魚にいい。友人のスッポンモドキはこれが大好きである。
Tetraドロミン やや低い 栄養価はなかなかのもの。しかしナイフよ,いいかげんに食べてくれ!文献的にはナイフの嗜好性は高いというのだが.......

 もちろんこのほかにも各種あるでしょう。熱帯魚屋さんの人工餌コーナーを見ればおわかりですね。ただしこれらは私か友人が1度は試したものです。もしこのほかにおすすめの餌があったらぜひ教えてください。
 さて,「餌に慣れさせる」とよくいいますね?具体的にはどのようにしたらいいのでしょうか。各人いろいろな方法があるかと思いますが,基本的には以下の流れを組んでみたらいかがでしょうか?一般的な方法のようですが,私自身知らなかったので掲載してみました。

A.1週間〜10日間の絶食
B.慣らせたい餌を与える
C.食べればしばらく毎日与え続け,食べなければ2〜3日間絶食
D.B〜Dを繰り返す

 魚というのは2週間ぐらい絶食しても餓死しないことが多く,このように空腹にさせたところで餌を与えるのがポイントです。私もTetraドロミンに慣れさせようと思ってこの方法をとってみました。が,私の場合やはり初心者ですので,魚が餌を食べる姿が見たくて,志半ばで慣れさせるのを中断してしまいました。これは私の友人に教わった方法ですし,彼はもちろん慣れさせるのに成功しています。
 熱帯魚の雑誌等を読みますと,「クリルにペレットをはさんであげた」,「嗜好性の高い餌に嫌いな餌をまぶした」等も見受けますが,やはり頑固一徹同じ餌をあげ続けた方が効果が高い(慣れやすい)ような気がします。




公開できたらいいんですけど・・・・
・PSBとその効用
・麦飯石って何?
・グッピー遺伝子論


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