“Heaven”というのは、言わずと知れた
STARDUST REVUE の最新アルバム、および、それを
引っさげてのツアーの名前である。つまり、2 年前の文章をご記憶の方も無いと思うが、これは、“
Style in Akita”の続篇である。
ライブ レポートを書きたいがためにでっち上げたので、今回の文章の構成にはちょっと無理がある。
11/21
秋田県民会館。
いやぁ、歌った歌った。
俺が。
まぁ、タイトル チューンの“Heaven”みたいに聞かせる歌は、近所迷惑なので口を動かす程度で我慢したが、“Get Up My Soul”“Goin' Back to 1981”みたいなノリノリの曲は全力。喉が痛いぜ。
ボーカルの根本 要氏は音域がとてつもなく広いので、素人は時折、裏声で逃げざるを得ないが。それにしても丈夫な喉だ。うらやましい。
途中、「遠くからのお客様をお呼びしております」、とある人が紹介される。
誰かと思えば、一番、後ろにいたお客さん。ステージから一番遠い人、なのであった。
これはつまり、ファンとの直接的な交流であり、笑いを取るための、お楽しみのイベントなのであるが、その人は山形県酒田市の人で、本当に遠くから来ていたのだった。まぁ、7 号線をまっすぐ北上すれば 2 時間くらいで秋田市には着くが。自転車で 20 分、という俺のアパートに比べればはるかに遠い。
話は急に変わる。
“Heaven”、つまり「天国」に対応する方言形はあるか。
見つからなかった。かなり特殊な単語ではあるし、ないだろうなぁ、とは思っていたが。
困ったので、
大辞林。
「地獄」が対義語になっているが、そうか?
「地獄」という言葉はキリスト教でも仏教でも使うが、仏教では「天国」とは言わないような気がするのだが。「極楽」になるのかな。
だいたい、「ごく」の字が対応してないよな。
宗教関係だから方言形がないのか、というと、そういうわけでもない。
主に西日本だが、仏様 (仏陀ではなく故人の方) を「
まんまんさん」と呼んだり、手を合わせるときにそう唱えたりする地域がある。「南無阿弥陀仏」を真似た幼児語だと思われる。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版)』によれば、秋田では神や仏を「
あっとさん」「
とどさま」「
あまま」という地域があるそうだ。どれもかなり昔の言葉ではあるらしい。「と」の音が入っているのは「尊い」から来ているから。
で、面白いのは、同じ語が、「僧侶」や「月」を指すことである。僧侶は分るとして、太陽ではなく月なのが興味深い。
英語では、月は狂気の象徴で、月を長く見つめていると気が狂う、と言われている。“lunar”を語源とする“lunatic”は「狂った」という意味だ。
形が変わるところから、移り気なものの例えにも使われる。「ロミオとジュリエット」を見た、あるいは読んだ人なら記憶にあると思う。
『神曲』という、14 世紀の小説がある。作者はダンテ、使った言語はイタリアのトスカーナ方言。小説というと標準語という前提を我々は当然のように持ってしまうが、それは単なる思い込みである。
当時は、文章はラテン語で書くものだった。が、これがきっかけで「イタリア語」で書いていいんだ、という意識を人々は持った。
ここが大事。今の文明と文化は、変革の結果である。現状を守ることを否定はしないが、変化を拒めば停滞と滅亡があるのみである。「正しい日本語」を口にする皆さんは心して欲しい。
こないだ『
日本語学』誌で読んだばっかりなのだが、イタリアは非常に複雑な地域である。
否定を示すジェスチャーは、日本のように首を横に振るのと、頭を後ろに引く (ふんぞり返るのに近いことを想像してもらえれば、イメージがつかめると思う) のとあるが、その境界線がイタリア国内を走っている。ごく基本的なジェスチャーが国の北と南で違うのだ。
あるいはその辺が、敢えて方言で書く、という気質の源になっているのかもしれない。
「お天道様」といえば、普通は太陽のことである。が、これで「空」を指す地域もある。
逆に、「
そら」が“sky”以外の意味をもつ地域もある。見つかったのは、京都・広島・高知、といささか飛んではいるが、まずは西日本と括っておく。
これは、「上にある地面」つまり「山の方」という意味である。「
空の畑」と言うと、山の上のほうにある畑、をさす。つまり、この地域では、「バビロンの空中庭園」は本当に「空の庭園」だということになる。
*1
席は 1 階の真ん中当たり。左右方向には右端だったが、去年と違い、パーカッションの 林“VOH”紀勝氏が見えない、ということはない。去年より後ろだからだ。
*2
くっそー、先行予約してここか? と思ったが、1 枚だけの購入だと、隙間を埋めるのに使われるだろうから、端になるのもやむをえない
*3。
後ろでいいこともある。
今回のステージは照明が凝っていた。ステージ上だけでなく、客席もキャンバスとなる。「1% の物語 (“VOICE”収録)」という曲では、巨大な円が客席の壁をゆっくりと舐め、ステージに集約していく、という幻想的な情景が繰り広げられる。これ以後、俺は客席を頻繁に見ることになる。気づいてみると色々なことをやっていた。
なお、「1% の物語」は日替わりメニューの 1 曲で、場所によっては演奏されないのでご了承を。
あと、特撮番組でよくあるが、「縁の青い、白い光」とか。いやいや、まさに“STAR”の“REVUE”である。
でも、中央部であるに越したことはないよな。次回は
友達を 3 人、連れてっていい席を確保しなければ。