03年10月
【2003/10/1産経 朝 15】
1面
 新幹線の品川駅開業の記事。本当に安くなったといえるのか?
【2003/10/4産経 朝 15】
28面
 圏央道の土地の強制収用に対する記事。横文字の署名入り記事(酒井潤記者)は、判決に
やや肯定的な記事。一方で、産経新聞自体の論調は、判決に批判的である。1面のガイドに
は、約300億円の損失と記載されているが、28面の記事では、圏央道完成による経済効果
が約300億円であるとの試算であり、収用の中断で経済効果の発現が遅れることになるとの
内容と成っており、やや過大に1面で報道されている。また、東京都は、「圏央道、外環道、中
央環状の三環状の全面開通で、一般道を含め都心約六百ヶ所の渋滞がほぼ解消される」と
考えており、それにより「二酸化炭素を年間百二十万トン削減できる」と分析していたが、「それ
も見込めなくなった」と表記している。この裁判では、あきる野IC附近の土地収用が問題となっ
ているが、この記事は、その他の土地収用もすべて不能になることを前提として、圏央道がま
ったく開通しないとの印象をあたえている。
 この記事に対する疑問点は以下の通り。
 1)圏央道が今年度中に開通する予定だったと記載されているが、全面開通予定なのか。
 2)経済効果の試算はあきる野−八王子間開通の効果にかかるものなのか、全面開通の効
果か。
 3)もし、今年度の開通予定で一部区間(あきる野−八王子間)なら、二酸化炭素削減効果
が見込めなくなったという記事は正確性を著しく欠くものと思われる。
【2003/10/6産経 朝 15】
4面
 政府税調メンバの世代交代の記事。長老議員の存在を批判的に論じている。また、これら
長老議員の存在が、減税の足かせになっているととの論調となっている部分もある。税調の役
割や税制のあり方には言及せずに、メンバーの年齢や職歴だけを列記した感があり、ポピュリ
ズム的(読者の関心が高い内容につき、読者望んでいる方向(減税など)と絡めて論じている
点が、読者迎合の人気取り記事だと断言したいわけではないので、あいまいな単語を使用して
みました)な印象をうける。
5面
 深刻化する若年層の雇用とのサブタイトルで記事あり。企業が人件費抑制により損益分岐
点をさげて、利益をあげている点を容認した上で、現在の中高年層雇用に対する批判となって
いる。この記事の結論は、結局、中高年層のリストラをもっとすすめろということになる。これに
よって、若年層の雇用を確保しようとまで積極的な提言にはなっていない。
 過度に若年層の失業があることに対して、企業にこれらの人材を吸収することを提言するの
ではなく、企業が抱えている中高年層雇用を放棄して若年層の雇用にかえるよう提言してい
る。つまりトータルな日本の雇用改善についての提言ではない点に留意するべきである。
 また、米国流のドライな人員整理ができないことが過剰な中高年層雇用につながっているこ
と、労働者の賃金上昇率が低下している点を肯定しているなど、最終的に雇用の改善に対す
る提言ではなく、企業の財務体質改善をするために、とるべき人事処遇策を提言している。
 企業がもつ社会的な責任や費用負担を軽減し、個人負担へスライドさせる動きは、止まらな
いのであろうか。確かに、日本が国際化していき、外国資本の会社が日本で活動する場合、な
んで日本人個人の生活の負担を、外国企業がしなければいけないのか納得できないかもしれ
ない。また、外国人株主は、日本の社会的インフラにまわるのではなく、当然株主の利益にな
るよう、社会貢献的な費用の削減をすすめ、配当原資にまわすよう要求するであろう。しかし、
本当に今の日本全体の生活水準を落としてまで、企業利益を第一に考えないといけないので
あろうか。
 結局、企業がなければ、一体庶民はどうやってくらすかという言葉を突きつけられたら、返す
言葉もない。企業の言うだけを、生活ができなくなるぎりぎりの水準まで譲歩し続けなければな
らない社会が、迫ってきているような気がする。とくに、こういう論調の記事が、平気で新聞紙
面にのるのをみると、暗澹とした気分になる。
 もうわれわれの世代(私は何歳でしょうね)にとって、日本の先行きなどないに等しいのです。
【2003/10/7産経 朝 15】
1面
 石原国土交通大臣が藤井道路公団総裁に辞任を迫るも拒否との記事。解任手続を取る
由。これだけ公然と、叛旗をひるがえされ、批判をあびているというのに、こうした形で辞任した
らたしかに、自ら悪かったと認めることとなり、辞任には到底応じられないと思われる。
 一方で、批判の内容はともかく、これらの批判にこたえる組織的な対応をとっていない見受け
られる。全体的な漠然とした印象からすると、ちょっと組織への統制力に欠けるところがあるの
か。かわりになる人物がいないのなら仕方ないけれど、そうでなければ組織管理能力がないも
のとして取り扱うことがよいのではないかと考える。いま、批判で取りざたされている、財務諸
表があるのないのという議論は、総裁の責任を問うには少し些細すぎると考えます。データが
ない訳がないのであるから、そのような評価基準でデータを財務諸表の形で集計するかだけ
問題だと考える。道路公団自体がどのような会計方針を採用しているかは、法律で決められて
いる部分もあるし、無軌道に会計処理をしているとは思われない(もし、これらの前提が存在し
ないなら、歴代の総裁に遡って責任を追及するべきでしょうけれど)。なので、もし責任をとると
したら、経理担当の管理職が責任を取るべきものであり、その監督責任から総裁なり役員なり
が辞任するというの、適正な筋書きと思われる。
 なお、道路公団を窮地(分社化とか民営化とか)に追い込み加速するような世論を形成する
一因は、藤井総裁の存在自体にあるともいえる。公団側から見たら、藤井総裁がいない方
が、公団ベースの改革がすすめられる可能性が高い。
 また、政治家の生死を決する情報を握っていることを理由に、おどしをかけるようなコメントを
した旨の報道がなされている。握っている情報の真偽はさておき、こうした発言をした時点で、
もう公団総裁を解任された以降の人生は、ないと考える。また、よしんば解任されなかったとし
て、どうやって仕事を進めていくのか。
 一般民衆からみれば、そうした不正があるなら公にして、不正を行った者に、それ相応の責
任を取らせるべきである。その点、議会政治の浄化に藤井総裁は多大な貢献をすることにな
る。しかし、秘密にすると請け負って、情報を得たり、会合に参画したりしていることもあるわけ
で、約束を守れるという信頼があってこそ仕事がなりたっている部分もある。もし秘密がまもれ
ないなり。それが不正だとその時点で認識しているなら、話をそれ以上聞かないなり、不正を
防止する手段をその時点で取るのが筋である。
 みずからなす必要のあることをせずして、政治家の不正をネタにするのは、天に唾するのと
同様で、結局、その不正に対して積極的なアクションをとれなかった藤井総裁自身の責任が追
求されなければならないこととなる。
【2003/10/8産経 朝 15】
1面@
  国内8頭目のBSE確認との記事。
1面A
 トルコ国会が、イラク派兵決議との記事。トルコの思惑やアメリカの狙いなどがコメントされて
いて、よく研究された内容と感じた。
【2003/10/9産経 朝 15】
1面
  サンフランシスコ州知事にシュワツネッガー氏当選との記事。
【2003/10/10産経 朝 15】
1面
 尖閣近海に中国船が領海侵犯との記事。この問題は、どこかの国が権利放棄の決断する
以外に解決の方法はないと考えるが、このままずるずると100年でも200年でもほっといても
よいかなと思うこのごろです。
2面
 パレスチナ自治政府のクレイ首相が辞任との記事。もう、50年くらいはどうにもならないので
はないかと考える。アラファト議長が死んだ後は、指導者の不在から統治機構は機能しないと
と思われる。また、イスラエルが統治する場合は、ユダヤ人への優遇政策から、ゲリラ的なア
ラブ人の反抗はなくならいと思われる。もし、アメリカが統治することになっても、大国の統治な
らなんとかなるという楽観は幻想にすぎないことを、イラク統治で見せ付けているので、混迷は
必至と思う。国連が介入する場合でも、実質的な手足を持たない国連では統治を行うのは難し
い。
 一方で、もし、パレスチナが外国人の統治を望むなら、どこの国や組織が統治機構を代行し
ても、安定化の方向へ進むであろうと考えます。問題は、誰が統治機構を担うにせよ、その国
に、その統治機構が受け入れられるかが重要であると考えます。パレスチナは、長い間、実質
的に無政府状態だったことや法律や規則よりも暴力に優位があったことなどから、法律による
統治および明確な権限体系をもった統治機構の整備という「窮屈な」体制が受け入れられるの
かどうか。この点を疑問に思うので、まだまだ安定には時間がかかると考えていますし、誰が
統治をしても、民衆に統治の正当性を認めさせるだけの力量(人気をふくむ)がなければ、どう
にもならないと思う。
 カンボジアはシアヌーク殿下(現国王)が生きているうちに安定化にこぎつけたが、もしシアヌ
ーク殿下が安定化前に死んでいれば、混迷は続いたと考えるわけです。ただ、人によっては、
シアヌーク殿下がいたからこそカンボジアは混迷したというかもしれませんが。
 ポピュリズムでもなんでもよいから、とにかく統治という抽象的なことがらを民衆に納得させる
だけの力なり人気なり象徴機能があるうちに、安定化を図らないと、政情不安は治まらない。
 隣国のイスラエルは、安定化したパレスチナができるのは好ましくないはずなので、当然、ア
ラファトが生きているうちに、行政機構の整備をさせないよう、努力するものと考えます。今回、
産経新聞が報道するところでは、イスラエルのシャロン政権でのパレスチナ自治政府の閣僚メ
ンバーへの反発が、クレイ首相辞任の遠因となっとされているあたりを留意する必要がある。
31面
 前橋地裁で、女子高校生誘拐殺害事件の被告に無期懲役の判決の記事。「両親は閉廷
後、弁護士を通じ『司法と一般感情にはずれがある』とのコメントした」との記事。産経新聞社
は極刑主義かつ司法を復讐代行機関と位置付けているので、こうした報道の仕方もやむをな
いか。
【2003/10/17産経 朝 15】
1面
 メキシコとのFTA交渉決裂の記事。解説記事の末文に「農業を一刻も早く自由化に耐え得る
体力のある産業に育てないと、日本は貿易立国としての競争力を失ってしまうだろう」とは、産
経新聞社のこれまでの姿勢の延長と思われる。
【2003/10/18産経 朝 15】
1面
 藤井総裁の聴聞の記事。産経新聞社は「泥沼化、首相の思惑外れる」とサブタイルとで報
道。首相の思惑とはいったい誰が正しいと判定できるのか?
 それはさておき、毅然とした内容の聴聞と見受けるが、こうまでしなければならなくなった原因
は藤井氏本人にあると考える。本人の説明とは裏腹に、やっていることが現政権へのいやが
らせにしか世相には映っていないと考えられる。それゆえ産経新聞は「泥沼化、首相の思惑外
れる」と書いたのであろう。
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