03年05月
【2003/5/1産経 朝15版】
1面
 日銀追加緩和策の記事。日銀当座預金現在の水準から5兆円積み増しとのこと。
【2003/5/2産経 朝15版】
2面
 社説で健康増進法を支持すると思われる文章がのる。26面はやや愛煙家よりと思えるが、
コメントをよせた喫煙者が20歳大学生というのは意図的なのか?
26面
 メーデーの記事。やや労働運動に冷淡な感じ。「お祭りムード覆う雇用不安」とあるが、そも
そも労働者の祭典と「お祭りムード」とはニュアンスが違うのでは?たしかに今のメーデーは娯
楽色を前面に出しているので、それに対する批判なのか。「メーデーをやったからといって、何
か変わるわけでない」ということを平気で言うサラリーマンというのは本心なんだろうけど、ちょ
っと労働者としての意識はないのだな。
 安心して労働できるとか、不利な条件で労働しないということは、現代社会においても成就す
ることは難しいということが理解されていないのであろう。技術のある職種ほど組織化され、雇
用条件を守る。なんら持つもののないサラリーマンは、「柔軟に勤務条件に適応できる」能力を
最大限に発揮して、労働条件を劣化させていくのであろう。
【2003/5/3産経 朝15版】
3面
 衆議院憲法調査会会長談話(1面)に絡んで、新しい憲法をつくる国民会議の憲法改正案に
ついての記事。1面では改正案はまだ発表されていないことになっているが、おそらく事前配布
資料によって3面の記事が作成されたのであろう。気になった点のみピックアップ。
 1)記事の順序:改正案の記述は、天皇が一番最初にあったので現行の条文順なのかと思っ
たら、参議院の緊急集会の後に国民の権利義務の項目を設けられており、条文順でないこと
がわかる。ということは、産経新聞社の関心の高い順となるのか、それとも新しい憲法をつくる
国民会議の憲法改正案の条文が記事の順番になっているということか?
 2)立憲君主制の明確化の記述が、元首という概念は学説上見解が分かれているとされてい
るそのあとで、天皇を元首と明確化することによって国の形を明確にした、となっている。果た
してそうか?もし明確化されたといいたいときには、元首の定義が明確にされるだけでよいの
では?元首の定義が明確にされなければ、条文上誰が元首かを記述しても最終的な解決に
ならないのでは(参照:芦部信喜『憲法 新版 補訂版』1999/3/8、p.47-48、佐藤幸治『憲法 
第三版』1995/4/15、p.245-246)。
  3)「国家防衛の責務」の記述に、徴兵の義務ではないとの修飾語がついているが、表記の
上では「国家防衛の責務」にのみカッコがついているため、徴兵の義務がないことが改正案で
明示されているかは判然としない。解釈上、徴兵の義務はないと考えられるのかそれとも、条
文に明記されているのかをはっきりしてほしかった。これは個人的な要望なので、判然としてい
ないくても、しかたないでしょう(缶ジュースより安い情報なんですから仕方ないです)。
 4)国防軍を保持について。保持が可能であることの許可なのか保持をすることの憲法上の
要請かが明記されていない。名称も国防軍となっているが、自衛隊ではだめなんでしょうか?
自衛権を認めることだけでは足りない理由は、国防軍の構成員の士気の問題でしょうか?こ
の士気にかかわるとかというのは、聞き飽きとという感じがします。与えられた仕事を自分の気
分の問題でできませんと放棄することができるんだ、と逆に感心しますね。
 5)憲法裁判所の設置:最高裁が統治行為論を使用することが好ましくないという点を設置の
理由としているが、憲法裁判所を設置しても、変化はないと考える。統治行為論を利用するの
は、本当は違憲判決をださないといけない可能性があるけれど、行政府の裁量権をみとめて
判断をしません、という行政府を思ってのことと考えていました。このことから安直に判断する
と、憲法裁判所を設置するということは、政府に気兼ねなく憲法上の視点から違憲判決をどん
どんしてよいということになる思うが…。それとも、政治的な配慮を積極的に進めて、憲法に拘
束されない(憲法の上位に立つ)裁判所として、政治的な判断を加えて合憲判決をばしばしだ
して、政府の施策の後押しをしろという意図なのか?
 6)自民党は、この改正案を参考に「憲法改正要綱案の骨子」を今国会中に党としてまとめる
としている。また、この点を、他の政党の憲法政策を「足踏み状態」と比較した形で評価してい
る。はたして、「改正案」の「要綱」の「骨子」を「党内」でとりまとめることが、他の政党と比較し
て抜きん出ていることなのであろうか?
【2003/5/4産経 朝15版】
2面
 民間憲法臨調の提言についての記事。マスコミ各社は自社の立場を明確に、との点が眼を
ひいた。
【2003/5/7産経 朝15版】
3面
 イラク18自治県の連邦構想との記事。ちょっと安直な感じをうける。
 また、米英ということば使用せず、ORHAという組織名称のみを使用することが気になった。
イラクが非独立で英米の占領地域であり、今後の中東における英米の橋頭堡であるという
諸々のことを隠蔽する効果があり、イラクの現状を正確に報道していないことになるのでは。
【2003/5/13産経 朝15版】
1面
 生保予定利率引下げに関連した金融庁の保険業法改正要綱の記事。タイトルが「経営責任
明記せず」となっているが、政府が許認可の条件に経営責任を問わないだけで、経営責任が
全く追及されないわけではない。この点で誤解をまねく報道ではないか?経営責任はあくま
で、民事であるという点からすれば、社員総会などで追求するべき性質のものであるという点
について、とくに異論はない。ただ、大きい政府をめざす立場からは、一定の公的な保護を受
けている生命保険業界が、政府の都合の悪いときだけ責任を回避しているという批判をするこ
とができるであろう。
【2003/5/14産経 朝15版】
1面
 有事法制にむけ小泉・菅会談で合意との記事。合意内容はごくまっとうなもののように思わ
れる。わざわざ、大々的に報道する価値があるのか。院外での合意と議院による議論の推移
と比べて、紙面の扱いが違うのは、内容にかかわらず劇的なほうが「映える」というゴシップ的
視点によるものと勘ぐってしまう。それとも、議院での議論はたんなる形式に過ぎないという、
国会の権威の低さを評価しての、実直な行動のあらわれか。
 有事法制推進の当事者が、どんな意図でいたにしろ、この合意は感心しない。こうした合意
を当初から用意してないとすれば、相当に自民党は有事にはどんな拘束でも国民はうけるべ
きで、国家緊急時に国家の行動を拘束すべきでないという立場のように受け取れる。一方で、
盛り込むべきものを野党の立場に配慮してわざと抜けをつくって、つつかせて体面を保たせた
とすれば、国民の目を欺くだけの茶番だったとなる。
 産経の解説のタイトルは「『戦えない状態』解消」となっている。これは、自衛隊の存在をみと
めていない立場においては、当然のことともいえる。また、戦争にまきこまれることを想定しな
いことにするのが、憲法の前提だと、この立場からは考えるのではないか。つまり、侵略された
としても「戦えない状態」というのはもともと想定されていることとなる。
 推進派の立場は、性悪説でしょうね。それであるが故に、有事の対応を決めておきたいとい
う点がある。国際協力については、軍事力というものが結局なにをもたらすかという点からす
れば、軍事的なものに貢献しないという立場を貫いた方が妥当であるとは思う。ただ、強い力
の下に、利権があつまり、強い力によって示される準則がスタンダードになることを考えると、
権力へのおもねりだったとしても生活のためにはやむをえない、思っているなら相当の偽善だ
と考える。むしろ、自らの欲望をみたすために弱者を篭絡することもよしとすることを否定せ
ず、すきあらば欲望の現実化をめざすのが、生の人間であるという、原始性の礼賛くらいのこ
とをいってもらわないと、一貫性がないのでは?
【2003/5/15産経 朝15版】
1面
 生保予定利率引下げに関連した金融庁の保険業法改正要綱修正案の記事。経営責任通知
を義務するということである。とくに異論はない。
【2003/5/16産経 朝15版】
産経抄
 「最大の基本的人権とは、命を保障してくれということではないか」という考えの人ばかりな
ら、この論旨のとおりに法制が進んで問題ない。理性とはそんなにあっけないものであることが
現実である、ということを受け入れるだけの精神性の強い人はどれほどいるのか。それとも、
そんな強靭な精神性はあきらめて、弱い人間は思考を放棄しましょうという提言なのか。あえ
て、極論を提示しているであろうか。一面で?
29面
 裁判員制度に日本新聞協会の見解の記事。裁判員は公的な立場であるけれど、新聞記者
は民間人である。そうであるけれども、こうした主張をして、おおきな影響力をもつ立場にある
のであるから、裁判員に要求していることを新聞記者にも要求できるようにするべきである(ち
ょっと話が飛びすぎているか?)。
 報道側は自主的な対応をとっているとなっているが、免職にするとか減給にするとかそういっ
た罰則がないのなら、お手盛りのはりぼてと考えてよいのでは?日本新聞協会が主張する自
主対策とはどれほどの制度なのであろうか。マスコミの餌食になった人々の悲哀を、平穏に生
活する権利の重要性を思うべきである。もし、それを乗り越えてでもなすべき報道の価値があ
るなら止む得ないけれど、一般人の幸福を蹂躙する日本新聞協会の公開性も厳正になされる
べきである。
 なお、日本新聞協会の主張する自主対策とは次のとおりである。
  @事件報道に関する指針策定
  A外部識者を交えた報道検証機関の設置
  B集団的加熱取材の回避策定
【2003/5/20産経 朝15版】
3面
 日本人記者の質問への台湾の反発の記事。当然でしょうね…
【2003/5/21産経 朝15版】
1面
 首相が自衛隊を軍隊にしたいとの意向をしめしたとの記事。記事中、「…、自衛隊は対外的
には軍隊とみなされているにもかかわらず、国内的には軍隊ではないとされているため」とあ
るが、妥当な表現であろうか?もはや、既成事実はできあがっているのであるということを高ら
かに宣言して、それを肯定しているようにみえる。この論法は妥当でないのではないか。もし、
自衛隊を軍隊として認めたいのなら、別の視点を提示するべきであろう。法令の規定を無視し
て、既成事実を積み重ねるのを奨励したように受け取れる。造反有理とかいうつもりか?
17面
 正論:榊原英資慶應義塾大学教授「竹中プランの即時撤回こそ急務」との論説。竹中プラン
の失敗について論じられており、必要な施策として竹中プランの即時撤回が提示され、理由に
竹中プランが市中への資金供給を萎縮させている点をあげている。一方で日銀の金融政策の
限界が提示されているが、それについては経済理論を十分に認識していない当事者を批判し
ている。さて、この議論の流れからすると、代替策の提示が必要である気がするがそれがな
い。どういう狙いがあるのか…。それとも不良債権処理を進めるためには、産業再生プランを
同時並行して進める必要があるという、批判部分が代替策だと思っているのか?
 産業再生の同時並行については、確かに行われていないが、そのことは竹中プランの失敗
の批判であって、代替策ではない。論旨からすると、同時並行するべきなのにしていない⇒撤
回するべき、という流れであって、産業再生部分が足りないから充実させろとはなっていない。
しかし一方で、産業再生の充実こそ撤回後には必要である読み込むことも不可能ではない。も
し、竹中プランの撤回をせまりつつも、産業再生プランを単独ですすめるべきでないと考えてい
るのであれば、あまり親切な論説ではない。もしからしたら、わざと誤読をさそっているのでは
と勘ぐられても仕方ないか?
【2003/5/25産経 朝15版】
7面
 正論:和田秀樹精神科医「弱肉強食型社会における男女共同参画」との論説。いいたいこと
はわかったが、どうして男性が家庭をうけもつとか労働条件を男女差別をしないという提示をし
ないのであろうか。それは当然の前提だからであろうか。
 また、弱い女性が虐げられているとの理由が示されているが、では弱い男性が虐げれていて
も問題ないのかという視点が提示されていない。なぜ、男性だけが虐げられていて良いのか。
労働経済学からは、女性だからという理由で社会に労働を提供しない主婦という立場を問題
視することもある。それとも女性が虐げられるは問題だが、男性ならばそうした虐げれられるこ
とにも堪える必要がありそれこそが男性性の真骨頂であると考えているのか。また、そうした
弱い男性は、そうした環境に甘んじることなく向上する精神力をもって社会に立ち向かうべきで
あると激励し、女性にはかわいそうだから社会から退出して家庭に収まってほしいということ
か。
 少年の非行問題についての論点は、こども時代に接する母性の度合いを問題にしており、こ
うした生物学的もしくは心理学的な視点から論考から同様な結論になるなら、了解できる。な
んでこの部分を敷衍した論説にしないのであろうか。肩書きが精神科医なのに。それともその
点は、すでに別の論文に書いてありますということなのであろうか。
【2003/5/27産経 朝15版】
30面
 民間出身校長と河村文部科学副大臣らとの懇談会の記事。「上司の指示に理屈つけ、納得
しなければやらない」というのは、民間でも同じなのでは?どういった職種の部下を想定して、
教員と比較しているのか。上司の指示を無条件で行う人間を、本当に部下として使いたいの
か?それに対して「校長から給与をもらっているわけではない」という教員の応答も組織原理を
無視した発言である。
 大卒の人もすぐに先生とよばれることは、程度の差こそあれ、弁護士だって公認会計士だっ
て同じなのでは?しかし、確かに違和感はありますね。
 法曹資格のように一定期間の研修を必須にして公立の教員研修所を設立するとか、公認会
計士のように教員補のような資格をもうけて正教員になるには実務期間と試験をもうけるな
ど、改善方法はあるのでは。ただし、「先生」とよばれる慣行自体はなくならないと考える。も
し、若造にむかって先生とは言いたくないと気持ちからの発言なら、ちょっといい意見かなと思
ったのは勘違いということです。
【2003/5/28産経 朝15版】
8面
 金融庁のりそな支援疑惑の記事。出所不明なメモが、国会の場で問題になっているのか、よ
そで問題になっているのか不明である。国会で問題になっているなら仕方ないが、出所不明な
メモの証拠性は、メモを持ち出した側にあるのではないか。もしくは、事情を知っている当事者
でない関係者が検証できるようにしないといけないのでは。それをしないで「政府とりそなに
は、事実関係を明らかにする説明責任が求められている」と文章をつなげるのは不適切なの
では。たしかに、説明責任はあろうけれど、出所不明なメモについてはその限りではないので
はないか。これをもちだして、疑惑を説明せよというのは、偽の証文をもちだして借金を返せと
いっているのと同じではないか(この批判方法は、論理的ではありませんが、もとの文章と論理
構造を同一にするよう心がけてみました)。
【2003/5/29産経 朝14版】
1面
 既婚女性の意識、急速崩壊とのみだしで、出生動向調査結果の記事。女性の結婚観などに
ついて調査であるが、女性の役割意識の「崩壊」を明らかにしたのは、この調査ではなく産経
新聞社による資料解釈の結果ではないのか。それとも、出生動向調査の報告書で「崩壊」とい
う単語を利用しているのか。
15面
 正論:長谷川三千子埼玉大学教授「裁判員制度には明らかな無理がある」との論説。新聞
協会の見解への批判を、@裁判員氏名の公開A守秘義務Bマスコミの表現自由の問題から
整理して記述している。ただ、旧仮名遣いのような表記法は、やめてほしい。
【2003/5/30産経 朝14版】
3面
 世界展開している米軍の配置・規模について見直しがある旨のロサンゼルスタイムズ紙の引
用記事。
4面
 教育基本法改正案の記事。公明党が国家色を出すことについて反対との記事。この点につ
き、記事の論調は公明党批判となっている。末文の「連立離脱カードまで持ち出される背景に
は『ここで迎合したら支持団体の反発が避けられず、衆参選挙が戦えない』(幹部)との事情も
うかがえる。」は、好意的な文章ではない。まず、「持ち出される」との受身の表現を、教育基本
法改正のテーブルについていたはずなのに突然、関係のない事柄を一方的に持ち出され、困
惑している、というように受け取るのはうがちすぎか?また、受動態は主語を強調する要素が
あるので、この記事構成によって、産経新聞が教育基本法改正に積極的な立場を表明するか
たちになる。
 産経新聞は、新聞としての思想的立場を明確にしようとする方向性をもっているので、この点
は問題ないであろう。ただ、選挙が戦えないとの事情がうかがえるという表現は、一体どんなこ
とを期待してなされているのであろうか。選挙戦を戦えなくてよいので教育基本法の改正に賛
成するべきだということか。それとも、幹部は賛成なのに支持者が反対という構造を衆愚政治
の典型のようにとらえて、おろかな有権者を啓蒙する義務があると考えているのか。そうした義
務があるのは、自民党であって公明党側ではないのでは?公明党にとって支持者に納得させ
られる改正理由が、自民党から提示されていないというだけなのではないか?
 もし、公明党の支持者が少ないと考えれば、公明党を無視してでも法改正に踏み切ればよい
だけの話であろう。それなのに連立離脱カードをちらつかせていることをこうした形で記事にす
るのは、公明党が連立離脱カードをだしたということの意味を、この記事はだだをこねていると
いう程度のように把握しているからではないか。自分は、そうした記事の論調は、公明党の態
度を過小評価しているように思う。もし、そうならば、この記事は、公明党支持者を不快にさせ
るのに十分に皮肉的なとげを有しているものといえる。
 31面
 石原都知事の渋谷視察の記事。視察があることがわかればあるべき姿に整えようとするの
は担当者としてとるべき行動ではないか?もちろん、なぜいつもそれができていないかという問
題は生じるけれども。原宿駅附近に留置所をつくろうという計画は、なかなかシュール。
【2003/5/31産経 朝15版】
2面
 世界展開している米軍の配置・規模について見直しがある旨の米紙記事のうち、沖縄海兵
隊の豪州への移動についてウォルフォウィッツ米国防副長官が否定との記事。また、川口外
相・石破防衛庁長官・細田沖縄担当相も否定とのこと。
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