「あはははははははははははははははははは」
「イイ!すごくイイ!!!!」
「イッキさん、流石ですわ」
三者三様の感想がコンビニに響き渡る。
「カリンちゃんまで・・・」
イッキは先ほどトラックの中で着せ替えられたスカートを恨めしそうに握りながら、うつむき加減で、弱弱しい反論をする。
要するにカリンちゃんもイッキで着せ替え遊びがしたかったわけだ。
コスプレ好きの彼女らしい遊びと言えよう。
「私の見立てどおりですわ、イッキさんは、やっぱり赤が似合いますわ」
「トクダネ、世界大会第二位天領イッキの知られざる趣味!!!明日のトップ記事は決まりね!写真撮らなくっちゃ」
「やめろよ!アリカ!!」
「あら、あら、ダメですわ、花子ちゃん。女の子ならもっとおしとやかに喋りませんと」
「は、花子って?」
「こんな可愛らしく変身なされたんですもの、やっぱり可愛い源氏名で呼んであげませんと」
「源氏名って、あんた意味わかってんの?」
「もういいでしょ、カリンちゃん。着替えたいんだけど・・・」
「ダメダメ、あと364回着替えてもらいますわ」
どうやらこちらも一年分着替えを用意しているらしい。
「それじゃ、次ぎ行って見よう!!!」
アリカものりのり。
それからはとにかく大変だった、イッキはトラックを何往復もし、アリカとカリンちゃんはその都度、感想と、次の服装のアイディアを出し。
カリンちゃんがまた何処かへ電話をかけると新しい服が何着も届けられる。
そして、また。イッキはその服に着替えるためトラックに戻るのだ。
そんなことが約100回程続けられたころ、イッキはため息交じりでレジのカウンターに寄りかかると、もうどうにでもしてくれ。といった表情で「ああでもない、こうでもない」と次の服のアイディア出しに燃えている二人を眺めた。
「どうした、イッキ。もう逃げないのか?」
実は前半戦は、逃げようとするイッキと、それを阻止するカリンちゃんのシークレットサービスの激しい攻防戦あったのだが、所詮は子供。狡猾な大人には勝てなかったのだ。
「もういいよ、それより今は早いトコ全部こなして、開放されたいよ」
ははは、と力なくお互い笑う。
「大体さ,こんなとこ誰かに見られたらもう表歩けないよ・・・ヒカル兄ちゃんは黙っててくれるよね」
可愛い服を着て、うるうるされながら頼まれては断りようが無い。
「大丈夫、黙っててやるよ」
と応えてしまう。
「よかった・・・でもホント、誰かに見られたらしゃれになんないよ」
「その時は、その時さ。案外その変わりっぷりで誰も気が付かないかもしれないぜ」
「そうかなぁ」
慰めにならない、慰めに。イッキも気の入っていない返事を返す。
「もう、男同士でなにしんみり話してんのよ、やあねぇ」
「花子ちゃん、次の洋服が到着しましたわ。さ、お着替えしましょ」
何時の間に話が纏まったのか、二人がにじり寄ってくる。
イッキも、ハイハイ。と言いながら諦めムードでトラックに向かう。
シークレットサービスに両脇を固められながら自動ドアをくぐろうとした時イッキの肩が「ぎくっ」と小さく跳ねた。
そしてそのまま一直線に店内へ戻ってくると、隠れるようにカウンターの僕の後ろに回りこんだ。
「おい、どうした?」
後ろで小さくなるイッキを振り返り、たずねるが返答が無い。
が、その理由はすぐに判った。
「カリン!!」
店のすぐ前にコウジがいたのだ、悪い予感と言うものはとかく当たる。
あら、コウジさん。と微笑むカリンちゃん目掛けて、猛スピードで入店するコウジ。
ますます後ろで硬くなるイッキ。
「カリン!さっき君のボディーガード君達に囲まれていた子は一体誰だ!?」
掴みかかるような勢いでカリンちゃんにコウジの質問が飛ぶ。
「私の新しいお友達の、山田花子さんですわ」
カリンちゃんは「ふふふ」と笑いながら、僕の後ろに隠れていたイッキを引きずり出すと、コウジに紹介した。
アリカは今にも噴出しそうになって、必死にそれをこらえている。
「ヤマダハナコ・・・なんて可憐な名なんだ・・・」
どうやら、女装イッキはコウジの好みの直球ど真ん中だったらしい。
声と、目線が、何処となく上ずっている。
イッキも腹をくくったのか、そのままやり過ごそうと思ったのか「どうぞよろしく」と裏声で挨拶する。
「コウジ君の好みって、あんな感じだったのねぇ」
呟いたアリカの声が震えていたのは、笑いをかみ殺しているからに他ならない。
「コウジさんは、お嬢様タイプがお好きなのですわ」
たしかに、カリンちゃんたちがデザインした服を着て、小さく、控えめに喋るイッキは一見お嬢様タイプと言えないでもないが・・・
そんなこちらの会話も聞こえないのか、コウジは「花子ちゃん」に猛烈アプローチを仕掛ける。
イッキはそれを何とか理由をつけてかわす。
おお、壮絶な男と女の駆け引き(笑)
どんな好条件を出しても、乗ってこない花子ちゃんに、コウジも会ったばかりの相手に押しが強すぎるのもどうかと思ったのか。
「しょうがない、今日はこれで失礼するが、又逢ってくれるね」
「は、はい」
さわやかに微笑むコウジを「よかった、気づかれず、やり過ごせた」と思ったのか、イッキも笑顔で応える。
どうやら、ここは丸く収まったようだ・・・・・・・・・
と、思ったその時。
「イッキ、そろそろ帰ろうぜ、オレ飽きちゃった」
さっきまで雑誌コーナーで立ち読みしていたメタビーが状況把握もせずにのこのこ出てきたのだ。
「うわ、バカ!メタビー!!!っは!しまった!!」
イッキも裏声を使うのを忘れてついメタビーの名を口にしてしまった。
そんな自分の口を塞いだが、時すでに遅し。
だまされていたことにやっと気が付いたコウジが背後でブラックオーラを放ち始めた。
「こ、コウジ。これには海よりも深い理由が・・・」
尋常でないコウジの怒りパワーを察知して、イッキが何やらいい訳をしようとする。
「あちゃー。相当怒ってるわ、これは」
「コウジさんにしてみれば、ボンボンだと思って買ってきた本屋の包みを開けたら、入ってたのはコロコロだった、とゆうのと同じですものね」(半分実話)
実行犯の二人はそんなことをさも「他人事」の様に語る。
そんな二人の会話を背後にコウジは一層怒りオーラを膨らませると、おもむろにメダロッチを口元に運ぶと、何時もより低いトーンで
「メダロット転送」
と呟いた。
「表へ出たまえイッキ君、ロボトルだ!」
声は低くなったまま、勝負を持ちかけるコウジ。
傷つけられた、男の純情を、ロボトルで癒そうと言うのだ。
イッキもその申し出を、頷き一つで応える。
「パーツは要らない、この勝負は男と男のプライドをかけた戦いだ!もし、君が勝ったら今日のことは口外しない、しかし!君が負けた場合は!」
転送されたスミロドナッドを従えたコウジからは何時もよりも、強い気迫が伝わってくる。
その気迫に押されたのか、イッキが生唾を飲み込み「負けた場合は?」と聞き返す。
「君が負けた場合は、その格好のまま、今夜一晩僕の屋敷で過ごすのだ!!!!!」
すっこーん!と脱力するイッキ。男と、男の勝負じゃなかったのか?
「あら、私。コウジさんて、受けだと思ってましたのに」
「切れちゃったときのコウジ君って、まともじゃないわね・・・」
「所詮お坊ちゃまですもの、心理的衝撃にけっこうもろいんですわ」
「ちょ、ちょっと、二人とも。何的外れな事言ってんだよ、コウジに何とか言ってやってよ!」
「合意と見て宜しいですね!!」
と、その時、アノ曲とともに、アノ人が思いもよらないところから登場!
「うわぁ、合意なんかしてないって」
「スミロドナッド、コウジチーム対、メタビーイッキチーム。ロボトルぅぅぅぅ、ファイトぉ!!」
か〜ん!
例の強引さでロボトル開始のゴングが鳴る。
「スミロドナッド行け!」
持ち前のスピードを生かしたスミロドナッドの攻撃を紙一重のところでかわすメタビー。
「もう、こうなったら自棄だ!メタビー行け!!」
掛け声とともに、リボルバーを連射するメタビー。
が、これもすんでのところで交わされてしまう。
「スミロドナッドにはそんな射撃通用しないぞ!イッキ君!本気を出したまえ!」
確かにメタビーの射撃は何時ものスピードも、切れも無い。
「くっそ〜。メタビーどうしたんだよ!このままじゃオレ、コウジのおもちゃにされちゃうぜ」
「うっせー!お前がそんな格好で指示出しても、笑えるだけなんだよ!」
どうやらメタビーの射撃は、イッキの女装を見て、力が抜けてしまったらしい。
確かにイッキが指示を出すたびに笑いを堪えてるようだ。
「それとこれとは別だろ!真面目にやれよ」
「お前こそ、真面目にやれよ!!」
「確かに真面目にやってもらいたいものだな」
内輪もめに熱中してしまったメタビーの背後に何時の間にかスミロドナッドが回りこんでいる。
「げっ!しまった!!!!」
「シャドーソード!!!」
スミロドナッドの間合いから繰り出されるシャドーソードはそうかわせるものではない。
メタビーは派手にすっ飛ぶと、たったの一撃で機能停止になってしまった。
「機能停止!コウジ、スミロドナッドペアの勝利!!!」
Mrうるちはコウジの勝利宣言をすると又、思いもよらないところから消えていった。
「ま、しょうがないさ。これも運だと諦めて」
「披露宴には招待してくださいね」
「良かったじゃない、イッキ。玉の輿よ」
「どうぞ、お幸せに」
「さ、行こうか。イッキ君」
「うわわわわ・・・」
半ベソ状態のイッキを引きずるようにして、コウジは自分用の馬車に乗せる。
何とかイッキは窓からの脱出を試みるが、今度はコウジのボディーガード達に阻まれて、逃げ出すことは叶わなかった。
さらばだ、少年。次ぎ逢うときは僕の知らない君に成っているだろう。
僕たち三人は、若い二人の門出を祝い、小さくなる馬車を何時までも手を振って見送っていた。
完